ZERO ZERO ROBOTICSから登場した次世代のAI飛行カメラ「HOVERAir X1 PRO」と「HOVERAir X1 PROMAX」。折りたたんで、ポケットに入れて持ち運ぶことができる実用性を兼ね備えながら、最新のカメラ技術を搭載し、より高解像度で鮮明な映像を撮影できるようになったプロの現場でも使用可能なドローンカメラだ。ドローン空撮のスペシャリストであるイナダユウキさんにこの話題の機種をレビューしていただいた。

レポート●イナダユウキ(コマンドディー)

導入

今回HOVERAir X1 PROMAXの基本セットとビーコン & ジョイスティックをご提供いただいたので、レビューしていく。

本製品は、ポケットにギリギリ入る折りたたみ式のコンパクトなボディで持ち運びやすさを確保しつつ、自動飛行による自撮り機能に加え、特徴的な可変構造の送信機「BEACON & JOYSTICK」を用いた自動・手動の両操作にも対応している。カメラ性能の面でも、1/1.3インチCMOSセンサーを搭載し、最大8K/30fps・4K/120fpsの高解像度撮影が可能。“手軽さ”と“映像クオリティ”を高い次元で両立させた、注目すべき一台だ。

本記事では、このX1 Pro Maxについて以下の3点から検証していく。

自撮りドローンとしての機能性

ドローン本体の飛行性能と操作感

映像機材としてのカメラクオリティ

先にまとめ

これまでのポケットサイズのドローンでは、カメラ性能と飛行安定性の両立を期待しても、どちらかが必ず物足りず、結果的に“使わなくなってしまう”ことが多かった。しかしこのX1 Pro Maxは、その両方をきちんと満たす仕上がりで、自撮り機でもあり、野外飛行もでき、室内飛行もできるという、守備範囲の広いドローンとなっている。

特に印象的だったのは、屋外でも室内でも安定して飛行でき、かつポケットサイズに収まるという点。このクラスの小型機で、ここまで実用的な空撮が可能なモデルは非常に稀だ。もちろん、小型ゆえの制約 -たとえば電波到達距離の短さや、業務用途で求められる、飛行時間や、機体性能、カメラ設定など限界はある。だが、室内外で、「サッと取り出して、すぐに撮れる」という点において、X1 Pro Maxは、手軽さと空撮品質のバランスを高次元で実現した1台といえる。

実際のサンプル映像を以下に掲載しているので、ぜひチェックしてみてほしい。手のひらサイズのドローンとは思えない飛行安定性と、カメラクオリティが確認できる内容になっている。いずれのカットもすべて**完全オート設定で撮影された“撮って出し映像”**だ。

収録した映像の主な見どころは以下の通り:

野外でのホバリングの安定性:風のある環境でも大きくブレずに浮いたまま構図を保つ様子

自動飛行の気軽さ:手放しで構図が決まる、数秒で完了する操作性

追跡時の障害物回避:背後の障害物を検知して回避・停止する挙動

4K120fpsによるスローモーション:滑らかで高精細な動きの再現

野外でのマニュアル操作による撮影例:構図や動きが想像以上にしっかりできる

マイクロドローン的な室内飛行:狭い空間でも安定して動ける操作性と映像の滑らかさ

X1 ProとPro Maxの違い:どちらを選ぶべきか?

HOVERAir X1シリーズには、スタンダードモデルの「Pro」と、上位モデルの「Pro Max」が用意されている。見た目や基本的な使い方は共通だが、カメラ性能と内部処理能力には明確な違いがある。

Proは1/2インチCMOSセンサーを搭載し、最大4K/60fpsでの撮影が可能。 一方で、Pro Maxはより大型の1/1.3インチCMOSセンサーを採用し、最大8K/30fpsや4K/120fpsの高精細・高フレームレート撮影に対応している。さらに、Pro MaxはのHDR(10bit HLG)撮影にも対応しており、編集前提の映像制作に向いている。ストレージ内蔵されているが、Proの32GBに対し、Maxは64GBと拡張されている。

両モデルとも飛行時間や操作方法は共通だが、撮れる映像の質や処理の深さにおいてPro Maxが優位である。

操作スタイルの自由度:本体だけでも、スマホでも、送信機でも

HOVERAir X1シリーズは、操作スタイルの柔軟さも大きな特徴だ。

飛行方法は、本体のみ、スマホと接続、ビーコン & ジョイスティックを利用したバリーションなど複数の飛行方法がある。

サイズ感について

折りたたみで持ち運ぶことができ、非常にコンパクト。プロペラは、全面ガードされており、もしもの接触時に安全を確保するだけではなく、持ち運びの際にプロペラが割れて飛べなくなるなどの心配もない。

