Insta360のフラッグシップ360度カメラの最新モデルX5が登場! 前モデルのX4から実際、どんな進化があったのか? UIデザイナーであり、ビデオグラファーとしても活動する河原崎さんに実際のフィールドで使ってもらい、使用感をレポートしてもらった。

レポート●
河原崎  平
2021年より東京から沖縄へ移住。Web制作会社にUIデザイナーとして勤務する傍ら、個人でもビデオグラファーとして活動しています。 Youtube Instagram HP X

2025年4月、360度カメラの最新モデルとなるInsta360 X5が発表されました。X3からX4への発売スパンは約1年半だったのに対し、今回は全モデルから約1年と例年よりも早いスパンでの発売となりましたが、今回はどのような進化を遂げたのでしょうか。

筆者は普段ミラーレス一眼カメラを使って撮影をしており、360度カメラはあまり使用した事がないため、このカメラによってどのような体験ができるのか楽しみでした。

今回はこのカメラの特長や進化ポイントなどを中心にレポートします。

記事の後半には作例映像や過去モデルとの比較表も記載してますので、ぜひ最後までご覧ください。



Insta360 X5とは

X5はInsta360の新しいフラッグシップ8K 360度カメラで、シリーズ発売から時を重ね、着実に進化を遂げてきたカメラです。

360度カメラは現在あらゆるシーンで活躍しており、vlogやスポーツシーンでの撮影はもちろん、物件情報のバーチャルツアー、企業のオフィス・工場の紹介映像、観光施設での体験映像等でも360度カメラが使われているのを目にします。

もっと身近なシーンだと、車のドライブレコーダーやGoogleMapでも使われていたりしますね。

Insta360 Xシリーズでは、前モデルのX4からは8Kにも対応し、画質の面でもここ数年でとても進化したように感じます。

実際に私も今回使用しましたが、アイデア次第では様々な使い方・魅せ方ができるポテンシャルを持ったカメラだと感じました。





外観

早速insta360 X5の外観を見ていきましょう。

全体のサイズ感としては前モデルのX4と比べてほぼ同じサイズです。下記はX4と並べた写真ですが、本体サイズやディスプレイサイズに大きな違いはありません。

中身のスペックについては後でお伝えしますが、よくカメラサイズを維持したまま、今回のアップデートを体現できたなと感じました。

表面はジオメトリック柄となり、前モデルに比べてスタイリッシュなデザインとなりました。


左が今回のX5で右が前モデルのX4です。サイズの違いは感じませんでした。




USB-Cの位置や表面デザインなど前モデルから一部変わった所もありますが、撮影ボタンやバッテリー位置、画面UIなどは基本的に前モデルを引き継いでいるので、X4を使用していた方でも迷わずに操作できるのは嬉しいポイントです。 縦長の形状はこのシリーズの特長ではありますが、実際に持ってみるとホールド感があり、とても持ちやすいです。


機体のサイドには電源ボタンとクイックボタンとUSB-C。



逆サイドにはバッテリー挿入口。



バッテリーを取り出した中にmicroSDカードの挿入口があります。



下部には従来と同じ規格のネジ穴があり、自撮り棒や三脚が装着できます。また新開発のマグネット式マウントシステムにより、対応するアクセサリーを瞬時に着脱可能となりました。



大きく見やすいディスプレイで、光量の多い環境でもディスプレイの視認性は保たれていました。




ここからはX5の進化した中身についてご紹介します。



大型化した新しいセンサーとトリプルAIチップ搭載による画質向上

今回搭載された1/1.28 インチセンサーは前モデルよりも144%大きくなり、また2.44μm相当のピクセルサイズと13.5ストップのダイナミックレンジが備わりました。

また360度カメラ史上初めて3つのAIチップが搭載され、低照度下での画質向上とノイズ低減や強力な画像処理、処理速度の高速化による画質の向上が実現されました。

私は数年前に他社製の360度カメラを使用したことがあり、その時は画質の面で満足感を得られませんでしたが、今回のX5では、とてもクリアで鮮明な映像が撮影できました。

下記はX5と前モデルのX4を同じ環境で撮影した際の比較キャプチャです。

今回のアップデートによって、全体的に解像感がより鮮明にアップしたように感じました。


空や葉などのディティールが、鮮明になったように感じます。(画像をクリックすると原寸大の画像を表示できます)




下記はX5で8K/30pで撮影したVR動画です。

※閲覧環境によっては、最大解像度の8Kで再生できない場合があります。




暗所撮影に最適化された「PureVideoモード」

X5では通常の動画モードとは別に、低照度環境下での専用撮影モード「PureVideoモード」が搭載されました。このモードでは、1/1.28インチセンサーとトリプルAIチップのノイズ低減により、夜間撮影での画質が大きく向上されました。

