ターゲット追従カメラ/パスに沿ったカメラの制御

オブジェクトの動きについていくカメラワークを

本項では、あらかじめスザンヌが奥から手前に進んでいくアニメーションを用意しています。その姿を指定の位置からカメラで捉えようとすると、そのままの状態ではカメラとオブジェクトの間にリンクしているものがないため、スザンヌはカメラ画角から外れて通り過ぎてしまいます。

その対処法として、カメラとオブジェクトを紐づけることでカメラがオブジェクトの動きについていくカメラワークになる「ターゲット追従カメラ」と、それを応用することでより複雑なカメラワークが可能になる「パスに沿ったカメラの制御」について解説します。



ターゲット追従カメラ



[shift]キーを押しながらカメラを選択し、そのままスザンヌのオブジェクトも選択する。





上部メニューから[オブジェクト]をクリックし、[トラック]>[トラック(コンストレイント)]を選択。





カメラとスザンヌの間に青いラインが生成され、紐づけられる。





この状態でカメラワークのついたアニメーションを再生すると、カメラは常にスザンヌを中心に捉え、追従するようになる。





右側のプロパティ欄から[コンストレイント]をクリックし、[オブジェクトコンストレイントを追加]のプルダウンから[トラック]を選択して、ターゲットをスポイト選択することでも同様の操作が可能。






パスに沿ったカメラの制御



[shift+A]キーを押し、ショートカットから[カーブ]>[パス]を選択。パスが表示される。





カメラを選択し、右側のプロパティ欄から[コンストレイント]をクリック、[オブジェクトコンストレイントを追加]のプルダウンから[パスに追従]を選択する。





[Follow Path]の[ターゲット]欄から生成したパスを指定し、[定位置]と[カーブに従う]の欄にチェックを入れる。





この時点でカメラ位置が大きくズレてしまっている場合は、[位置]のX・Y・Zの値を0mに変更し、初期位置にリセットしておこう。





[Follow Path]のブロックを[Track To]のブロックの上にドラッグ&ドロップし、順番を入れ替えることでカメラがスザンヌを追従するようになる。





[Follow Path]の[オフセット係数]の値を変更することで、カメラをパス上の任意の位置に動かすことができる。





カメラがパスに沿って動くようになり、カメラの向きは常にスザンヌを追従しながら複雑な動きをつけることが可能に。



制御後の動画を見る




ターンテーブルの作り方



[カーブ]>[円]を選択することでオブジェクトの周りを円に沿って動いていくターンテーブルのようなカメラワークも可能。





カーブのZ軸を変えることで視点の高さを変更できる。






応用編

Blenderを使った複雑なカメラワーク

複数あるカメラ制御·活用法

複数のカメラやボケ感によるダイナミックな演出

ここでは、車が走行するアニメーションを作例に、複数のカメラを使ってカメラワークを順に切り替えていく方法や、ダイナミックな動きの演出として被写界深度の設定によるカメラのボケ感を表現する方法について解説します。

前提として、車の動き自体は手前から奥へと走っていくアニメーションとなっており、カメラに関しては、1カメが車後方、2カメが俯瞰、3カメが車正面、4カメが車後方の別アングル、5カメが斜め上から車に追従といった、5台のカメラワークをあらかじめ設定してあります。


ニワさんが制作した複数のカメラ制御を活用したプロモーション映像。






2台の車が手前から奥へと走行していくアニメーション。すでに5台分のカメラワークを設定してある状態。





[シーンコレクション]から[Camera01]を選択。





タイムラインを1フレーム目に合わせ、[マーカー]>[カメラをマーカーにバインド]を選択。





すると、タイムラインの1フレーム目の下部に[Camera01]が表示され、1フレーム目に[Camera01]のカメラワークがリンクされたことが確認できる。





同様の手順で、任意のフレーム位置に[Camera02]〜[Camera05]を順に追加していく。ショートカットキーで行う場合は、[Camera]を選択した状態でタイムライン上にカーソルを置き、[command+B]を押すことでもカメラを追加することができる。





キーフレームの場所を移動したい場合は、[Camera]をドラッグ&ドロップすることで動かせる。





タイムライン上からカメラを削除したい場合は、[Camera]を選択した状態で[X]キーを押すことで削除が可能。





一連の作業により、任意のフレームごとにカメラワークが切り替わっていく映像を作ることができる。



制御後の動画を見る







被写界深度によるボケ感の演出



[Z]キーでシェーディングを切り替えるためのショートカットを表示。[レンダー]を選択することでボケ感を視認できるようになる。





右側のプロパティから[データ]を選択。[被写界深度]の欄にチェックを入れる。[焦点のオブジェクト]に調整したいオブジェクトを指定、[絞り]の[F値]を変更し、ボケ感を調整する。





