昨年の発売予定から延期になっていたGoProのドローン「Karma」がこの6月2日についに発売された。Karmaとは一体なんなのか? 他社の製品と何が違うのか? その辺りを中心に解説しよう。

レポート●武田充弘(東京ドローン)

株式会社東京ドローン代表。1977年、神奈川県生まれ。2008年に日本写真芸術専門学校を卒業後、フリーランスフォトグラファーへ。コニカミノルタプラザその他数カ所で個展、清里フォトアートミュージアム収蔵、写真集「Ganges」(冬青社)出版、上野彦馬写真賞入選などの実績。ドローン空撮の黎明期からマルチコプター操縦による写真・映像撮影に取り組み、TVCMや映画、ミュージッククリップなど、大型機材による空撮を中心に手がけている。 http://www.tokyo-drone.com/

 

 

 Karmaの最大の特徴は、アクションカメラGoPro HERO 5の数あるマウント(アクセサリー)の一部として捉えている所である。つまり、誤解を恐れず言えば、他のHERO 5マウントと同じように、特別な知識がなくても誰でもすぐに使える、という画期的なコンセプトで設計されている。それは以下のような形で現れている。

KarmaHERO 4にも対応しているが、販売されるパッケージで同梱されているものがHERO 5 なので、この記事はHERO 5 を軸に構成する。

ドローンはもちろん手持ちのジンバルもセットに。   専用ケースでコンパクトに持ち運べる

▲Karma一式を専用ケースに入れて移動している様子。肩紐のマウントに手持ちジンバルのKarma Gripに装着したHERO 5 を取り付けられる。

 Karmaにはバックパック、もしくは手提げバッグとして使える専用のKarmaケースが付いてくる。基本的に、必要なものは全てこのケースに入るようになっているので、他には何も持っていく必要がない。購入時は専用ケースに機体、FPVモニター付きの専用送信機(Android OS)、手持ちジンバル(Karma Grip)、バッテリー1つ、充電器、プロペラ、その他アクセサリーなどが入っているが、この中身をカスタマイズできるような構造になっている。

 まず、Karmaのプロペラとバッテリーを装着したまま折りたたみ収納できる。そして、Karma Gripはケース外部のマウントに装着できる(これにより移動中もジンバル撮影ができる)。

▲Karmaとコントローラーと予備バッテリー3本と充電器を入れたKarmaケース。

 充電器を持っていく場合であれば、予備のバッテリーを3つ(計4つ)と予備プロペラを4~8本程度、入れることができる。充電器が必要ない場合は、さらに予備バッテリーをもう1つ(計5つ)入れることができる(これ以上の予備バッテリーがあっても、操縦機のバッテリーの方が先になくなる可能性が高いので、ベストな容量だと言える)。

離陸までの準備もスムーズに運用できる

 撮影場所に到着してからKarmaを飛ばすまでの時間は非常に短い。

・プロペラをつけたまま折りたたんで専用バックパックに収納できるので、Karmaを使いたくなった場合ケースをあけてKarmaのアームを開き、カメラを装着。送信機を開けば、数十秒程度で物理的な準備が終わる。

  ※もちろん安全管理のための機体チェックは必要。

・操縦機の電源を入れて、本体の電源をONにして起動のために20秒程度待てば、もうプロペラを回して飛ばすことができる状態になる。

・設定項目は非常に少ないので、フライト前に必ずチェックが必要なのは、飛行関係に関しては「飛行制限」の最大距離、最大高度、go home機能(自動帰還機能)で戻ってくる時の高度設定のみ。

・カメラ関係では、「ビデオの初期設定」という項目がオンになっている場合は、自動的にドローン撮影に適したモードにしてくれるので、必要なし。

 上記の工程で、早ければ1 、2分程度でKarmaを離陸させることができる。ただし、コンパスキャリブレーションが必要な場合は、キャリブレーションに別途1、2分程度必要となる。

飛行に関する設定はシンプル

▲Karma専用コントローラー

 Karmaは飛行に関しての細かい設定はない。Karmaの離陸着陸は操縦をしなくてもボタン操作でできるようになっている。また、飛行に関しての設定は、「スポーツモード」(飛行のスピードを通常より早くする)のON/OFFくらいで、初めてKarmaを使う人でも設定でつまずくことなく、スムーズに撮影に専念することができる。

プログラミングされた4つの飛行モードを搭載

▲4つのフライトモード。公式映像より(https://www.youtube.com/watch?v=CjNjcrQZtd8

 頻度の高い撮影方法は、プログラミングされた飛行モードが使用できる。今後ファームのバージョンアップで増えていく可能性はあるが、現在以下の4つの飛行モードが、特別な知識のない人でもタッチパネル数回の操作で使用できる。つまり、飛行をKarmaに任せることにより、撮影により意識を集中できる。

