500mlペットボトル程の大きさの
折りたたみドローン・DJI Mavic Pro。
生産が追いつかない程に人気のコンパクトドローンは
空撮のプロの目から見て、どうなのか?
映画やテレビ番組等の空撮を手がける
HEXaMediaの遠藤さんに
その飛ばし心地をレポートしてもらった。
テスト・文●遠藤祐紀(HEXaMedia)
機材協力 ●SEKIDO
Mavic ProとPhantom 4を飛ばし比べてみた
Mavic Pro 4K Test(Phantom4) from Yuhki Endoh (AIR FLEET) on Vimeo.
空撮するかどうかわからない時も
とりあえず持って出られるサイズ感
ちょっとしたカメラバックに機体本体、プロポ、追加のバッテリーが2個、さらにはチャージャーや小物までが収まってしまうサイズ感は驚異的で、よくここまで作り込んだものだと褒めてあげたい。そんなガジェット好きな方も唸るであろうMavic Proの雑感を書いている間に、4K/60pで収録できて、前後左右の充実した衝突センサーやスマートReturn-to-Homeが搭載された新しいバージョンのPhantom4 Proと5K/30pのRAW記録に対応したInspire 2が発表されました。これによって、Mavic Proの影が薄くなるのでは?と心配しましたが、カジュアルなシーンでの地位は当分の間、揺るがないのではないでしょうか。旅先で空撮するかわからないけれど「取り敢えず持って出たい」という時でもこのサイズならば、躊躇することもないはずです。
DJI Mavic Pro フライモアコンボ
155,800円
▲Mavic Pro本体と専用ケース、予備バッテリー2本、4本のバッテリーを充電できるバッテリーハブ、カーチャージャー、Mavic インテリジェントフライトバッテリーからスマートフォンやタブレットに電源供給するアダプターのお得なセットも。
送信機の操作感について
さて、Mavic Proの素晴らしい機能を駆け足でレポートさせて頂きますが、まずは運用の観点から気になるポイントを。従来のいわゆる「The プロポ」というフォルムから、ゲームコントローラーサイズに小さくなった送信機の操作感に関して。実物を触ってみると懸念していた通りスティックの操作感が硬い印象です。スプリングが硬すぎるのか、それとも短いストロークのせいなのか、とにかく微妙な操作ができる感じではなくて、トイドローンに付属する大雑把な操作感のプロポに感覚が近い。あくまでカジュアルに空撮を楽しむという観点から考えれば、この操作感で構わないのかもしれないけれど、ノーズ・イン・サークル(ポイント・オブ・インタレスト)で優雅に回り込みたい時など、それこそ息を止めて操作しないとバタついてしまいそうです。
FPV映像の視認性
機体カメラのモニタリング(FPV)に関しては、現状、外部モニタへのHDMI出力ポートは用意されていません。対応する端末は、一般的なスマートフォンから、ギリギリiPad miniが装着できますが、ネックストラップ用ののフックがないのも不満の一つで、デリバリー開始前から3Dプリンターのマウントパーツが出回っているのも頷けます。
そういう状況もあって、直射日光下でのタブレット端末の視認性は良くない。太陽の位置や自分の着ている衣類の色によっては猛烈に反射してしまって、そんな条件下では全くと言っていいほど見えません。普段の仕事現場では輝度の高い液晶モニタに、自作フードをつけてモニターしていますが、Mavic Proで現場に出るとしたら、大きめのタブレットにアンチグレアフィルムをしっかり貼って三脚にマウント、長めのケーブルでプロポと接続してタップ操作用に手が入るようなフードを装着する必要があるでしょう。もちろんタブレットの視認性が悪いのはDJIの責任ではありませんが、メーカー側でもタブレット端末でのモニタリングには限界を感じているのかもしれません。大掛かりな機材があれば改善できますが、カジュアルなシーンからは離れてしまうので、発売がアナウンスされている液晶モニターDJI CrystalSkyに期待したいです。
シャッタースピードとフレア対策
Mavic ProはPhantom 4同様に晴天時はシャッタースピードが1/1000以上に上がってしまって、動きがパラパラとしてきてしまいます。通常の撮影現場ではシャッタースピードはフレームレートの2倍の数値(1/50〜1/100)までに収まるように調整するのがデフォルトなので、Mavic ProでもNDフィルターを使って、数段落としたいところです。
