今号の特集でも絶景カラーグレーディングを教えてくれた井上さんはどんな三脚を使っているのか。安定性と可搬性を両立させたLeofotoのLS-285Cを紹介する。

レポート:井上卓郎
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北アルプスの麓、長野県松本市を拠点に、自然やそこに暮らす人を題材とした映像作品を作ってる映像作家。人や自然を演出することなく自然な形で表現することを心がけ、自然の中にゆっくり溶け込みながら撮影している。
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協力:レオフォトジャパン

太い三脚のほうが剛性はあるが、自分で背負って歩くには重さは軽いほうが良い。前ボケを使った奥行きのある表現やスライダーを使って動きを出した映像を撮るために、どれだけ高くなるかより低くなるかを重視している。

LS-285C+LH-36 レンジャーLSシリーズ  カーボン三脚・自由雲台セット
全伸長1,840mm
伸長1,520mm
最低高155mm
収納高540mm
段数5
耐荷重10kg
重量1,650g
付属品センターポール(DC-282C)、専用メンテナンス工具、専用キャリーバッグ、スパイク石突
希望小売価格80,520円(税抜)


自然風景撮影の必需品 

自然風景を撮影する上で、三脚は欠かせない機材。カメラの手ブレ補正やソフトウェアによるスタビライズ性能が向上しても、わずかなブレが映像の品質を損なうことがある。特にタイムラプスや星空撮影では、三脚なしでは安定した撮影が困難だ。また、構図の微調整においても三脚の使用が映像のクオリティに大きく影響する。

  一方で、三脚の携行は荷物の重量と嵩が増すという課題がある。

Leofoto LS-285Cの特徴

Leofotoは、プロフェッショナルの使用に耐える高品質な三脚を多数ラインナップしている。その中でもLS-285Cは、軽量でコンパクトなサイズと堅牢さを兼ね備えた「レンジャーシリーズ」のオールラウンドな三脚だ。レンジャーシリーズはパイプ型が22mm〜36mm、段数が4、5段のものがあり、このLS-285Cはちょうど中間くらいのモデルにあたる。

2年前に山岳写真家の友人に勧められてたのがきっかけで使い始めたLS-285Cは、それ以来欠かせない相棒となっている。レンジャーシリーズには同じ28mm径のLS-284Cという4段のモデルがあるが、伸長が1,446mmと4段より256mm高くなる5段を選んだ。質量は100g増えるが、伸長1,190mmでは手前の障害物を越えられない場合があるためだ。

Leofotoを選んだ理由のひとつが高い剛性だ。チューブには10層カーボンが使用されており、非常に堅牢で信頼感がある。他の三脚では最も細い部分の使用を避けていたが、LS-285Cは強風でない限り問題なく安定しているため、積極的に使用するようになった。

高い加工精度

LS-285Cは各部金属の加工精度が非常に高く、使用感が良好だ。スライダーを使用する私にとって、雲台取り付け座と脚角度調整機構部分の剛性と精度は特に重要である。これらの部分のたわみがあると、スライダーの動きが山なりになってしまうのでチューブの剛性と共に気にする点だが、LS-285Cは高い加工精度のおかげでたわみがとても少ない。

ボール雲台LH-36

LS-285Cと併せて使用しているボール雲台LH-36も加工精度が高く、スムーズな微調整が可能だ。大きなノブでしっかりと固定できる。機材の軽量化が必要な場合は、小型のLH-30を使用することもある。パンやチルトを多用する方にはビデオ雲台がおすすめだが、私はスライダーで動きを出し、構図の自由度を視するため自由雲台を好んで使用している。

クイックリンク

私はスライダーを多用しているので三脚との取り付けにクイックリンクを使うことで素早く撮影準備をできるようにしている。スライダーの接合部はアルミでできていることが多く、頻繁なつけ外しはネジ部を舐めてしまうこともあり、それを防ぐことにもつながる。他社製のワンタッチでつけ外しができるアダプターも試したが、大きく重量も重く、結局クイックリンクに辿り着いた。

クイックリンクは45mm〜70mmまでの種類から選ぶことができる。私は雲台取り付け座の面積に合わせて50mmのQS-50を付けているが、剛性も問題ない。自由雲台やビデオ雲台など撮影するものによってその日に使う雲台も変わってくるので、すべての雲台にQS-50対応プレートを付けている。

ボール雲台LH-36、クイックリンクQS-50と組み合わせてスライダーで使う

井上さんの映像のカメラワークはビデオヘッドによるパンやチルトではなく、主にスライダーで生み出している。ボール雲台のLH-36の上にカメラを載せ、LH-36と三脚LS-285Cの間にスライダーを挟み込む。スライダー使用であっても、LS-285Cは精度が高く、たわみが少ない。
クイックリンクを利用することで素早い脱着が可能。井上さんは50mmのQS-50を使用。自由雲台、ビデオ雲台など、使用するものにQS-50対応プレートをつけておく。

三脚選びの重要性

 三脚は長期間使用でき、撮影画質に大きな影響を与える。私にとっては、カメラのAFや手ブレ補正よりも重要だ。フレーミングの微調整や、四季を通じて同じ構図で季節の変化を追う撮影には三脚が不可欠。安定性が最も重要ですが、重すぎる三脚は疲労を招き、撮影への集中力とモチベーションを低下させる。

そのため、剛性と重量のバランスが非常に重要になってくる。最近は登山用具の軽量化を進めており、28mmのシリーズよりも細く小型な25mm、22mmシリーズも充分な剛性があると考えている。テント泊や素早い行動が求められる場合は、これらのシリーズを使い分けるのも良いだろう。

Leofoto LS-285Cは、軽量でコンパクトなサイズと堅牢さを備えたオールラウンドな三脚である。剛性と重量のバランスが優れており、様々な撮影シーンで活躍する。自然風景撮影を行うカメラマンにとって、信頼できるパートナーとなるだろう。

石突き部分

岩場、土、雪上とどこでも滑りにくく安定しやすいスパイク石突を使用している。平らなアスファルトや傷つけてはいけない床などではゴムの石突を使っている。

センターポールは別体で上に継ぎ足す

センターポールは別体式で、上に継ぎ足す仕組みになっている。私はあまり高く設定することがなく、軽量化を優先するため使用していない。センターポールがないおかげで開脚時にローアングル撮影が可能になる。

ザックの脇に付けても邪魔にならない

センターポールが別体なので収納時にスリムになりザックの脇に付けた際に邪魔にならない。狭い登山道や移動のバスの中で他の人とぶつかりにくくなる。





VIDEO SALON 2024年8月号より転載