演出家、映像作家、フォトグラファーとして、CMやミュージックビデオといった商業作品からオリジナル短編や写真展といった現代美術家としての取り組みまで、多彩なフィールドで活躍する柿本ケンサク氏。今夏から配信中のNetflixオリジナルドラマ『グラスハート』では、監督・撮影監督、さらにタイトルデザインとキーアートのクリエイティブディレクションも担当した。そんな本作における、柿本氏の挑戦を語ってもらう。

講師 柿本ケンサク Kensaku Kakimoto

演出家・映像作家、写真家。多くの映像作品を生み出すとともに、広告写真、アーティストポートレートなどをはじめ写真家としても活動。映像作品の多くは、美しくダイナミックな世界を作り出すことを得意とし、言語化して表現することが不可能だと思われる被写体の熱量、繊細な感情の揺らぎを産みだす。対照的に写真作品は、目の前に広がる世界から新しい視点を見つけ出し「時間」をテーマに作品制作を行なっている。



Netflixシリーズ『グラスハート』

原作:若木未生/「グラスハート」シリーズ(幻冬舎コミックス刊)/監督・撮影:柿本ケンサク/監督:後藤孝太郎/照明:森寺テツ/プロダクションデザイナー:延賀 亮/録音:大堀太輔/音楽プロデューサー:山田勝也/VFXスーパーバイザー:吉川辰平/脚本:岡田麿里  阿久津朋子  小坂志宝/エグゼクティブプロデューサー:岡野真紀子/共同エグゼクティブプロデューサー:佐藤 健/プロデューサー:アベゴウ/ラインプロデューサー:櫻井紘史/制作プロダクション:ROBOT/製作:Netflix






監督と撮影監督の両立

どちらもやることで、確かな個性が生み出せる

僕は映像の監督であり、写真家でもあり、そして撮影監督としても活動しています。そのため、監督と撮影監督の両立を試みるときに「どちらかひとつに集中したほうが良いのでは?」と言われることがあります。ですが、僕にとっては両方をやるからこそ、自分の作品にひとつの確かな個性を生み出せると信じています。映画やドラマにおいて映像は全てを決定づける要素だからこそ、その核心に自分が立ち会いたいと思っています。

僕は映画をつくりたかったので、映像から始めました。今から20年ほど前のことですが、Macで映像編集ができるようになった時期でした。デジタルカメラが普及し始めて、撮影から編集まで自分でやれるようになってきた時代だったので、ごく自然にカメラも自分で回していました。仕事としては、知り合いのアーティストのMVの監督と撮影を兼務したことからスタートして、MVが完成するとまた新しいMVの仕事へとつながるといった感じで、少しずつ実績を重ねていきました。

そして仕事を続けていくなかで、あるとき「ジャケットも撮れますか?」という相談を受けました。実は、そのときはやったことがありませんでしたが「全然できますよ」と言ったことから写真も手がけるようになりました(笑)。同じカメラだから、要領も同じだろうと思ったら全然違った。そこから真剣に写真も学び始めて今に至ります。

映像も写真も教則本や雑誌のTIPS記事を読みながらの独学ですが、仕事を続けていくうちにその道のプロフェッショナルの中から教えてくださる方々も増えていきました。そして今でも日々学び続けています。



人間を被写体とした、映像と写真の違い

撮影方法映像(フルショット)写真(ポートレイト)
基本的な構図横長

必然的に、サイドに余白が生まれる。
縦長

フレーム外にあるものを鑑賞者が想像できる
時間軸連続性がある

余白に何かがフレームインするなどの芝居やカメラワークによって物語が生まれる。
瞬間

鑑賞者が前後の時間を想像できる
基本的な認識客観的

人間の視野よりも広い範囲の視覚的な情報を一度に提示できる。
3カメや俯瞰といった客観的な視点を表現できる。
主観的

人間の自然な視野に近い。
撮影者の個人的な視点や感情を強く反映できる。
備考編集や演出(主観の映像など)によって創り手の主観が強く入り込む余地がある「事実の一瞬」を記録するという意味では客観的
映像と写真を撮る際の基本的なロジックを表にしたもの。ただし現在は、縦型動画の登場によって、縦と横の境界が揺らぎ始めていると柿本氏は考えている。