ただし、メーカーでは純正のNDフィルターは用意されておらず、サードパーティのPolar Proというメーカーのものが発売されています。Mavic ProはPhantomのようにフィルター径が切られていないため、こちらのNDフィルターはカメラの上に被せるタイプになるようです。そうなると、通常でも繊細な傾向のジンバルが、フィルターの重量に耐えられるのか不安も残ります(このあたりは実際には試していないので、いずれ機会があればレポートしたいと思います)。
また、レンズフレアに関しても、ジンバルカバーを付けていない状態でも、角度によっては不自然な模様が出てしまうことがあるため、レンズフードは必須であると思いますが、NDと合わせ技の軽量フードは現状どこからも発売されておらず、自作するしかないかもしれません。
カメラ画質と飛行性能
さて、本題の機体性能です。この機体サイズで折りたためるという優れたプロダクトデザインと、このバッテリー容量での充分なフライト時間と驚異的なパフォーマンス。前述の通り「よくぞここまで作り込んで来たな」というのが最初の印象ですが、若干風に弱いかなという部分以外、全くその通りの素晴らしい機体です。室内でのホバリング精度は、センチオーダーで微動だにせず。
ドローンレーサー(ドローンレースに使われるような機体)並みの運動性能を持ちながら、低速飛行のトライポットモードにすれば、どんなに狭いところでも通り抜けできてしまいそうです。さらには新しく追加されたアクティブトラックの「プロフィールモード」は優秀としか言いようがなく、実践の現場でもスムーズに運用することが難しかった横方向のドリー撮影を、いとも簡単にオートマチックにこなしてしまいます。
画質のパフォーマンスに関していえば、今回テストした機体はPhantom4と比較して、僅かながら勝っているように思います。Phantom 4と比べてMavicの方が少しだけ画角が狭いのですが、セルフィーを意識している機体としては、この画角の方がベターで、被写体に対して至近距離まで接近せずとも、充分に接近した印象の映像が撮影できます。HD撮影時はデジタルズームも搭載されているので、そうした機能を合わせて使ってもいいでしょう。
▲MavicにはNDフィルターがなかったので、露出設定は両方ともオートで統一した。ホワイトバランスは5200Kで揃えたのだが、Mavicは暖色、Phantomは寒色傾向の色味になった。およそ同じ距離・高度になるように岩を捉えた画像を同じ倍率で拡大した部分拡大を見てみると、Mavicのほうが解像感が高く感じられる。
フォーカスや風に対してはシビアだが、
いつでも持ち出せる魅力がある
ただし、意外と被写界深度が浅く、フォーカスが非常にシビアになります。Mavicの場合は事前にAFでタップして無限遠を出してから飛ばすのがおすすめです。Phantom 4のフォーカス固定に慣れている人がMavicに移行すると、AFでタップすることを忘れて飛ばしてしまって、前ピンで使えないデータだった…なんて事もありうるので注意が必要です。
▲MF時の無限遠はスライダーを振り切った位置ではないので注意。4目盛り程の位置で無限遠が出た。被写界深度も意外と浅い印象。フォーカス合わせには注意が必要そうだ。
期待していたスポーツモードですが、繊細なジンバルが風にあおられて盛大に振動してしまうこともありました。ジンバルカバーをつけたままフライトすれば良いのかもしれませんが、メーカー的にも、あくまで移動時のプロテクションという用途のもので、映り込みも激しいので実質的には外してフライトすることになります。ジンバルの制御が弱いというよりは、ジンバルをマウントしているゴムのダンパーが繊細すぎる感じですが、今後意見がフィートバックされて調整されていくのかもしれません。
▲ジンバルカバーはジンバルとカメラを輸送中の衝突やほこりから保護するためのもの。装着した状態でも飛行できるが、逆光時にフレアの写り込みが発生する。
最後にもう一つ、この機体に搭載されている映像伝送はとても粘り強く、今まで厳しかったロケーションでも、安定的かつ超ロングレンジの飛行が可能となりました。駆け足で紹介して来ましたが、まだまだ語りきれない部分が沢山あります。僕のお気に入りのDJI M600のような大型機も魅力的ではあるのですが、いつでもどこでも持ち出せるMavic Proならば、その瞬間のその空間にいなければ撮れない映像を撮影するチャンスがグンと増えてきそうです。
●DJI Mavic Proの製品情報
https://www.dji.com/jp/mavic
●DJI Mavic Pro新機能検証
http://www.genkosha.com/vs/drone/entry/dji_mavic_pro_1.html