F値を調整することで印象が大きく変わる。「実際のカメラではありえないようなF値にすることも可能なので、やりたい表現によって変更してみてください」とニワさん。





レンダーエンジンは[EEVEE]、[Cycles]どちらでも問題はないが、優れたGPUを積んでいる場合は[Cycles]を選択することでよりクオリティの高い映像をレンダリングすることができる。






BlenderとAfter Effectsの連携について

『BlenderAe2』を活用しデータを移行する

BlenderからAEへの容易なデータ転送を実現

Blender専用のアドオン「BlenderAe2」を活用することで、BlenderのさまざまなデータをAfter Effectsへと転送することができます。本項では、BlenderAe2をすでにインストールした状態で、あらかじめ用意しておいたスザンヌのオブジェクトデータ3体とカメラ設定のデータをBlenderからAfter Effectsへと移行する手順について説明します。

ただし、若干癖のあるツールなので一部複雑な手順を挟むことにはなりますが、私なりに試行錯誤した結果、最終的には問題なくデータを移行できるようなやり方になっています。





Blenderの画面から3体のスザンヌオブジェクトとカメラを選択。連携エラーを防ぐため、この時点でAfter Effectsも必ず起動させておく。





[N]キーを押し、出現したメニューからインストール済みの[BlenderAe2]を選択。[Export Date]内にて、画像のようにチェックを入れ、[Export Date to Ae]をクリックする。





すると、自動でAfter Effectsにスザンヌとカメラの座標データのみが連携される。再度、Blenderの画面へと戻る。





スザンヌを1体選択。この際、3体同時に連携はできないため注意。





[N]キーを押し、出現したメニューから[BlenderAe2]を選択。任意の保存先を指定し、[Export glTF to Ae]をクリック。





指定したスザンヌのデータがAfter Effectsへと連携されるが、データ形式を変換しなければ正確なデータが読み込まれないため、一旦読み込んだglbデータを削除する。





[command+I]キーを押し、先ほど保存した「Suzanne.glb」のファイルを選択、[有効:]を[すべてのファイル]に変更する。すると、[形式:]を選べるようになるため[3Dモデル]に変更し、[開く]をクリックする。





一連の作業により、スザンヌのデータがAfter Effectsに読み込まれる。残りの2体も同様の手順を行うことで各データの移行が可能となる。





カメラデータに関しては、位置情報などもキーフレームで問題なく読み込まれていることが確認できる。



BlenderAe2

BlenderAe2は、Blenderの3DオブジェクトやシーンデータをAfter Effectsに転送できるBlenderのアドオン。Blenderのシーンから転送したいオブジェクト、カメラ、ライトなどを選択し、エクスポートするだけでAfter Effectsにデータを容易に転送することができる。







カメラ制御におすすめのアドオン紹介

公式エクステンション

※Blenderの機能を拡張するためのアドオンやテーマを、Blenderの公式プラットフォーム上で管理・入手できる機能。


Camera Viewer

タイムライン上で簡単にカメラ視点を切り替えてプレビューできるアドオン。



Auto Active Camera Switcher

マーカーに応じて自動でアクティブカメラを切り替えてくれるアドオン。



Camera Shakify

手ブレ風のカメラモーションを容易に付与することができるアドオン。



Right Mouse Navigation

右クリックだけで直感的なナビゲーション操作ができるようになるアドオン。



Cameraide

カメラの管理·制御を効率化できるカメラ特化型アドオン。



QuickMenu

よく使う機能に即アクセスできるカスタマイズ式クイックメニューアドオン。



Colorista

Blender内で本格的なカラーグレーディングができるようになるアドオン。



Add Camera Rigs

プロ仕様のカメラリグ(クレーン·ドリー·ハンドヘルド風)を追加できるアドオン。



有料アドオン

※価格は2025年4月28日現在。


Rantools

モデリング·マテリアル·レンダリング作業を時短する多機能アドオン。価格は27$。





Cinepack: Pre-Animated Camera Moves

映画のようなカメラアニメーションをすぐに使用できるプリセット集アドオン。価格は30$。





Qshot 2

簡単操作でカメラカット割り・シーン管理を効率化できるアドオン。価格は18$。