iPhone 15 Pro Max用の撮影エコシステム、TILTA Khronosがまもなく正式に発売開始をされるらしいということで、いち早くそのデモ機を使わせてもらうことになった。VIDEO SALON WEBINARにご登壇いただいたiPhoneographerの山﨑拓実さんにさっそく使ってみた感想を聞いてみた。
インプレッション◉山﨑拓実 聞き手◉編集部
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ウェビナーのときにお話ししたとおり、2023年の12月にティザー的に、YouTubeにTILTA KhronosというiPhone 15 Pro Max用のシステムで撮った動画The X Gift — A Holiday Short Film Shot on iPhone 15 Pro with Tilta Khronos Ecosystemが公開されて話題となりました。
TILTAの日本代理店のジャパンブロードキャストソリューションズさんから、デモ機をお借りすることができたので、使ってみた印象をご紹介したいと思います。
お断りしておきますが、最終のものではないので、仕様が変更される場合があります。その点はご了承ください。
さっそく現場投入で自主映画の撮影で使ってみたのですが、一言でいうとなんかこれは凄いなという感じです。これまでiPhoneまわりでいろいろなものを使ってきましたが、その中でもベストと言えるものでした。私自身もすべての機能を把握しているわけではないのですが、わかった限りでお伝えしていきます。
このデモ機はiPhone 15 Pro Max専用ということで、まずはアルミフレームを4つのネジでレンチで固定します(レンズは付属されていた)。最初はこれは面倒かなと思ったのですが、そうではなくて、この状態で日常遣いしてほしいということなんですね。
その証拠に、ここにすっぽり入るカードホルダーがあって、こんな感じで使うことができます。
5000mAhのバッテリーグリップとワイヤレス充電できる空冷ファン
で、このKhronosの最大のポイントが、5000mAhのバッテリーが内蔵されたグリップと、空冷ファンですね。ファンのほうは、カードホルダーを外して、そこにぴたっとつけられます。実はこれが充電器になっていて、バッテリーからフレームをつたって、この空冷ファンからiPhoneのほうにワイヤレス充電ができるんです! 充電の速度も結構速くて驚きました。ファンの横にあるボタンを押すと、ファンとワイヤレス充電、それぞれ2段階で調整できます。
空冷ファンはほんとにありがたいです。これまでも他社で空冷ファンはありましたが、別に電源が必要だったりして、ゴテゴテつけることになってしまっていました。これであれば電源供給含めてシステムになっているので、スマートに空冷ファンを取り付けられます。iPhoneで配信をやったことがあるのですが、ずっと回していると途中で映像がとまったり、アプリが不安定になることがあるのですが、これがあるとすごい勢いで冷却される。冬だとこの部分が金属なので、ものすごく冷たくなりました。
フレームは各所にこのような4点の接点があって、そのサイドに爪があって各種パーツを固定することができます。グリップバッテリーともこの接点でフレームと繋がっています。
このグリップの中には、USB Type-Cケーブルが内蔵されていて、iPhone 15 Pro Maxと接続できます。このUSBは電源アウトプット用のようです。空冷ファンをつけていない場合は、このケーブルを接続する必要がありました。
グリップはBluetoothでつながりカメラアプリを操作できる
グリップの上にはRECボタン、ファンクションボタン、ダイヤルがあります。RECボタンの上のLEDで充電容量を確認することができます。
このグリップとiPhoneとはBluetoothで接続します。Blackmagic Cameraアプリを使ってみましたが、ファンクションボタンを押すと、フォーカス操作とズーム操作を切り替えて、ダイヤルでコントロールすることができます。つまり、TILTAとブラックマジックデザインは、Blackmagic Cameraアプリの開発で連携していたということなんでしょうね。
接続はBluetoothなので、特にiPhoneに装着しなくても、離れたところからフォーカス、ズーム、RECをコントロールできるということになります。RECできるものはたくさんあると思いますが、ズーム、フォーカスまで調整できるものはそんなになかった気がします。
このグリップは上のように横位置撮影の右手側だけでなく、縦位置撮影用に以下のように装着することもできます。このときにUSB Type-Cケーブルは外に出ますが、接続することができます。空冷ファンがあればケーブルなしで接続できます。
このグリップの上に、マイク端子とUSB Type-Cがあって、Type-Cのほうは、Samsung T7 Shieldを接続してみたのですが認識しませんでした。PD仕様のようなので、ここから電源をとるというための使い方なのかもしれませんし、今後仕様が変わっていくのかもしれません。
各種パーツをフレームの各所に装着する
セットのなかにはこのフレームの4点接点と爪に対応した、固定用のパーツが3種類入っていました。ひとつはアルカスイス規格のもの、ひとつがコールドシュー、もうひとつが1/4インチネジがついたもの。さらに左手側に装着するための木製グリップがついたNATOレール規格のフレームですね。
アルカスイス用のものは三脚に固定するのに最適だと思います。
フレームの上にコールドシューと1/4インチネジのパーツを装着しましたが、たぶん、これらのパーツは個別でも購入できるようになるんじゃないでしょうか?
