生成AIの著しい進化とともにクリエイティブの可能性は大きく広がりを見せ、目を見張るようなクオリティの作品をたったひとりで制作してしまう例も少なくはない。本記事では、Blenderを使用した自主制作CG作品『昭和124年』がSNSで人気の映像ディレクター高橋悠さんを講師として招き、AIを活用したCG制作について実例を交えながら詳しく解説してもらった。
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講師 高橋 悠 Yu Takahashi
映像ディレクター。2015年頃より実写での映像制作を始め、2021年よりCG制作も開始。Blenderを使用した自主制作CG作品『昭和124年』を制作しSNSを中心に発表。
百円音盤『Menthol』
ひとつひとつのAIツールはシンプルでも組み合わせることで自由度の高い制作が可能に
みなさん、こんにちは。高橋 悠と申します。僕は映像ディレクターとしてMV、映画、広告などを中心として、主にCGによる表現を軸に活動しています。元々は実写の映像ディレクターとしてキャリアをスタートしました。ただ、コロナ禍で撮影そのものができなくなった時期に、自主制作の手段としてCGに取り組み始めたのが今のスタイルに至る大きな転機でした。最初は趣味に近いものでしたが、そこから徐々にCGの商業案件も受けるようになり、現在ではCGを使った仕事と自主制作を並行して行なっています。作風としては、少し現実離れしたノスタルジックな風景や、SF、サイバーパンクといった、僕の好きなテイストが反映されているものが多いです。自主制作の代表作に『昭和124年』というタイトルの映像作品があります。
最近では、制作プロセスの中にAIツールを実験的に採用することに取り組んでいます。たとえばMidjourneyやChatGPT、Move AI、Toripo AIなど、ひとつひとつはシンプルでも組み合わせることでかなり自由度の高い制作が可能になると実感しています。一方で、AIを使うものに対して、「これは本当に自分の作品と言えるのか?」など、出力されたものをどう選んでどう演出するかといった新しい課題も見えてきました。今回の記事では、そのような問いも踏まえつつ、MV制作におけるAIを活用したキャラクター制作のプロセスについて詳しく解説します。
AI×CG(映像)制作の3分類
プロジェクトで使えそうだと感じるのは作品制作の補助ツールとしてAIを扱う方法
まずは、現在のCG制作においてAIがどのように扱われているかを整理してみましょう。僕自身、いろいろなツールを試してきて感じているのは、AIには大きく分けて3つの使い方があるということでした。
ひとつ目が「完全自動生成」で、AIが動画をすべて生成してくれるという使い方になります。例えば、文字を入力することで動画が吐き出されるRunwayのような、いわゆるPrompt-to-Video系のツールがこれに当たります。非常に夢のある領域ではありますが、ただ、現時点で制作の中核に置くには少し課題が多い印象です。
ふたつ目が「補助ツール」として使う方法です。これはあくまでも人間の制作を助けるツールとしてAIを使っていくということです。例えば、Midjourneyでイメージボードを作ってみたり、そのためのプロンプトをChatGPTで考えてもらったり、バラバラになっているアイデアをAIと対話をしながらまとめていくなどの使い方になります。あるいは、Move AIというスマホ向けのモーションキャプチャツールや、Character Creator 4のHeadshot機能を使って、人間の動きや顔を3D化するための補助として使うようなやり方ですね。僕自身、実際のプロジェクトで使えそうだと感じているのはこの領域になります。
3つ目が「ワークフロー改善」です。これは制作のアウトプットそのものではなく、進行管理や整理においてAIを使う方法です。例えば、NotionとAIを組み合わせて進行管理を自動化したり、クライアントからのフィードバックを整理し、漏れや抜けがないようにしていくなど、チーム制作や仕事効率化に強い使い方がこれに当たります。
3つの領域はそれぞれが完全に分かれているわけではなく重なり合っている部分もありますが、今回は基本的にふたつ目の補助ツールとしてAIを使う方法を主軸に紹介していきます。
① 完全自動生成 | ② 補助ツール | ③ ワークフロー改善 | |
特徴 | 映像全体を生成する、 Prompt-to-Video系ツール での自動映像化 | イメージボード作成、 ベースモデル生成、 マーカーレスモーションキャプチャ | 進行管理、 AIによるタスクの 自動分類 |
AI×CG制作の実例〜百円音盤MV『Menthol』〜
AIとCharacter Creator 4を活用したキャラクター制作
AIを使えばモデリングができない人でもアイデアや世界観を形にできるんじゃないか
百円音盤の『Menthol』という楽曲のMVでは、映像中に出てくる女性キャラクター(石像)の制作においてAIを活用しています。なぜキャラクター制作に絞ったのかというと、キャラクター制作はCGの中でもニーズの高い分野である一方、高度で専門的な知識が求められる難所のひとつです。僕自身あまりこの分野が得意ではなかったこともあり、プロセスの一部をAIで補えないかと試行錯誤した結果、この手法に辿り着きました。また、AIを使えばキャラクターモデリングがうまくできない人でもアイデアや世界観を形にできる道が広がるんじゃないかという想いもあり、この手法を選択している部分もあります。
使用ツールとワークフロー



本作で使用したReallusion製品リスト(目的別)



本作で使用したReallusion製品リスト(目的別)





