ヒット映画を生み出す知られざる裏方、映画予告編クリエイターの世界。年間100本以上の映画予告を制作している制作会社「ココロドル」。映画「禍々女」などの予告編を制作している。IQを「MENSA」などの高IQ団体に所属しているというユニークな経歴を持ち、自身もディレクターとして、映画予告を制作する代表の密本雄太さんにお話を伺った。
取材・文●編集部 岡部
映画予告編専門の映像制作会社「ココロドル」
学生時代にロサンゼルスへ渡米し、映画の予告編のノウハウを勉強し密本雄太さん。制作会社「ココロドル」は、そんな映画の予告編を専門に制作する映像制作会社だ。
蜜本さんは「ココロドル」では、スタッフのことをクリエイターと呼ばないようにしていると話す。「私たちは、0から1を生み出すクリエイターではなく、1を10にする仕事なので、自分たちをエディター、ディレクターと呼ぶようにしています」とし、自分たちが作る映像というものは「作品」ではなく、「広告」であると断言する。そのような目的を明確化した映像作りがなされていることが特徴だ。
また、そのような映画予告制作は“センス”で制作するものでもないと語る。俗人的になってしまわないように、映像制作のフローをパズルの組み立て方を話すようにしている。現在、エディターは、密本さんを含めて社内に3人おり、そこにアシスタントのスタッフがつく形でチームができている。編集ソフトは主にAvid Media Composerを使用し、予告編内の文字デザインなども自社内で、photoshopやillustrationやafter effectsを駆使して作成しているという。
フィルム自体など以前は、映画予告編というのは、助監督が作るものだったとのこと。その当時は「作った作品を正しく伝える」ことを目的にして制作されていたと話す。デジタル時代は、「正しく伝えるではなく、広告として見る人を劇場に向かわせなければならないという」という“広告性”が顕著になってきたことで、求められるものが変化していった。
より良い映画予告編とは? 予告編は“音”が命

よく予告編を観てから、映画を観にいくと気づく、「あれ、あのシーン、あのセリフ、本編になかったな?」という疑問。業界では「ADR」というそのようなシーンを指す専門用語があるのだという。観客に考えさせる終わり方をする必要が求められ、起承転結の「転」をピックアップし続ける必要があるため、わざと、視聴者に疑問や不安を煽るようなシーンやセリフを追加していくそうだ。

さらに、密本さんは、予告編は「音が命」と語る。海外では、予告編の制作費用のほとんどがBGM制作に使用されることも多いと語り、予告編を専門に作る職人もいるという。そのように制作されたBGMは、実は映画のサウンドトラックにも入れないという。
ではなぜ音が大事なのか。それは観る人の感情誘導に、大きく起因するからだと話す。視覚は能動的、怖いと思ったら目を瞑れるが、聴覚は受動的なものであるというのが理由だ。さらに、生物学的な本能を駆り立てるために、「動物の声」を入れるというテクニックも。ライオンや猫の鳴き声が、映像が盛り上がってきたタイミングで急に入っていることも。例を挙げて見せていただいたが、言われないと気づけないが、知ると聞こえてくるという面白い発見だった。映画予告編を見るのが楽しくなりそうだ。
予告編で重要な“感情曲線”

映画の予告編を制作する際にまず考えるのが、感情曲線というグラフとのこと。言い換えると映像の盛り上がりを視覚化したグラフだ。「ココロドル」のディレクターのディスクには、側にこの曲線が置いてあることが多いとのこと。

主に、3幕構成でできているこの感情曲線だが、映画予告ではコールドオープン&ボタンといい最初と最後に衝撃的なシーンを置いていることが多いのだという。これも、どこで流れる予告かというところで変わっていき、例えばSNSで流れるものは、このコールドオープンをしないと、最後まで見てくれない。けれども映画館で流れるものは、最後まで観てくれることが確定しているので、段々と盛り上がりを作る構成にしているという。そのような視点で注意深く見ると、映画の本編だけでなく、予告編を見る楽しさもありそうだ。

