アニメーション制作において重要な役割を占めることは理解されているものの、その具体的な描き方や考え方があらわにされていない「絵コンテ」。本記事では、アニメーション演出家・アニメーターの鈴さんに、シナリオから考えるシーンの描き方、絵コンテフォーマットの見方から制作方法まで、リアルタイムで描き起こしてもらい、その絵コンテの制作工程を解説してもらった。
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講師 鈴 Suzu
アニメーション演出家・アニメーター。東京デザイナー学院アニメーション科卒業後、アニメの動画、原画制作を経て、演出・絵コンテをはじめる。作画では『ルパン三世』『クレヨンしんちゃん』『精霊の守り人』、演出・絵コンテでは『HUNTER×HUNTER』(新)、『はじめの一歩』、『しろくまカフェ』、『ポケットモンスター メガボルテージ』などを担当。現在はゲーム会社においてゲーム内アニメーションの監修を行うかたわら、フリーのアニメ演出家・アニメーターとしても活動している。
「絵コンテ」とはアニメーターが迷わず描くための発注書
鈴と申します。現在はゲーム会社でゲーム内アニメーションの監修を行うかたわら、フリーのアニメーション演出家・アニメーターとしても活動しています。
本記事では、なかなか人に教わる機会の少ない絵コンテの描き方について解説していきます。絵コンテとは、アニメーターへの発注書のようなもので、16:9比率のマスに絵を描き、ト書きやセリフ・SE、尺などを書いたものになります。実写と違って役者を撮影するわけではないので、具体的なフレーミングやキャラクター、芝居なども事前に決め、それらをアニメーターに渡して描いてもらうという流れになります。
今回は、宮沢賢治著『銀河鉄道の夜』の冒頭部分をシナリオ化したものを使い、シナリオをベースとしたシーンの組み立て方、そこからどのように絵コンテを制作していくのかなどについて、実演を交えながら説明していきます。
ちなみに、絵コンテを描く際に使用しているソフトはCLIP STUDIO PAINTで、アニメーターであれば作画も含めて8〜9割の方がこのソフトを使用して描く場合が多いかと思います。
CLIP STUDIO PAINT

セルシスによって開発されたデジタルイラスト、漫画制作、アニメーション制作のためのペイントソフト。滑らかな描き心地と、プロも利用する豊富な機能が特徴で、PC、タブレットなどさまざまなデバイスでの利用が可能。
絵コンテの制作手順
絵コンテ完成に至るまでの流れ

手順1:コンテを描く前の下準備
「ここはよくわからない」という部分にぶつかったらシナリオに直接書き込んでいく
シナリオをもらった段階でいきなり絵コンテを描き始める方も多いかと思いますが、私の場合はその前にいろいろな準備を行います。
まず、各キャラクターの行動やセリフから「なぜそれを喋っているのか」「なぜそういう行動を起こしたのか」を考えながらシナリオを読み込みます。次に、再度シナリオを読みながらメモを取っていきます。その際、シナリオを画像として書き出して、CLIP STUDIOにレイヤーとして順番に読み込んでおき、シナリオの上からメモを書き込める状態にしておきます。その上で、シナリオを読みながら「ここはよくわからないな」という部分にぶつかったら、その内容を書き込んでいきます。
例えば、次頁のような作例であれば、「数人が手をあげる」という表現に対して人数が曖昧なので、「何人?」と書き込んでおいたり、「ジョバンニの顔には疲れの色。」という部分は「どのくらい疲れているのか?」「目の下にクマはあるのか?」などを書いていきます。アニメの場合、シナリオをもらった後に監督と「コンテ打ち」という打ち合わせがあるので、監督の頭の中にしかない細かな意図をコンテ打ちで聞ける状態にしておくことで、その後の作業がスムーズになります。

シナリオを見る
今回使用したシナリオは以下から全文を見ることができる。
(※実際のアニメーション現場で使用されるシナリオとは、一部フォーマットに違いがあるため注意)

