レポート⚫︎栁下隆之
映像クリエイターの方々は一眼動画に限らず大判センサーカメラでの動画撮影では、必ずと言って良いほどNDフィルターのお世話になっていることでしょう。
以前NDフィルターの記事を書かせていただいた経緯のある筆者は、今までいくつかのブランドをテストした結果、最も優秀だと感じたケンコー製のVR NDX-Ⅱを使用しています。
現在では多くのメーカーが製品化しており、過去品質にばらつきの多いイメージの有ったバリアブルND(濃度可変型)フィルターは、安心して購入できる品質に落ち着いてきたように思います。
とはいえ、画質を求めて吟味すれば、お眼鏡に叶う製品はごくわずかというのが筆者の見解です。その基準となるのが、装着時のホワイトバランス(WB)のカラーシフトと、高濃度時のムラの発生です。ムラに関しては各メーカーとも品質は向上してきて、超広角レンズで高濃度を使った時以外は目立たないのですが、装着時のカラーシフトについては改善できてない製品が多いのが実情です。
過去のテストでは、ケンコーのVR NDX-Ⅱが唯一といえる程、カラーシフトを最小限に抑えていて、同社の旧製品や他社については、少なからずWBの調整が必要な程のカラーシフトが発生していました。ただし、この優秀なVR NDX-Ⅱでも、超広角レンズとの組み合わせでは、中間程度の濃度からムラが発生することがあり、晴天の屋外などでは他社製品を併用するなどの必要性がありました。
特に、今や必須とも言えるLog撮影ではISOを低感度に設定できないなど、バリアブルNDが苦手とする高濃度域を使用することが多くなり、明るい単焦点レンズを絞り開放域で使いたい場合は、フィルターでの減光不足で絞りが開けられない不都合が発生します。
※Log撮影ではカメラの機種ごとで異なるが、センサーの基準感度に下限値が固定されるため、必然的に感度設定が高くなる。テストで使用しているLumix S1Hでは下限値がISO640(または3200)。
そこで、ケンコーが2024年秋にラインナップに加えたのが「VR ND-W」です。「加えた」と表現しているのは、VR NDX-Ⅱが併売になっているからで、その意味合いも含めて性能比較をしてみたので動画でその結果をご覧いただきましょう。

※24mm + ND128相当のテストでは、NDXⅡでは顕著に濃度ムラが発生している。真夏の晴天の日中などで、ワイドレンズを使用する場合は、ND+絞りでも露出過多に対応できない場合はあるので注意。
というわけで、レンズの広角域とフィルターの高濃度の組み合わせでは、VR ND-Wにメリットがあるが、標準から望遠域や、低濃度での使用はカラーシフトが発生しない点において、VR NX-Ⅱにメリットがあります。特に、NDフィルターの着脱が多くなる屋内や低照度の屋外(朝、夕、日陰)では、WB補正の必要のないVR NDX-Ⅱを選択しておけば間違いないでしょう。逆に、基本的には日中の屋外で広角~標準のズームレンズにNDフィルターを付けっぱなし、という場合にはVR ND-Wを選択しておけば、NDの濃度ムラに悩まされることはありません。しかしながら、その場合はわずかながらWBのカラーシフトが気になる場合はありますので、補正をしたほうが良い結果が得られると思います。特に同じシーンで、絞りの開閉でNDの着脱が発生した場合には注意しましょう。

※銀一シルクグレーカード2.0でプリセットホワイトバランスを設定した後に同一光源での比較。ND無しに対して、NDX-ⅡとND-Wは僅差だが、他社製はアンバー方向に色が傾いている。
今回、動画の中で比較した物は国内の大手メーカー製ですが、ケンコー製の2種と比較してアンバー方向(色温度が下がる)にカラーシフトが発生していることが分かると思います。Auto WBでの運用では気が付かないレベルですが、WBを固定で撮影した場合は、着脱時に色味の印象が大きく変わるので注意が必要です。
バリアブルNDは多数のブランドから発売されていますが、テスト結果を加味してカラーシフト&濃度ムラの2点をクリアできる製品を選ぶならKenkoのVR ND-Wだと言えそうです。1枚だけ導入するならVR ND-Wを、予算に余裕が有るならVR NDX-Ⅱを追加導入して2枚持っていれば、あらゆる撮影状況に対応できる万全の備えになると思います。
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