今シーズン、読売ジャイアンツの東京ドームにおける全試合でリプレイ映像が進化している。グラウンド内に入り込んだかのような選手目線や、上下左右自由に回り込むような映像など、通常のカメラにはない視点から、リプレイ映像が届けられている。
これを生み出しているのが、ボリュメトリックシステム。選手の動きを3Dデータに変換することで、360度自由なカメラワークを実現させている。今回ビデオサロンは、実際に東京ドームに赴き、どのようにして映像を制作しているのか取材した。
ボリュメトリックシステムとは、簡単に言うと、撮影したデータから3D空間データを生成する技術。まずカメラで撮影した被写体の形状を、立体のドットで記録し、3Dモデルを生成。そこに被写体のテクスチャを貼り付け、背景と合成することで3D空間を生成。その3D空間内であれば、自由に視点を操作することができる。
今回の東京ドームに設置されたボリュメトリックシステムは、キヤノン、読売新聞、日本テレビの3社の合同プロジェクト。このシステムは、キヤノンが開発・担当している。
○どのようにして映像が制作されているのか
今回、ボリュメトリックシステムのために98台の4K高解像度カメラを設置。このカメラは、EOS C300 Mark IIをベースに、グローバルシャッターを搭載できるようカスタマイズされたもの。これが東京ドームをぐるりと1周するように、天井付近のキャットウォークや、客席広報に設けられたやぐらに配置されている。
1台1台焦点距離を調整して、インプレーエリア全体をカバー。4K/60Pで記録している。
ここで撮影したデータが、映像生成サーバーに送られ、わずか3秒で3Dデータを生成。オペレーターがすぐに、リプレイ映像をつくることができる仕組みとなっている。
キヤノンのボリュメトリックシステムのプロジェクトは、2016年に開始された。2019年には、ラグビーワールドカップで実装され、2020年に川崎にボリュメトリックビデオスタジオを開設。2021年には米国プロバスケットボール2会場に常設され、そして今回、東京ドームに日本で始めて常設。
今後はリプレイ映像だけでなく、さまざまなシーンへの応用も見据えている。VRを活用すれば臨場感のある没入型コンテンツも制作でき、さらには3Dデータからフィギュアなどのグッズも制作可能。さらにはプレーの分析にも役立たせるなど、その可能性は無限大だ。