ウェディングムービーの世界に新しい動きが生まれている。
デジタル一眼や大判センサーカメラといったツールが誕生し、
観る側も単なる記録ではない、よりリッチな映像を求めるようになってきた。
最大手の業者である日本綜合テレビがニューヨークで立ち上げたブランド
NST PICTURESの動向と2012年夏のエキスポの模様をレポートする。
report◎SAM NOGUCHI/KEN AIKAWA


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従来のイベント記録型ではなく、一組一組に「映画」を制作するというコンセプト


ニューヨーク市は、人口は800万人を超え市内GDPは51兆円と全米最大、世界の金融センターであり商業、文化、ファッション、メディアビジネス、芸術などの情報発信都市でもある。
 日本におけるブライダル映像の最大手である日本綜合テレビは、昨年、米国に100%子会社のウェディング映像制作会社を立ち上げた。日本綜合テレビの米国ブランドNST PICTURESである。ニューヨークで展開しているのが「シネマティックウェディングス」というムーブメントだ。
 「シネマティックウェディングス」とは、従来のイベント記録型のウェディング撮影ではなく、一組一組に対して「映画」を制作するというコンセプトであり、一言でいえば「ビデオ」ではなく「シネマ」を提供するということ。ニューヨークのウェディングショーなどでも花嫁から大きな反響を得ている。なお、撮影者は従来の「ビデオカメラマン」でなく、映画撮影者の「シネマトグラファー」という肩書きで呼ばれている。
 今回は「シネマティックウェディングス」の日本公開に向けて現地のウェディングショーの撮影およびプロモーションフィルムの制作のためニューヨークを訪れた。

撮影はEOS、ステディカムやスライダーを使ってシネマライクな画作りを行なった


 Great Bridal EXPOは、大規模なコンベンションホテル、コンベンションセンターで行われるウエディングショーで今回はタイムズスクエアのMarriott Marquis で開催された。結婚式にかかわるすべてが展示されるショーで、ニューヨークスタイルのファッションショーやライブコンサートなどのイベントも行われた。
 プロモーション撮影での撮影機材はキヤノンEOS 5D Mark IIIを2台、Mark IIを1台。また、ステディカム、スライダーなど、映画制作の現場で使うグリップを使用し、 よりシネマライクな画作りを行なった。たとえばEF14㎜レンズを使用して数多くの人の中をステディカムマーリンで流れるように撮影。広角での移動撮影は大変臨場感にあふれる映像になった。
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 撮影内容は、ニューヨークの街や夜景など。夜景については、マンハッタンのスカイラインが望める対岸のブルックリンから撮影した。また移動はコンバーチブルのマスタングを用意し、車中からの街の撮影も行なった。
 レンズを通してみるニューヨークの風景は独特の色合いがあり、どこを選んでもロケ撮影で絵になるものばかりである。
 そしてハウススタジオでは新郎新婦役のタレントおよびスタイリスト、メイク、ヘアメイク、およびプロデューサーなど総勢15名の日米混成チームで撮影を実施した。白ホリゾントでの撮影、ソファを使っての撮影、 屋上のオープン撮影などである。
 そして9人乗りのストレッチリムジンを使っての移動撮影、またロケについてはセントラルパークおよび夜のタイムズスクエアでの撮影を敢行した。
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 数多くの映画のロケが行われているセントラルパークでは24㎜の単焦点レンズで夕日をバックに撮影。その後、タイムズスクエアに移動。金曜の夜の観光客でごった返すタイムズスクエアでの撮影については、ストレッチリムジンで乗りつけ登場した新郎新婦に祝福の拍手が起きるなど、暖かい目で見守られながらの撮影となった。今回撮影したプロモーション映像は日本綜合テレビのホームページで見ることができる。

映像制作者も新しい時代のセンスと技術を磨いていく必要がある


      
 一眼ムービーの登場以来、各所で新しいウェディングムービーのムーブメントが興りつつあるが、本格的な潮流にはなっていない。日本綜合テレビの米国ブランドNST PICTURESがニューヨークで巻き起こした「シネマティックウェディング」は、新しい機材の登場ともあいまって、これからの主流になっていくのは間違いない。そしてそれに合わせて映像制作者も新しい時代のセンスと技術を磨いていかなければならないだろう。

【シネマトグラファー大募集!】


NSTグループ代表日本綜合テレビ代表取締役
脇山典隆

【日本の披露宴をもっと感動的に】
19世紀のヨーロッパでは写実主義から印象派へのムーブメントが起こりました。
 その背景には写真機の発明があります。それまでポートレートを写実的に描いていた画家の仕事を写真機が奪いました。その中で生まれたのが、マネ、モネ、ルノワールなどの瞬間を印象的に描く印象派の画家です。映像の世界にもまさにその動きがあります。
 事象をそのまま記録するビデオカメラマンの仕事は素人のビデオカメラが奪います。これからはプロとしての印象的な作品を残せる者だけが生き残る「シネマトグラファー」の時代です。披露宴は素晴らしい感動、そしてその感動をかたちにする仕事は世界共通の素晴らしい仕事です。
【ウェディング映像は「ビデオ」から「シネマ」へ】
従来はありのままに記録する「ビデオ」。それに対して一組一組に映画を制作する「シネマ」。 ビデオとシネマの違いは、まずは撮影手法にあります。従来のありのままに撮影する方法から結婚式、披露宴の意味、各シーンそして全編を通して見る人に何を伝えるかがポイントになってきます。そうです。構成、構図、フォーカシングを重視する映画の制作手法です。
 次に撮影機材です。従来のカムコーダーから一眼レフタイプのシネマ撮影機材への変化で被写界深度の浅い、また色も芳醇で奥行感のあるフィルムライクな質の高い映像表現ができるようになりました。
 そして何より重要なのが「ビデオカメラマン」から「シネマトグラファー」への変化です。我々スタッフが変わります。国内最大のウェディング映像会社、日本綜合テレビがウェディング「シネマトグラファー」という新しい職種を確立します。
 2012年の夏よりスタッフ30名を選抜し、映画製作者同様に自身で全体の構図、構成を描けるよう技術および感性を磨くための研修を行いました。今後も随時、研修等を行い、最終的には全員を「シネマフォトグラファー」に育成していく予定です。新たなスタッフも求めます。応募はホームページをご覧ください。
【日本綜合テレビ株式会社】 http://nstweb.co.jp/
http://nstweb.co.jp/saiyo/cinematographer/
【問い合わせ先】 recruit_cinematographer@nstweb.co.jp
(協力/日本綜合テレビ株式会社)
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