Panasonic LUMIX DC-GH5&GH5S を活用した映像制作の現場レポート
コンテンポラリーダンスのプロモーションムービー
グライドカムとジンバルを利用してGH5Sで4K/60p撮影
Report_Osamu Hasegawa
舞踊家の河邉こずえさんとあるプロジェクトでご一緒した際に「こんな作品を創ってみたい」という話でお互い一致し、コラボレーション作品を自主制作する運びとなった。河邉さんが演ずるコンテンポラリーダンスというジャンルは抽象的な身体表現を特徴とした舞台芸術だが、今回は京都の街に出て、より自由で即興的な作品制作を試みた。事前の取り決めは極力なくし、河邉さんのダンスも私のカメラワークもほぼ即興で、お互いの動きをリアルタイムで読み解きながら撮影していった。
今回はGH5Sでほとんどのシーンを4K/60pで撮影し、再生フレームレートは24pにして、動きの豊かなダンスの随所で40%のスローモーション効果を使った。撮影は、すべてスタビライザーを使用し、外部レコーダーとグライドカムをメインのセット(4K/60p、10bit)とし、片手持ちのジンバルとカメラ内部記録の組み合わせ(4K/60p、8bit)も使用した。
▲GH5S+NINJA INFERNO+GLIDECAM HD4000のセット。SmallRigのケージは、オプションパーツでカスタマイズ。XLRマイクアダプターは、NINJA INFERNOが抜け落ちないようストッパーの役割も果たしている。
▲GH5S+Zhiyun Crane 2にオーディオテクニカのマイクAT9947CMを装着したセット。
V-LogL撮影してVision Color ImpulzでLUTを当てる
フォトスタイルはすべてV-LogLで撮影し、Premiere ProのLumetriカラーパネルでカラーグレーディングを行なった。LUTはフィルムカラーをベースとするVision Color Impulzを使用。通常は1本の動画につき1種類のLUTを使用することが多いが、今回は3種類のLUTをシーンによって使い分けた。
ジンバルと8bit内部記録の組み合わせも試したが、特にジンバルが適していると感じているのは、スライダー効果のような動きを出したい時、足元の狭い場所、ゆっくりとした動きで長く安定して回したい時だ。レンズはなるべく同じくらいの重さの物を揃えることで、レンズ交換ごとのバランス調整の手間を省くことができる。太陽を含む青空のワイドショットなどはグレーディングをするとバンディングが出てしまう8bit素材だが、シチュエーションを選べば綺麗に色を出せると感じた。
▲GH5S+NINJA INFERNO+GLIDECAM HD4000/M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO/4K/60p/4:2:2/10bit V-LogL/
▲LUT:Kodak Elite Chrome 200 FC
Logと10bitの組み合わせにGH5SのS/Nの良さが加わることで、グレーディング後のシャドー・ノイズの少なさと階調の豊かさをもたらしてくれる。
▲GH5S+Zhiyun Crane 2/フォクトレンダー NOKTON 25mm F0.95 /4K/60p/4:2:0/8bit/V-LogL/LUT:Fuji Superior 200 FC
このフィルムカラーを全体の基調色として一番多くのシーンで用いた。こちらはジンバルと組み合わせで4K/60p 8bitで記録した。8bit素材のグレーディングにやや不安があったが、思ったより綺麗に色が出てくれたと感じている。
GH5S×フォクトレンダーNOKTONで撮る夜の街
夜の祇園の街は、街明かりと言ってもかなり暗い中での撮影だったが、GH5Sの高感度S/Nの良さとフォクトレンダーNOKTON F0.95レンズの組み合わせは明るく撮影できるという実利的観点と、描写の質感の観点からもとても良かった。
人物撮影の場合はISO6400くらいまでに抑えるのが理想と考えているので、特に照度が低かった1カ所では小型LEDライトをカメラの上に載せ、グライドカムの動きと連動させて被写体を照らした。また夜の街で人物を撮影する際は、環境光の中からバックライトとなってくれる光源を構図とセットで見つけることで、人物が背景に埋没せず輪郭を浮き立たせる効果を狙える。
▲GH5S+NINJA INFERNO+GLIDECAM HD4000/ISO6400
4K/60p/4:2:2/10bit/V-Log L/ライティングなし/LUT:Fuji Superior 200 FC
▲ポスプロでさらに露出を明るく調整したい時に10bitだと対応できる幅が広がるため、この場所だけは内部記録でも8bit 60pではなく10bit 30pを選択した。F0.95開放はピントがやや甘めで、カメラ・被写体ともに動いているとさらに甘く見えがちだが、動画なら許容範囲。
▲GH5S+GLIDECAM HD2000/フォクトレンダー NOKTON 25mm F0.95/ISO6400/4K/30p/4:2:2/10bit/V-LogL/Manfrotto MLS900F LEDライト使用。
顔・瞳認識AFは実用になるのか?
被写体とカメラとの距離の変化が生じるシチュエーションでカメラを一定の速度で移動させつつ滑らかにパンをさせたいなどといった複雑条件のカメラワークではAFを使いたくなる。その事例として、桂川沿いの遊歩道での1ショットから4枚のフレームを抜いてみた。はじめフレーム内の河邉さんのサイズは小さく、カメラとの距離が離れている。そこから河邉さんがカメラに近づきながら反時計回りに1回転をしてカメラを回り込んでいき、それに合わせてカメラもパンして河邉さんをフォローしていく。光の向きは初め順光だったのが逆光で終わる。これをGH5Sの顔・瞳認識AFで行なってみたが、うまくいった。
GH5Sの顔・瞳認識AFでは、背中を向けた際にもAFの枠が顔から胴体へと切り替わりフォーカスを失わずにキープしてくれる。被写体と背景の色やコントラストの違いがはっきりしており、被写体の服装も真っ黒や真っ白でなければこのような複雑な動きに対してのAF追従の成功率は上がると感じている。
▲GH5S+NINJA INFERNO+GLIDECAM HD4000/LEICA DG
SUMMILUX 15mm F1.7 4K/60p/4:2:2/10bit/V-LogL/顔・瞳認識AF
【GH5Sでの顔・瞳認識AFの進化】
GH5Sの顔・瞳認識AFは、被写体が顔を横に向けたり体ごと後ろを向いた時でも、AF枠が胴体を認識する長方形モードに切り替わりフォーカスをキープし続けるように進化した。AFがすべてのシチュエーションで万能なわけではないが、LUMIX 35-100mm F2.8の絞り開放・テレ端で三脚+ビデオ雲台でカメラをパン+チルトさせながら撮影した状況では、わりと背景と似た色の服装でもほぼ100%追従した。一方ワイドで人物が小さめに写る状況や、スタビライザーなどでカメラの移動が激しい時などは難易度が高くなる傾向にある。自分のカメラワークの中でAFが使いやすい状況とMFが良い状況の違いを身につけていくとカメラワークの幅が広がる。
▲GH5S+NINJA INFERNO/LUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 テレ端・絞り開放/4K 60p 4:2:2 10bit/顔・瞳認識AF/モデル:イルコ・アレクサンダロフ
【編集部】
ちなみに最後の作例のモデルをつとめていただいたイルコ・アレクサンドロフさんの著書、「光の魔術師イルコのポートレート撮影スペシャルテクニック」は小社より絶賛発売中です。