キヤノンが現在開発中のマルチカメラオーケストレーションというシステム。講談社の屋上で、モーションアクター集団を講談社の写真映像部のスタッフが撮影するという実験企画が行われた。ひとりのカメラマンでどういう映像ができるのだろうか?
レポート◉編集部 一柳
【真剣演武一発撮り】次世代撮影技術「マルチカメラ・オーケストレーション」講談社×モーションアクター×Canon
今回の検証実験のシステム構成
真剣の演武をひとりで撮る
現在開発中だというキヤノンマルチカメラオーケストレーションというシステムの実証実験とそのメイキングムービー収録の現場を取材した。マルチカメラオーケストレーション(以下MCO)は、複数の同社のPTZカメラをメインカメラの動きに連動させて、どういう被写体をどういう画角が撮るかを事前に設定することで、ひとりのカメラマンが扱えるカメラの台数を増やすというソリューション。Inter BEE 2024においてもメインステージでデモが行われたので、ご覧になった方も多いかもしれない。
Inter BEEに先立つ10月末、MCOの用途提案を検討するため検証実験を行いながら、そのメイキングムービーを制作する目的も兼ね、講談社の屋上において、株式会社モーションアクターのアクションシーンの撮影が行われた。モーションアクターは、ゲームキャラクターのアクションやダンスのモーションキャプチャーを手がけている。代表の杉口秀樹さんによるアクロバットな演武を、MCOを利用して、講談社写真映像部の齋藤 浩さんがひとりで撮影するというもの。
PTZカメラがアシスタントカメラマンに
齋藤さんが操作するメインカメラはキヤノンXF605。MCOでは、同社業務用ビデオカメラ、PTZカメラ、放送業務用ズームレンズ(撮影データを取得できる)を装着したカメラがメインカメラとなり、連動するカメラは同社のPTZカメラ。
ひとりのカメラマンによるマルチカメラ収録・配信はこれまでもイベント収録などで行われてきたが、メインカメラ以外は固定にするしか方法がなかった。このシステムではLANで制御できるPTZカメラを利用することでメインカメラと連動して画角やカメラワークを決めることができる。
たとえば、メインカメラがズームインしたら、サブカメラもそれに合わせてズームインするとか、その逆の設定でも良い。AIによる人認識機能を利用して、ふたりの登場人物のうち、メインカメラがひとりに寄ったら、サブカメラはもうひとりのワンショットにするとか、2ショットを押さえるといった役割を与えることができる。つまりアシスタントカメラマンのようにカメラワークをしてくれる。役割のロールセットは進行に合わせてワンボタンで切り替えることができる。
今回のモーションアクターによる、真剣を使った演武では、アクションの流れを決めた後、それをメインカメラはどう撮り、どのサブカメラがそのときにどういう画角で誰を狙うのかを細かく決めていた。
スポーツイベントにも最適か
スポーツなどリアルタイムで進行していくイベントをマルチカメラで撮って、すぐにアウトプットしたいという現場の要望はあっても、最大の問題は人手だった。それほど予算をかけずに魅力的なコンテンツにするために、こういったシステムは映像制作を支援してくれそうだ。キヤノンではこういった実証実験をしながら製品化を目指すとしている。