実際にX5で、暗所にてノーマルモードとPureVideoモードでテスト撮影をしましたが、PureVideoモードの方が圧倒的に明るくかつノイズが少ない映像が撮れました。


PureVideoモードとノーマルモードの比較動画



上記の暗所テスト動画のワンシーン。PureVideoモードのほうが暗所撮影に優れています。(画像をクリックすると原寸大の画像を表示できます)




個人的には光量が少ないシーンでの撮影の際に、PureVideoモード推奨のアラートが画面に表示されるので、設定に迷わなくなるのが嬉しいポイントでした。


低照度環境で使用すると、上記のようにPureVideoモードの推奨アラートボタンが画面に表示され、任意で変更できます。




5.7K60FPS アクティブHDR よりスムーズでシャープなアクション

ハイライト&シャドウのディテールと色彩を捉え、 逆光環境や明暗差の激しいシーンでの撮影も、よりリアルな映像体験ができるアクティブHDR機能は、5.7Kで60fpsにアップグレードされました。

前モデルは5.7K30fpsまでの対応だったので、スポーツシーン等で滑らかな映像やスローモーション撮影したい際に、このモードが使えるようになったのは大きなポイントです。


従来同様に直感的でわかりやすいUIで設定を変えることができます。




強度が増したガラスレンズと防水性能による耐久性の向上

ガラスレンズは光学的に超硬質なダイヤモンドフィルムが採用され、これまでのシリーズで最も強度の高いレンズとなりました。

さらに修理に出さなくとも自身で交換ができるようになり、万が一外出先でレンズが破損した場合も簡単にレンズ交換が可能になりました。

これにより傷や破損を気にして慎重に撮影をしていたユーザーでも、より過酷なシーンでも大胆な撮影ができるようになると思います。

もちろん、これまでのようにレンズガードを付けて撮影も可能です。


より強度が増したガラスレンズ。自身での交換も可能です。




また、防水性能は水深10mから15mまで向上しました。私の住む沖縄では海での使用シーンもあるので、さらなる安心感を得られるアップデートです。



バッテリーの向上と急速充電に対応

2400mAhの大容量バッテリーにより、耐久モードで最大185分(※1)の連続稼働が可能となりました。

バイクや乗り物に取り付けた撮影など長回しで使うシーンはたくさんあるので、バッテリー向上はとても嬉しいアップデートです。

さらに急速充電にも対応。わずか20分でバッテリーを80%(※2)まで回復させます。

X4からバッテリー設計が変わったので過去モデルとの互換性は無いため、その点だけ注意が必要です。

※1 室温25°Cのラボ環境にて、耐久モードでアクティブHDRをオフにした5.7K24fps動画で検証。 バッテリーの持ち時間は条件によって異なります。

※2 25°Cのラボ環境にて、PD3.0 PPS認証の30W USB-C充電器を使用してカメラの電源がオフの状態で検証。 充電時間は条件によって変わります。



新しくなったウインドガードでよりクリアなオーディオに

新しくなった多層スチールメッシュ・ウィンドガードとオーディオアルゴリズムにより、風切り音の低減は、風の強い状況下でもクリアな音声を実現し、さらに臨場感あふれるサウンドを収録できるようになりました。


レンズの下には新しくなったウインドガード。




即座に撮影を開始できるツイスト撮影

Vサイン等の特定のポーズに反応して撮影・録画開始をするジェスチャー機能に加えて、X5では自撮り棒を装着した撮影の際に、自撮り棒を軸に2回左右に捻るだけで撮影・録画開始・停止ができる「ツイスト撮影」の機能が加わりました。

この機能はスキーやダイビングなど、本体の録画ボタンを押すのが困難なときにとても便利です。

実際に私も自撮り棒を長く伸ばした状態で撮影する際に、この機能の利便性をとても感じました。

※この機能は、設定画面から「ひねって撮影」をオンにすると使えます。デフォルトではオフになっています。



上記動画のように、左右に2回クイッとひねると、録画が開始・停止されます。




新しいInstaFrameモードで360度動画とフラット動画を同時に収録

新しくインスタフレーム(InstaFrame)モードが導入されました。

これは固定ビュー・自撮りビューといったオプションを選択後、自動でフレーミングしてくれるフラット映像を撮影ができ、同時に360度の映像(5.7K+ 30fpsまで)を記録できるモードです。