後述する送信機もスティック状で場所を取らないのも嬉しい点だ。iPhoneProとProMaxとのサイズ差はこのような感じで、ポケットに入るサイズ感だ。

本体単体での自律飛行

電源を入れて手から軽く放つだけで、自動飛行モードが作動し、撮影から帰還までが完結する。アプリや送信機を使わず、本体上部のボタンとディスプレイで飛行方法を選択して、ボタンを押すと離陸。簡単に撮影を始められる点が魅力。

スマートフォンとの接続

専用アプリで、本体から出るWifiで接続。モード選択・映像確認・録画管理・SNS投稿までフル機能にアクセス可能。画面上でプレビューしながら撮影できるため、操作性と確認性に優れる。

ビーコン & ジョイスティックによる操作

アクセサリー「ビーコン & ジョイスティック」は小型モニター付きのモジュラー型送信機で、分解・変形によって複数の使い方が可能だ。



① ビーコンモード

中央ユニットのみを使用。Bluetooth信号を利用したトラッキングで、光量不足や障害物がある場面でも追尾性能を補完する。

オプションとして以下のマウントが用意されており、両手を使わない撮影にも対応:

・GoProマウント変換:胸部ハーネスなどに装着可能

・クリップマウント:衣服やバッグのストラップに固定できる


② 片手ジョイスティック操作

右手側のスティックを装着して片手操作が可能。上昇/下降、旋回、前後左右移動も裏面ボタンを使って制御でき、車の運転に近い操作感。小型モニターで映像も確認可能。ただしカメラのチルト操作は不可。


③ 両手送信機スタイル

左右スティックを装着して展開すれば、一般的なドローンの送信機のように操作可能。チルト操作にも対応し、映像の自由度が向上する。


④ 送信機+スマホ併用

③に加えてスマホを装着すれば、大画面で映像を確認しながら操作できる。設定変更や映像の詳細確認に最適。

このように、自動飛行からフルマニュアル操作まで対応できる設計により、初心者から映像制作者まで幅広いニーズに応える構成となっている。


設定画面

設定画面など一般的なドローンよりも設定画面がシンプルになっており初めての人でも扱いやすい。以下はスマホの画面ではあるが、ビーコン & ジョイスティックの小さな画面でも設定が可能で、タッチパネルになっており画面をスワイプすると設定が出てくる。





▼ビーコン&ジョイスティックの使用ガイド

それぞれの飛ばし方については、HoverAirJapanの公式映像がわかりやすかったので、貼っておく。





自動飛行モードと障害物検知:12種類以上のプリセットで多彩な自動撮影が可能

HOVERAir X1シリーズには、用途別に最適化された12種類以上の自動飛行モードが搭載されています。

単なるホバリングや追尾だけでなく、屋内やスポーツといったシーンに合わせた速度・軌道設定があらかじめ組み込まれているため、ユーザーはモードを選ぶだけで、適切な動きと構図を自動で得ることができます。





以下に代表的なモードと特徴を紹介します:

モード名特徴と用途
ホバリング(Hover)一定の位置に静止し、被写体を正面から安定して捉える。屋内や集合写真に向く
フロントフォロー(Front Follow)被写体の正面をキープしながら後退し続ける。表情を捉えながら動きを追う
サイドトラッキング(Side Tracking)被写体の横に並走して移動。歩行やランニングに自然な動きを加える
オービット(Orbit)被写体を中心に旋回しながら撮影。空間全体の様子を映し出す
俯瞰撮影(Bird’s Eye)上空から真下にカメラを向けて撮影。集合・地形撮影に向く




さらに、シーン特化型のフォロー系モードも用意されており、撮影環境に応じた速度・挙動が自動調整されます:


シーン特化モード説明
屋内フォロー狭い空間向けにスピードを制限し、壁などへの接近を抑える安全仕様
サイクリングフォロー中速移動の対象をスムーズに追尾。GPS不要で林道や舗装路にも対応
スキーフォロー被写体の急加速や不規則な軌道に対応した追尾制御。風の影響も自動補正




これらのモードはすべて、本体上部のボタン、スマホアプリやBEACON & JOYSTICKから選択でき、被写体との距離・高度・角度などはプリセットのままでも使えるし、画面で任意の距離に変更も可能です。

撮影経験の有無を問わず、“ただ選ぶだけ”で目的に合ったカットが得られる仕様になっています。



障害物検知:バック飛行中でも“止まる”