・「ケーブルカム」 2つの地点を往復する。その際、カメラの向きを固定することもでき、逆にリアルタイムにカメラの向きを変えることもできる。

・「ドロニー」 近い被写体を写した状態で、被写体がフレームの中心から外すことなくKarmaははるか遠方へ飛んでいく。

・「オービット」 被写体をフレームの中心から外すことなく、Karmaは被写体の周りを円を描いて回る。

・「地平線確認」 カメラが真下を向いた状態で目的の被写体に近づいていき、最終的に目的の被写体を中心に捉える。

▲ケーブルカム

カメラの位置が前面にあるためプロペラの写り込みがない

 撮影のためのドローンであるため、カメラが前面にある。他の小型ドローンではカメラがドローンの下についているタイプが多いが、この場合、ドローンがスピードを出した時や風で傾いた状態で飛行している場合、プロペラがすぐに映り込む。Karmaはカメラがドローンの前についているため、このプロペラの写り込み問題がほぼ解消されている。また、夜間撮影(※航空法の申請が必要)などで飛行用のフロントライトの写り込みが気になる場合があるが、このライトはOFFにできる。

以上がKarmaがアクションカメラHEROシリーズの新たなマウントとして作られている点についての解説だ。

その他の特徴について

 Karmaが他の撮影用小型ドローンと違うコンセプトで作られたドローンであることはわかっていただけたと思うが、その他の特徴を解説しよう。

(基本的なスペックはメーカーWEBサイト(https://jp.shop.gopro.com/APAC/karmatechspecs)に譲る)

先に「ビデオの初期設定」という項目をオンにしておくと、カメラの設定が自動的にドローン撮影に適したものになると記載したが、逆にこの項目をOFFにすることで、4Kやハイフレームレート撮影などHERO 5 のカメラ機能がフルに使えるようになる。

 

HERO 5 では、広角だとKarmaで撮影した場合歪みが気になるので「魚眼無効」という新たな画角が追加されていて、このモードにする歪みがかなり少なくなる(ビデオの初期設定オンの場合は自動的にこのモードになる)。

 

Karmaとコントローラー別売のGoProのバックパックSeekerにも収納可能なので、よりアクティブに使用したい人はこちらをお勧めする。

▲GoProが発売するバックパックSeeker[22.500円]にも収納できる。

ファームのアップグレードは、操縦機をwifiに直接繋ぐことにより、操縦機、KarmaHero 5などのアップグレードをタッチパネルで同時に行える。

 

安全性向上のためプロペラが根元から折れる仕組みになっている

 ※万が一Karmaが何かに接触した場合、対象物への損害を最小限に抑えるため、プロペラがわざと根元から折れやすくなっている。(予備プロペラは多めに持って行った方が良い)

Karmaを操縦するための電波の周波数は、GPSで機体の位置を確かめた後、自動的にその国の法律に則った周波数に切り替わる。(日本の場合は2.4GHz

HERO 5の機能で、速度や軌道やG(重力)を記録して、GoPro Quikアプリで編集した時に動画上に表示することができるが、Karma搭載時もその機能は使える。

▲GoProの編集ソフトQuikで編集した動画

(※Facebookでの画質は最大720pになるので、オリジナルの解像度からは圧縮されています。オリジナル解像度の動画は東京ドローンのWEBサイトで見られます。http://www.tokyo-drone.com/small/small-drone.html

 

今後の進化に期待したいポイント

 さて、ここまで主にKarmaの良い特徴を解説してきたが、最後にネガティブに感じた部分も記載しておこう。

●他社の撮影用小型ドローンと同じく、Karmaも防水仕様ではない。Hero 5 も防水なのだから、Karmaも防水であればより撮影の幅が広がると思う。

 

●より小型化を希望したい。アクティブなシーンでの使用を想定しているのであれば、まだまだ小型化が足りない。特に荷物を極限まで減らしたいような場合にこの大きさは持っていくのを躊躇する場合が多いと思う。

 

●今後ファームのバージョンアップで変わっていくかもしれないが、GPSを使用しない設定も選択できるようにしてほしい。GPSが不安定な場所でのフライトの場合、OFFにした方が安定する。その場合、GPSをOFFにした状態で経験の少ない人が操縦することになるので、超音波やカメラによる位置確認機能もつけてほしいと思う。

 

 

●Karmaの製品情報

http://jp.shop.gopro.com/APAC/karma