DJIのジンバルといえば、映像制作には欠かせないツールとして多くのビデオグラファーに愛されてきた。今回は黎明期からウェディングムービーの現場にDJI RSシリーズを導入し続けてきた次石悠一さんにジンバルの使用歴と、その進化よって現場ではどんな恩恵があったのか? 長年使い続けてきたジンバルの魅力についてお話を伺った。
構成・文●編集部 萩原/協力●DJI JAPAN株式会社
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次石悠一
ウェディングビデオグラファー歴20年。代表を務めるTomato Red Motionは2013年にチームとして活動を開始。ウェディングムービーを原点に、ドキュメンタリーテイストの映像を得意とし、現在はコーポレートムービーも手がけ、活動範囲を国内外に拡大している。次石さんがこれまでに手掛けたウェディングムービーの一部はInstagramで観られる。
https://www.instagram.com/tsugiishi_tomato
物語を感じさせるウェディング映像
次石悠一さんはウェディングムービーを主戦場に活躍するビデオグラファーだ。ウェディングには式の準備から撮影を開始し、式の終わりには撮影・編集した映像を上映する「撮って出しエンドロール」と呼ばれる映像がある。新郎新婦やゲストとの思い出を振り返る演出として人気の手法だ。撮って出しエンドロールは短い結婚式の時間のなかで紡ぎあげられるものだが、次石さんの作る映像はストーリー性を感じさせる構成や美しい画が話題を集め、国内外から撮影依頼が舞い込んでくる。
新郎新婦やその家族、友人にとって結婚式はかけがえのない大切な瞬間だからこそ失敗は許されない。そんな撮って出しエンドロールの現場では、その場で起こる何を撮るべきか瞬時に判断し、編集していく。
「僕が目指しているのは、映画のワンシーンのようなウェディング映像です。新郎新婦の生い立ちを事前にヒアリングして、短い式のなかでも新郎新婦の人柄やふたりの物語が感じられる映像を作りたいんです」
ジンバルが現場にもたらした恩恵
DJIが初めてのジンバルとなるRoninを発売したのは2014年のこと。それまで揺れの少ない移動ショットは、Steadicamを駆使した熟練のオペレーターだけが撮影できるもので、ハイエンドな映画やCMなどの現場でしか見られないものだった。しかし、ジンバルが登場し、それが徐々に小型・軽量化することで、個人や少人数チームで活動するビデオグラファーの現場にも普及していった。次石さんが初めてジンバルを導入したのはいつだったのだろう?
「元々、映画のような映像をウェディングにも採り入れたいと思って、2012年にSteadicam Merlinが出て、それを導入したり、スライダーやジブクレーンも積極的に、撮って出しエンドロールの現場で使ってきました。ところが、いろいろな画を撮ろうと思うと機材の量もハンパなく増えてしまって…。ジンバルならば移動の動きに加えてパン・チルト・ロールのカメラワークもつけられるし、スライダーやジブクレーンのような動きも1台でできてしまうので、現場に持ち込む機材が大幅に減ったのはジンバルの恩恵によるところが大きいですね。Ronin-Sが出てからはRSシリーズを使い続けてきて今はRS 4 Proを使っています」

歴代DJI RSシリーズ 本体重量とペイロードの変遷



次石さんがジンバルを導入したのは、10年ほど前から。当時は他社製品を使っていたが、バランス調整がシビアでレンズ交換の度にキャリブレーションを取り直すような状況だったが、初代Ronin-SからDJIに乗り換えて以降はモーターパワーも強くレンズ交換をしてもそのまま使えるようになり、現場に持ち込む機材がグッと減ったという。Ronin-S以降はRS2、現在はRS 4 Proを使用している。
現場で使ってきて感じた進化
移動ショットはもちろん、様々なカメラワークを作ることができる万能機材とも言えるジンバルだが、当初はモーターパワーが足りず、レンズ交換の度にバランス調整とキャリブレーションを都度取り直す必要があった。しかし、現在ではその進化とともにそれも解消されてきている。
「今、カメラはソニーα7III S。レンズはG Masterレンズを中心に24/35/50/85/135mmなど単焦点レンズを主に使っています。やはり単焦点レンズの描写が好きで、式の最中はひっきりなしにレンズを交換します。新郎新婦のポートレートはもちろん、式の情景カットや指輪のマクロ撮影など様々な映像を式の間に撮影します。RS 4 Proならば多少ラフにバランス調整をしてもモーターパワーの強さも上がったため、レンズ交換をしてもそのまま使えて、セッティングの間に撮りたい瞬間を逃してしまうこともなくなりました」
最後に次石さんに今後のDJIやRSシリーズに期待することを聞いてみた。
「ペイロードの幅の拡充と軽量化というのは変わらないのですが、シチュエーションによってはあえて手ブレが入ったほうが臨場感が出ることもあります。今はジンバルショットと手持ちカメラを2台体制で対応しているのですが、これを1台でやれるようになるといいですね。映画やCMの現場ではジンバル一体型のRonin-4Dが人気のようですが、それが小型になったものが出てくるとうれしいです。今後の進化に期待したいです」
新しいRS 4 Miniのインプレッションは?
RS 4 Mini (2025/2)

オープン価格(直販価格51,480円)
本体重量:約0.9 kg
ペイロード:0.4〜2 kg
製品情報:http://dji.com/jp/rs-4-mini
取材の際、2月に新発売されたRSシリーズ最新モデルRS 4 Miniを使ってもらった。「軽い! ウェディング映像の現場は機材が多くて男性のクリエイターが多いのですが、RS 4 Miniがあれば女性クリエイターも増えるかもしれないですね」