Pro / Pro Maxともに後方近接センサーを搭載しており、自動飛行中の障害物検知に対応しています。

このセンサーは背面の障害物を検知し、接触前に機体を減速・停止させる仕組みです。

X1 Proでは、後方へ移動中に最大1.5m/sの低速度でブレーキが作動

X1 Pro Maxでは、これが最大3m/sまで対応しており、やや高い速度域でも制御可能

特に活きてくるのが、Zoom OutやOrbitといったバックしながら撮影するモードでの運用です。

自動で後退している最中に障害物が現れても、機体がしっかり検知して停止動作に入るため、人や壁との接触リスクを最小限に抑えることができます

この後方検知により、限られたスペースや都市部のような障害物の多い場所でも、安心して自動飛行モードを使用できます。



機体登録とリモートIDについて

HOVERAir X1 Pro/Pro Maxは、内蔵リモートIDに対応しています。

そのため、国土交通省の機体登録ページ(DIPS)で登録を行い、登録情報をスマホアプリから機体へインポートすることで、国内の航空法に対応した運用が可能です。実際に筆者が登録作業を行った際は、DIPSアカウントを持っていれば支払いも含めて10分程度で完了しました。

登録番号の入力やQRコード読み込みなどもアプリ上で案内されるため、手順に迷うことはありませんでした。





機体登録だけの場合は、特定飛行と呼ばれる航空法で禁止された事項(例:人口集中地区での飛行、目視外での飛行、夜間飛行など)に抵触しないか、室内で飛行させる必要があります。

なお、補足ですが、特定飛行を行う場合には、事前に国土交通省への許可・承認申請が必要です。

リモートIDへの対応については、HoverAirの公式ページにも記載がありますので、参考に

https://jp.hoverair.com/blogs/guide/hoverair-x1-pro-promax-remote-id-registration-guide

手動飛行と操作感:自分で飛ばす快感と実用性のバランス

HOVERAir X1 Pro Maxは、自動飛行がメインの設計思想ながら、Tri-State Joystickを使った手動操作にも十分対応できる性能を備えている。

今回は片手ジョイスティック操作と、両手でのフルコントロール操作の両方を試し、実際の操作感や飛行安定性を検証した。



操作応答性と自由度

片手ジョイスティックでは、上昇・下降、旋回、前後左右の移動が片手で完結でき、非常に直感的。

特に「裏ボタン+スティック倒し」で移動方向を切り替える設計は、車の運転に近い感覚で操作できるのが印象的だった。

両手での送信機スタイルでは、一般的なドローンと同じ感覚でフルマニュアル操作が可能で、右手上側のジョグダイヤルで、カメラのチルト操作も追加されるため、構図の自由度が大きく向上する。



飛行安定性と耐風性能

実際に屋外で使用したところ、風速4〜5m/s程度であればほとんど挙動の乱れは見られなかった

機体が軽量ながらも、ジャイロとソフトウェア補正がしっかり働いており、突風を受けた際も自動的に姿勢を補正する。



映像伝送と遅延

ジョイスティックの内蔵モニター、およびスマートフォンへのリアルタイム映像伝送については、以下のように何で接続しているかによって伝送距離が異なる点は注意が必要だ。

スマホ(Android)接続時:伝送距離最大200m

スマホ(iOS)接続時:最大150m

ビーコン経由:最大500m(遠隔操作補助)

映像のリアルタイムプレビューには0.3〜0.5秒程度の遅延があり、スポーツ撮影などで構図を追い込む場合は多少の慣れが必要。

ただし、本体内蔵メモリに記録される映像自体には影響しないため、録画結果は常に安定した品質で得られる



カメラの映像品質:“映像機材”としての実力

HOVERAir X1 Pro Maxのカメラは、単なる「ドローンに搭載されたカメラ」ではなく、実用的な映像制作ツールとしての性能を持っている。

1/1.3インチのCMOSセンサーを搭載し、最大8K/30fps、4Kなら最大120fpsの撮影に対応。

高精細なワイドショットから、滑らかなスローモーション、ダイナミックレンジ重視の記録まで、多様な用途に応える。



映像の質:解像感と階調表現

実写映像では、空や肌のトーン、逆光下での明暗の描き分けなど、細部の情報量が豊富で、スマホカメラとは明らかに一線を画している。

明部と暗部の階調も自然に保たれており、ハイライトの白飛びやシャドウの潰れが起きにくい。10bit HLG HDRに対応していることで、映像の情報密度はさらに向上している。

特にPro Maxは、編集前提での撮影に耐える素材を出力でき、映像制作者にとっても信頼できる収録ツールとなり得る。



撮影モードの種類と活用用途

撮影モードとしては、以下の選択肢が用意されている:

通常(スタンダード):SNS投稿や日常記録向け。自動補正が強くかかる。

HLG(10bit HDR):明暗差のあるシーンで有効。後処理での柔軟性がある。

スローモーション:最大4K/120fpsまたは1080p/120fpsで滑らかな動きを記録。

HDR:明部と暗部の情報を広く保持。HLGとは異なる色処理を行う。

HoverCine:彩度が抑えられたフラットな映像が出力され、カラーグレーディング前提の素材として使いやすい。

特にHoverCineモードは、彩度とコントラストが抑えられているため、編集時に色調や雰囲気を自在に調整したいユーザーにとっては最適だ。

一方で、撮って出しで使いたいユーザーは通常モードやHLGを選ぶとよい。



手ブレ補正と構図制御

EIS(電子式手ブレ補正)に加え、AIによる構図と露出の自動最適化が有効に働き、安定したクオリティの映像が得られる。

荷物のコンパクトさと映像クオリティのバランス

空撮映像にある程度のクオリティを求めると、従来はそれなりに大きくて重い機材が必要になるのが常識だった。

特に、ジンバル搭載のドローンや高画質カメラを使う場合は、専用ケースや複数バッテリー、送信機などで荷物が確実にかさばる

それに対し、HOVERAir X1 Pro Maxは、本体が折りたたみ式で、送信機(Tri-State Joystick)もスティック状に分解可能な構造を採用している。

実際に持ち運んでみても、バッグの片隅に収まるレベルのサイズ感で、バッテリーとコントローラーを加えても非常にコンパクトにまとまる。

「がっつり撮るつもりはないけれど、移動の合間にちょっと空撮もしたい」といった軽めのニーズにも十分応える構成であり、
荷物を減らしながら、空撮映像という付加価値を持ち歩ける点は本機の大きな魅力のひとつだ。



惜しい点と用途の見極め

完成度の高い製品である一方で、いくつか留意すべき点もある。

特に**「本格的な空撮制作」を主目的とするユーザーにとっては、用途を選ぶ側面がある**。

映像伝送距離は控えめで、スマホ接続ではAndroidで最大200m、iOSで最大150mにとどまる。障害物や電波環境によってはさらに短くなるため、広域空撮や山岳・海上などでの運用には制限が出やすい。

飛行時間は約16分程度と、軽量設計とのトレードオフとなっており、連続稼働や長回しには複数バッテリーの用意が前提となる。

送信機(Tri-State Joystick)のグリップ感はやや浅く、ホールド時に安定性に欠ける場面もある。特に両手スタイルでの使用時は、やや意識的に握る必要があると感じた。

これらを踏まえると、映像の“量”や“品質”を継続的に求める商業空撮用途には適さない

逆に言えば、気軽に持ち出せて、決定的な1シーンを確実に押さえるような使い方においては、この軽量性と撮影クオリティのバランスは他に代えがたい強みとなる。



まとめ:映像クオリティ・自撮り性能・携帯性が揃ったバランス機

HOVERAir X1 Pro Maxは、自撮り性能・映像クオリティ・携帯性という、通常はトレードオフになりがちな要素を、非常に高い水準で両立したドローンだと感じた。

ドローンに不慣れな人でも、旅行やアウトドアのシーンで気軽に持ち出し、数ステップの簡単な操作で印象的なカットが撮れる。

「手軽さとクオリティ、その両方がほしい」。これまでなら相反していたようなニーズに、明確に応える製品が登場したことに、ドローン技術の進化を強く実感した。

なお、今回はレビュー対象外だが、HOVERAirからは**日本限定モデル「X1 Smart」**という99gの軽量機も発売されている。航空法上の一部制限を回避できるモデルであるため、今回のPro Maxの完成度を踏まえると、その実力も大いに気になるところだ。



HOVERAir X1 Pro Max

機体性能について

項目X1 ProX1 Pro Max
重量約191.5g約192.5g
サイズ(折りたたみ時)105 × 149 × 34 mm同左
サイズ(展開時)173 × 149 × 39 mm同左
最大飛行時間約16分同左
最大風圧抵抗約10.7 m/s同左
最大飛行速度(水平)最大42 km/h同左
最大追従速度(3秒)最大60 km/h同左
バッテリー容量1920mAh同左
操作方法本体単体 / スマホアプリ / Tri-State Joystick同左
伝送距離(スマホ接続)Android:最大200m/iOS:最大150m同左
伝送距離(ビーコン)最大500m同左
内蔵ストレージ32GB + microSD(最大1TB)64GB + microSD(最大1TB)
センサー(障害物検知)後方近接センサー後方近接センサー+ビジョンベース後方検知(ブレーキ性能向上)




カメラ性能について

項目X1 ProX1 Pro Max
センサーサイズ1/2インチ CMOS1/1.3インチ CMOS
静止画解像度最大12MP(4000×3000)最大48MP(8000×6000)
最大動画解像度4K@60fps/1080p@120fps8K@30fps/4K@120fps/1080p@120fps
撮影モード通常、スローモーション通常、HLG、スローモーション、HDR、HoverCine
電子手ブレ補正(EIS)対応対応
ビットレート(最大)最大100 Mbps最大160 Mbps(8K撮影時)