右手のグリップと左手のハンドルで安定する
左手側のハンドルですが、こちらは特にいらないかなと思っていたのですが、使ってみたら想像以上によかったです。iPhoneの撮影はどうしても小さいのでブレてしまうこともあるのですが、右手のグリップと左手のハンドルを持って脇を閉めて構えると、かなり安定します。
実は、ちょうどテストでTILTAのハンドホイールワイヤレスコントロールシステムのNucleus Nono IIをお借りしていたので装着してみましたが、グリップを握ったままこのホイールを回転できます。
さらにこれもよく考えられていると思ったのですが、このグリップ部分は回転して位置を調整できます。実はiPhoneの超広角13mmレンズにすると、グリップを持つ左手が映り込んでしまったのですが、このグリップを回転させると映らないようにできました。
なんとフィルターシステムも計画されているらしい!
今回お借りしたセットにはフィルター類はついていませんでした。このシステムが入っていたボックスを見ると、このボックス自体も相当気合が入っている感じがしますが、ここにフィルターのラインナップが書かれているんです!
それを見ると、NDフィルターとして、0.3/0.6/0.9/1.2/1.8/2.4があり、PLフィルター、さらにブラックミストの1/2と1/4、ホワイトミストの1/2、1/4が用意されるようです。フィルタートレイはどういうものかわからないのですが、冒頭で紹介した動画にはそれらしいものがついていたので、この3レンズをカバーするもので、ワンタッチでフィルターを装着するシステムが用意されるのではないでしょうか?
私は67mmフィルター径の回転式の可変NDを使っているのですが、現状、この空冷ファンをつけた状態では装着できないので、専用のKhronosシステムのものを使うことになるでしょう。実は可変NDというのは便利なのですが、モニターなどを撮影するとモアレが出てしまうこともあって、本来であればいくつかのステップのNDフィルターを用意して、付け替えたほうがいいことはいいのです。このコンパクトなサイズで装着がワンタッチでできるのであれば、このシステムはとてもいいと思います。
さらにこの箱をよくよく見てみると、バイカラーのミニLEDライトも登場する予定ですね!
iPhoneでの撮影の良さは機材がシンプルに済むことなんです。でもいろいろつけていくことでシンプルにならなくなってしまう。現場でも組み立てるのに時間がかかってしまう。ところがKhronosはこれだけのシステムでありながら、まずベースのフレームさえ先につけておけば、あとはグリップと、空冷ファン、ハンドルをつけるだけで、すぐに使えるようになる。
だから、撮影に必要なパーツをきちんと収納できるキャリングバッグも一緒に出てくるといいですね。そうなるとさらに使い勝手が上がってお得だと思います。
できればバッテリーを取り外しできるようなるともっとよかったのですが、欲を言うとキリがないので。でも、これが出るというのは本当に革命だなと思っていて、会う人会う人、興味なさそうな人にまで(笑)見せびらかして説明すると、みなさん興味を示しますね。
TILTAの独特なデザインというのもSFチックで、ある意味おもちゃっぽいかなと思っていたのですけど、使っているとこのデザインがなじんでくるし、持っていて所有欲が満たされるデザインだと思いました。
それこそTILTA Khronosを使いたいがために、iPhone 15 Pro Maxを買う人が出てくるかもしれませんね。カメラがモノとして好きな人って、iPhoneでの撮影に興味を示さなかったりするのですが、このTILTA Khronosは、ソニーのFX3とかFX6を持っているような人でも興味を示すんですよね。むしろそういった現場に入れて違和感がないものだと思いました。
これはiPhone 15 Pro Max専用なのですが、今後の展開が気になりますよね。iPhone 16以降になって、どこまでパーツを流用できるのか。サイズが変わってしまうとアルミフレーム部分は新規で導入しなければならないのですが、逆に言うと、それ以外のパーツは大半が流用できるので、本当にエコシステムと言えるのかもしれません。
何を考えてこれを企画して作っていったのか、そして今後どういう展開を考えているのか、開発者に聞いてみたくなりました。