さらにカメラから直接動画を共有できるので、撮影から共有までのワークフローがよりスムーズにできるようになりました。



様々な撮影モードを搭載

X5では360°モードとシングルレンズモードで、ユーザーの用途によって使い分けられる様々な撮影モードが搭載されています。



【360°モード】

・動画
手ブレ補正を自動的に適用した通常の動画撮影

・PureVideo【NEW】
暗所環境に優れた撮影

・インスタフレーム【NEW】
360°とフラット動画を同時に収録

・タイムラプス
定点で一定の間隔を空けて撮影した写真をつなぎ合わせて、コマ送りする動画

・タイムシフト
カメラを動かしながらタイムラプス撮影するモード。後で速さを調整可能

・バレットタイム
撮影者を軸に360度回転するスローモーション動画

・ループ録画
途切れることなく録画し、直近の固定時間セグメントのみ保存

・ドラレコ
SDカード容量の一部をこのモードに割当て、容量いっぱいになったら一番古い動画を自動上書き

・スタープラス
星空複数枚の写真を撮影し自動的に結合。主に星の軌道を撮影するモード

・写真
通常の写真モード(最大72MP)

・バースト(写真)
短時間に複数枚の写真を撮影

・インターバル(写真)
一定の間隔での連続写真撮影


【シングルレンズモード】

※片方のレンズのみ使用したフラットな動画を撮影するモード

・動画
手ブレ補正を自動的に適用した通常の動画撮影

・FreeFrame動画
撮影時に手ブレ補正と水平維持を適用し、専用のソフト・アプリ編集時にアスペクト比や視点を変更できるモード

・ミーモード
自撮り用のモード

・ループ録画
途切れることなく録画し、直近の固定時間セグメントのみ保存

・写真
通常の写真モード(最大36MP)



過去モデルとの比較

ここでは過去モデルとの比較スペックをまとめました。



カテゴリーX5X4X3
センサーサイズデュアル1/2.8″センサー1/1.3インチCMOSデュアル1/2″センサー
画像処理チップすべての動画仕様に対応するハイダイナミックレンジ、4K/60fpsのハイダイナミック&低照度撮像性能あらゆる動画仕様に対応するハイダイナミックレンジ
360度動画 最大 解像度/フレームレート8K30fps 5.7K+30fps 5.7K60fps8K30fps 5.7K+30fps 5.7K60fps5.7K+30fps
アクティブHDR5.7K60fps5.7K30fps5.7K30fps
PureVideoモード対応
InstaFrameモード対応
連続撮影時間180分 (5.7K30fps耐久モード、ラボ環境)135分 (5.7K30fps、ラボ環境)81分 (5.7K30fps耐久モード、ラボ環境)
交換可能レンズ対応
見えない自撮り棒効果対応対応対応
FlowState手ブレ補正 + 360度水平維持対応対応対応
脱着式レンズガード対応対応(通常版に含まれます)
防水性能15m防水10m防水10m防水
Insta360+ クラウドサービス対応対応対応
ツイスト撮影対応
急速充電対応 20分で80%まで(ラボ環境)




Insta360 X5 実際の使用感と作例

このカメラを使って、先日石垣島へ訪れた際に撮影した作例動画をつくりました。

通常の一眼ミラーレスカメラではできない撮影や使い方ができ、とても楽しい体験でした。

動画内の洞窟では今回新たに搭載されたPureVideoモードを使用。おかげで暗い環境でもノイズの少ない綺麗な映像が撮影することができました。

また動画内のリスザルなど、動きが早い動物も撮り逃がさず撮影できるのは、全方位捉えられるこのカメラのメリットです。

撮影時は主に自撮り棒をつけて撮影したのですが、手ブレ補正がとても優秀で、特に意識せずともブレを抑えられた映像が撮れました。

色味や明るさについては、撮影時のオート設定が優秀なので編集で調整せず撮って出しで、ナチュラルかつ鮮やかな色合いで撮影できました。





上記の映像はPC版の専用アプリケーション「Insta360 Studio」で全て編集しました。

360度動画の編集は、難しく取っ付きづらいイメージがあったのですが、Insta360 Studioは直感的なUIで、慣れたらサクサクと編集することができました。

普段DavinciResolveを使う私にとって、編集時のタイムラインで素材のレイヤー分けができないなど、このアプリのみで編集を仕上げるには、ややかゆいところに手の届かないと感じた点は、今後のアップデートに期待です。


PC版のInsta360 Studioの編集画面。




画質やバッテリー持ち、使いやすさを向上する機能など、多方面でユーザーの求めていた進化を遂げたInsta360 X5。

アイデア次第で様々な表現方法や使い道があり、ブランドスローガンである「Think bold.」の通り、大胆で革新的な映像を生み出すクリエイターにとって、魅力的な武器となるカメラだと感じました。