映画やCMの世界では当たり前になったLog収録。
実はDJIのドローンにもLog収録機能が備わっており、
映画のような色味の空撮映像を個人でも実現できる。
本誌ではDJI が採用するD-Logの取り扱いと
地上で撮影した一眼との色合わせについて解説しているが、
ここでは筆者のOsamu Hasegawaさんが
カラーグレーディングした映像を紹介する。
文●Osamu Hasegawa
地上の映像と空撮映像の色を合わせる
撮影・編集・カラーグレーディング:Osamu Hasegawa
モデル:神田藍香
▲Phantom3 Professionalで撮ったカラーグレーディング前のD-Log。
▲パナソニックGH4で撮影したカラーグレーディング前のV-Log。
Logの段階でも色味はかなり異なるが、地上で撮影した映像と空撮映像の色がマッチせず、困っているというユーザー声もよく聞く。3月20日発売の4月号ではこれらの映像の色合わせの方法について解説している。
グレーディングとBGMを変えて、もうひとパターン作ってみた
上では全体の色を統一することに主眼を置いたのに対して、こちらは自由に色の違いを出しながらグレーディングしてみた。映画で確立されている映像構成の一般論では、映像は「シークエンス > シーン > ショット(カット)」という塊で構成されており、グレーディングをする際には、シーン内で統一するという考え方が基本になっている。
▲映像構成のイメージ図。
たとえば、「夕方の河川敷でのキャッチボールする人を見ながら会話をする二人」(シーンA)というシーンがあったとすると、その中でキャッチボールの人を写したショットも会話をする二人を写したショットも似たようなルックになるのが映画で確立された教科書的な考え。その翌朝なにか事件が起きて皆がバタバタと動き出すシーン(シーンB)があるとする。そこからはかなり別のルックになってもいい。シーンAはカメラ女子的なゆるふわルック、シーンBは寒色系でコントラストも強めのルックにするなど、それぞれのシーンが持つイメージに合わせて色味を変えることで、観る人によりその印象や演出意図が伝わりやすくなる。
上の動画は、動画1本を1シーンとしてひとまとまりと考えた場合の作例。下の動画は、シーンを2つに分解して、なおかつ全体の横軸として同じ空撮のルックと、それとの対比で地上撮影のルックとを分けたもの。
まず、空撮カメラのD-Log特集ということで、空撮っぽいワイドで空が写っているショットからはじめにグレーディングを行なった。いろいろ試してみて、空の色が印象的と感じる色にしてみた。
次に、音楽の印象が変わる1分18秒以降を別シーンと想定して、一眼のV-Logの色をその前後で変えてみることにした。前半の余韻的なイメージの音楽の中では彩度を低く、スローモーションに。空撮ショット(今・現実)がメインで、その中に記憶の中の自分が出てくるような、現実の中では薄い存在として演出した。
1分18秒で音楽が切り替わる以降の一眼のショットは、現実に戻った感を出すように空撮のショットに色を近づけた。ただ、空撮映像程ビビッドにしてしまうと木や地面がかなり主張してしまうので、いくぶん薄味にした。ただし、上空(と池の上)からの空撮ショットのルックは全体を通して同じで、それが1本の映像としての横軸を通す役割を担っている。
ここに挙げた作例はあくまで一例にすぎず、グレーディングにはこれが正解というものはない。色を使いわけることで、シーンごとの演出意図を観る人にいかに伝えることができるかという手段の一つなのではないかと思う。誌面ではPremiere Pro CCを使ったグレーディングの基本操作に加えて、プラグインを使用し、空のみをグレーディングしたり、一眼との色をどうやって合わせているのかということを解説している。ぜひご覧になってみてほしい。
●この動画のグレーディング方法はビデオSALON2016年4月号に掲載。
http://www.genkosha.co.jp/vs/backnumber/1557.html