国内の撮影機材ショー「InterBEE」、ヨーロッパ・オランダの「IBC (International Broadcasting Convention)」、北米・ラスベガスの「NAB Show」が、放送業界の世界三大イベントと言われているのはご存知だろう。これら以外にも、小規模な撮影機材ショーは世界各地で開催されている。今回、ドイツ・ニュルンベルクで開催された「Imaging World」とフランス・パリで開催された「Salon de la Photo」を取材した。どちらもカメラや写真がメインの展示会だが、日本のカメラメーカーをはじめ多くのアクセサリーメーカーが出展していた。会場の様子をお伝えしよう。
Report◉柴田誠
準備編
デジカメからパソコンまで、どこに行っても苦労するのは電源の確保
海外取材で気をつけないといけないことはいろいろあるが、昨今はモバイルバッテリーの発火事故を受けて、取り扱いがかなり厳しくなっているので特に注意が必要だ。今回利用したキャセイパシフィック航空では、預け入れ荷物に入れるのはもちろん不可。手荷物として機内持ち込みにするだけでなく、頭上の荷物入れには入れずに座席前のシートポケットに入れるよう推奨されている。機内での充電はNG行為だ。さらに、持ち込みできる容量にも制限があって、多くの航空会社で160Wh以下となっている点にも注意が必要だ。
最近のカメラはPD(パワーデリバリー)対応になっていて、USB給電や充電ができる。それだけにモバイルバッテリーは、撮影に欠かせないアイテムのひとつ。充電器や大量の予備のバッテリーがいらない分、荷物を減らすことができるようになったのはありがたい。のだが、預けられない手荷物は少しずつ増えている。
今回の取材のために借りたカメラはライカQ3、リコーGR IV、OM SYSTEM OM-3。いずれもPD対応でUSBによる給充電ができる。

海外の取材で欠かせないもうひとつのアイテムがコンセントの変換プラグだ。国や地域によってコンセントの形状が異なるので、国をまたいで移動する場合は必須アイテム。現地で買えないことはないのだが、日本のようにあちこちにコンビニがあって、どこでも欲しいものが手に入るというわけではないし、円安なだけに余計な出費は抑えたい。
古いホテルだとコンセントの数が少ないことが多いので、カメラやパソコン、そしてモバイルバッテリーなど、夜のうちにしっかり充電できるように準備しておく必要がある。電源の確保は、どこに行っても苦労させられる問題のひとつだ。写真は某ホテルのコンセント。ヨーロッパでは左のBタイプが主流だが、イギリスで使われている右のBFタイプがある場合もある。

ドイツ・ Imaging World
初開催
ドイツのニュルンベルクで開催されたカメラショー「Imaging World」は、2025年10月10日(金)~12日(日)の3日間、ニュルンベルクメッセで開催された。ドイツ国内では4年ぶりのカメラショーだが、世界最大のカメラショーとして知られる「フォトキナ」から数えると7年ぶりとなる。メーカーだけでなく、販売代理店や輸入代理展なども出店していて、会場では商品の販売はない。商品に触れてもらうことを目的にしているようだ。今回が第1回目の開催ということもあってか、参考出品のチラ見せやプレスカンファレンスといったメーカーからの積極的なアピールは特になかった。




キヤノン、ソニー、ニコン、富士フイルム、パナソニック、OM SYSTEM、リコー、シグマ、タムロンと、主要な日本のカメラメーカー、レンズメーカーが出展していた一方、動画の機材ショーでよく見かけるサムスン、ATOMOS、Blackmagic Designやソフトウェア、3DやVR関連のブースはほとんどなく、代理店のブースでロゴを目にする程度だった。静止画に振り切ったショーといった感じだ。詳細の情報は日本にいるとなかなか入ってこないので、実際に会場に足を運んでみないとわからないことも多い。
ジャングルがコンセプトのキヤノンブース。ステージを備えた大きばブースは多くはなかった。スタッフもサファリジャケットのようなユニホームで接客していた。


ライカやフォクトレンダーをはじめ、サンディスク、レキサーといったメディアメーカー、insta360、DJI、SmallRig、GODOX、EIZOなどの動画関連メーカーとして日本でも名前を知られた企業はほぼ出展していた。ただしブースの規模は比較的小さくて、造りもシンプルだ。
動画向けのアイテムを扱う販売代理店New Media AVのブース。小さなカウンターいっぱいにライティング機材や編集機材が並べられていた。

SmallRigのブースも最小サイズ。スペースが狭いせいか、ワゴンの上に小さなアイテムが展示されていた。比較的大きくて目をひいたのがスマートフォン用のリグ。マイクやライトが装備されている。



カメラメーカーとしてはあまり大きくないニコンブース。「ニコンZR」が1台だけ展示されていて、来場者の注目を集めていた。


ハイエンドの記録メディアメーカーANGELBARDのブース。イチ押しはハンドル付きの内蔵SSD「AV PRO MK3」ということで、詳しく紹介してくれた。


展示エリアと同じくらいの広さがあった商談エリアには、カテゴリー分けされて商品が陳列されていた。ユニークな展示方法だが、注目されるような目立った商品はなかった。

動画関連のブースは少ないものの、関心がないかというとそういうわけでもない。会場のあちこちに、ビデオカメラがセットされている撮影体験コーナーが設けられていて、機材を自由に操作してみることができるようになっていた。





メインステージの正面にはカウンターキッチンが設けられていて、1日に数回、料理をする様子をライブ中継してモニターで見せていた。こちらのカメラ操作はスタッフが行なっていた。会場を取材して回るスタッフの姿もあちこちで見られた。






Foolographyのブースでは、スマートフォンでカメラをリモート制御する「Unleashed(アンリーシュ)」のデモが行われていた。本体をカメラのBluetoothポートに装着し、アプリを使ってスマートフォンでほぼ全てのカメラ操作ができるようになる。電源はUSBポートから供給する。画質や測光モードの変更など、メーカーの純正アプリよりも細かい設定ができるようだ。



来場者がORCAのハーネスの装着感を試していたのは、シネ用のアクセサリーを扱うCBMのブース。カメラバッグやポーチ、ハーネスなどが所狭しと並べられていた。


エントランスホールではわずかに写真の展示か行われていた。2階と3階にある会議室ではセミナーやワークショプの会場になっている。

会場の外では、メーカー主催によるフォトウォークや撮影会なども行われていた。クレーン車で上空から会場周辺の紅葉を撮影するイベントもあったのにはちょっと驚いた。


初日の終了後には隣にある展示ホールでTIPA WORLD AWARDSの表彰式が開催された。40のカテゴリーで選んだアイテムを表彰するもので、受賞者全員で記念写真を撮るのが恒例となっている。今回はまるでコンサートのようなド派手な演出でセレモニーが行われた。




ドイツ「Imaging World」の会場を2日間歩き回って感じたのは、比較的若い来場者が多かったが女性の来場者は少なかったということ。初回ということから、コアなユーザーが多かったということなのだろうか。来年がどんなものになるのか楽しみだ。
思ったほど会場が広くなかったので、最終日はパスしてパリの「Salon de la Photo」を取材することした。フランクフルト経由でパリまで、ちょっとした電車旅になる。

