ハイクオリティな表現と独創的な映像で国内外を問わず世界中に多くのファンを持つSTUDIO4℃が、7年の歳月をかけ、総作画枚数10万枚以上の緻密なアニメーションとして公開した劇場映画『ChaO』。本記事では、1980年代からアニメーターとして数多くの作品に参加し、ChaOで長編映画としては初の監督を務めた青木康浩さんにアニメーション映画における演出について、本作品をを題材に語っていただいた。
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講師 青木康浩 Yasuhiro Aoki
アニメーション監督・演出家、アニメーター。1980年代末からアニメーターとして数多くの作品に参加し、2000年代以降は絵コンテ・演出も手がける。STUDIO4℃作品では『THE ANIMATRIX』(2003)の原画、『きまぐれロボット』(2004)『魔法少女隊アルス』(2004)の各話演出などを経て、オムニバス『Amazing Nuts!』(2006)の一編、倖田來未の楽曲とコラボした「たとえ君が世界中の敵になっても」を監督。そのほかの監督作に『バットマン ゴッサムナイト』(2008)の一編「闇の中で」などがある。『ChaO』は待望の初監督長編。
『ChaO(チャオ)』

人間の青年・ステファンと人魚王国のお姫さま・チャオのミラクルな愛の物語。人間と人魚が共存する未来社会。船舶をつくる会社で働くサラリーマンのステファンは、ある日突然、人魚の王国のお姫様・ チャオに求婚されるが─。
STUDIO4℃が唯一無二の世界観を繊細かつダイナミックに紡ぎ出した長編劇場アニメーション作品。
監督:青木康浩/キャラクターデザイン・総作画監督:小島大和/美術監督:滝口比呂志/音楽:村松崇継/ 演出:古屋勝悟/色彩設計:成毛久美子 /撮影監督:中島隆紀/ 音響演出:笠松広司/アニメーション制作:STUDIO4℃ / 配給:東映
コンテ・キャラクターデザイン・原画・演出・作監などさまざまな経験を積んできた
アニメーション監督・演出家、アニメーターの青木康浩です。アニメーション専門学校を経て、平成元年からアニメーターとして活動しており、かれこれ30年以上にわたりいろいろな作品に参加してきました。アニメーターになる前まではアニメスタジオに片っ端から見学に行ったのですが、最終的には自分の好きな人がどんなスタジオを起こしているかを調べ、そちらのスタジオに入れてもらいました。スタジオでは「動画」という、原画と原画の間の動きを描く仕事から始め、1年経たないうちに「原画」の仕事へと移りました。その後、監督だけでなく、絵コンテ・キャラクターデザイン・原画・演出・作画監督などさまざまな経験を積み、現在に至ります。
今回の記事では、アニメ映画における演出とはどういうものなのかについて、私が監督した劇場アニメーション『ChaO』を例に深掘りしていきます。
STUDIO4°Cと制作したアニメ映画 『ChaO』
30年来の付き合いとなるSTUDIO4°Cと7年もの歳月をかけて制作
僕がアニメ会社に入った平成元年というのは、ちょうどスタジオジブリのアニメ映画『魔女の宅急便』が公開された年でした。当時はまだ、金曜ロードショーなどでジブリ映画を放映している時代でもなかったので、一般の方にも知られた存在ではなかったかもしれませんが、アニメ業界でのジブリと言えば“東大”のような存在の会社でした。そんなジブリのラインプロデューサーを務めた田中栄子さんが立ち上げたアニメ会社がSTUDIO4°Cでした。当時は「またすごいアニメ会社ができたな」と思っていたんですが、そこから5〜6年が経ち、縁あってお手伝いをさせていただくことになったのが1998年のことです。
私が初めて4°Cさんと作った作品は、会社の発起人のひとりでもあり、素晴らしいアニメーターでもある森本晃司さんが監督した1話30秒の短いストーリーのあるコマーシャルアニメーションでした。短い尺ながらも1話1話は完結していて、当時としては斬新な企画でした。これが30秒といえど何十本もあって、社内のスタッフだけでは回らなくなってきたため、僕がお手伝いをさせていただくことになったというわけです。そこから現在に至るまで、4°Cさんの仕事をやってきているので、かなり長いお付き合いになります。
実は、2006年に監督した『たとえ君が世界中の敵になっても』という短編アニメーションは、今回紹介する『ChaO』の前身となる作品でした。その後、しばらく4°Cさんの席を外し、別のところで数年間お仕事をしていたんですが、絶妙なタイミングで『ChaO』の企画が舞い込んできたので、7年ほど前にまた久しぶりに4°Cさんに入って本作を作ってきたというのが制作に至る経緯です。
通常、シナリオを検討してからロケハンを行うのがセオリーですが、『ChaO』の場合はシナリオもないのに上海でのロケハンをしていました。当時はスタッフもまだ決まらず、僕と制作デスクのふたりで行き、半年後くらいにCGや技術監督などのスタッフが増えるとまた上海に行っては違う場所を見に行ったりしていました。シナリオの土台はプロットがあったため、皆で練り上げていき、中国の文化や知識も全く知らないので、そういったことも学びつつ盛り込んでいきました。そうしているうちに「字だけでやっていても面白くない」というところまで仕上がったため、ようやく私がコンテを描き始めるというスタートでした。
STUDIO4°Cとは?

スタジオジブリの草創期を支えた田中栄子氏とマッドハウスやスタジオあんなぷるでアニメーターとして頭角を現した森本晃司氏を中心に、映像制作集団として発足された日本のアニメ制作会社。社名の「4℃」とは、水の密度が一番高いのは摂氏4度であることから、作品のクオリティーの高さを保証するという意味で名付けられた。
『ChaO』に登場する主要キャラクターたち
キャラクターデザインの原型は青木さんが務めた。『ChaO』のキャラクターは、丸・三角・四角といった図形を立たせてから「面白く見えればいいな」というところに後からディテールを入れていき仕上げていったとのこと。この他にもマイベイやオメデ大使など、個性溢れるキャラクターたちが多く登場するため、ぜひ『ChaO』の公式サイトからチェックしてみよう。
人間 ステファン

船舶をつくる会社で働く普通のサラリーマン。チャオに求婚される。
人魚 チャオ

人魚の王国のお姫様。地上にいる時や不安な気持ちの時は魚の姿(左)になり、心を許した相手の前だと人魚の姿(右)になる。
人魚 ネプトゥース国王

人魚王国の王。チャオの父。チャオのことになると心配が尽きない。
人間 シー社長

ステファンの働く造船会社の社長。ステファンとチャオの結婚を後押し。
人間 ロベルタ

発明家であり大きなロボットを作っている。ステファンの友人。

