映像制作者のためのプラットフォームVook主催で行われた「Next Filmmaker’s Summit」が1月27〜29日の3日間、長野県・小布施町で開催された。同イベントでは事前の審査をくぐり抜けた映像を生業とするビデオグラファーが約40名集まり、制作ノウハウや今抱える課題、横のつながりを広げることも目的に開催。イベントでは多数のトークセッションが開催されたが、ここでは2日目に開催された「チームで戦うFilmmakerのあり方」の模様をレポートする。
岸田(敬称略)
みなさん、一人でやっていて、次どうするのかっていう重要な課題かなって思うんですけど、あとで説明しますけど、それぞれ違うチームの組み方をされている3人なので、それぞれ狙いがあってそういうチームの組み方をしていると思うのですが、チームビルディングということで、最初にご紹介したいのが、鈴木さんのチームの作り方は固定メンバーでミニプロダクション化してやっていこうというもの。次石さんのチームの作り方はそれぞれのフリーランスが寄り集まってユニットスタイルでやるというイメージですかね?
次石
そうですね。
岸田
大石さんのチームの作り方は、それぞれの現場に合わせて必要なプロフェッショナルを呼んできて、チームを組み立てると招集スタイルのものになります。それぞれ3人ともウエディングのムービーに関係ある方々がたまたま並んでしまったんですけど、チームの作り方は全然違うということですね。1つ上に上がるためのチームの作り方ということで、どうしてチームを作るに至ったのか、そして今どういう形でやられているのかお話を伺えたらと思います。
では鈴木さんから。
鈴木さんの場合:極力固定のメンバーで運営するチーム作り
鈴木
なぜチームでやるのかという話なんですけど、第一に「金」です!
(会場笑)
みなさん、お金好きですよね? 嫌いな人いないですよね? 稼げなかったら、こんな仕事しないほうがいいじゃないですか、映像なんてめんどくさいんですから。僕は去年の夏に家を建てたんですけど、20年ローン組んじゃったんですよ。ということは、今38歳なんですけど、あと20年払わなければいけないわけですよね? そういう状況でどうやってお金を稼がなきゃならないのか考えた時にチームを組んで単価の高い仕事をしていこうと思ったんです。今、みなさん全員のことは把握してないんですけど、おそらく会社員や個人の方いろいろいると思うんですけど、1本あたりの単価が30~50万円平均のものが多いと思うんですよね。よくて100万円くらいかなと思ってます。正直な話、100万円くらいまでなら一人でも引っ張れます。だけど、そこから先に増やして行こうとした時に絶対できません。それはクオリティ面もそうだし、ハンドリングの面でもいろんなことができなくなってくる。
僕は元々大学ではお芝居の勉強をしてたんですけど、自主映画をやってる段階で「あ、映像って一人じゃ無理だな」と思ったんです。映画に出たいのに、1年生の時は舞台の演技の勉強やらされたから自分達で自主映画を作りました。その時にわからないながら自分でカメラ構えて、自分でお芝居つけて、全部自分でやるからめんどくさいんですよ、いちいち。その時「あ、出ながらは無理だな。撮るだけのほうが楽しいや」ってなってきた時に一人じゃ映像難しいなって思うようになってたんです。
その後に僕は何も知識がなかったんでCM関係のスタジオに入って大規模スタッフの現場も経験しました。最初の現場が便器のTVCMだったんです。その現場では、便器のライティングに18時間もかかりやがって! ワンカットですよ? 便器が回ってて、そこにライトを当てて、紗が動いて回転するから、写りだなんだ大変で。ライティングして朝4時までやったのに、「じゃあ7時集合です」って。そんななかで3日目には倒れました。便器一個に50人くらいスタッフが集まってるんですよ、大の大人が。『何をやってるんだ、この世界は!?」と思って。冷静になって見たんですよ。「こんなに人いるのか? 20人くらいで行けるんじゃねえか?」と思いました。
僕はこんなワンオブゼムは嫌だと。当時はクオリティは低いですけど、自分で脚本は書いて演出もして、撮影・編集もできたわけですから「なんでこんな分担作業やるんだ、めんどくさい」。「監督のくせになんでアングル切れないんだ」とか「カメラマンなのになんでライティングやらないんだ?」って極力できることはまとめていこうと思ったんですね。そのスタイルでいこうと思った時に、やっぱり自分でカメラを買って。当時は、まだ一眼の動画は出てきてないですから、ハンドヘルドのパナソニックDVX100BとかHVX200とかを買ってやってたんですよね。照明さんは今、機材を自分で持ってる人も多いんですけど、その頃は持ってる人が少なくて。だからお金がすごいかかった。そうすると、できる仕事が限られてくるんですよ。ダンスとか演劇、ウエディング記録映像やったりとか。
結局それをやってる時にいろんなことが見えてきたんです。撮影と編集と監督はいけると。これらをやっていく時に足りないのは何なのかと。僕はよく「TakeとMake」って言ってるんです。Takeはあるものを撮る。イベントだったり時間を止められないものをいかにかっこよく素敵に撮るか。で、編集でごまかすっていうね。だけど、Make。PVとか映画、ドラマもそうですけど。すべてをゼロから決めるわけじゃないですか? そんな時に撮影もやって演出もやって、脚本も書いて、照明やって録音もやってたら絶対無理なんですよ。録音なんて6人が一斉にしゃべる現場に入っちゃったらどうしたらいいんだって。
てことは、何が省略できるかなって考えたんです。撮影と編集までできる。僕、仕事始めてから14年間、営業したことないんですけど、営業とかプロダクション・マネージャーもできる。でも、録音と照明はたぶんできないなって。できないっていうのは技術的にじゃなくて、人手が間に合わないんですね。自分がカメラを構えて、アングルは切れる。演出をつけて、戻ってお芝居を見る。ライトをちょっと直したいって戻ってまた見るって無駄じゃないですか?
スタジオにいたからライトはわかるんですけど、それが前提で「こういうことしたいからこうしてくれ」とか指示を出す。それに対して録音部も見えない場所からマイクをつっこんでくれるとか。例えば、カメラでスライダーを動かしながらフォーカス送るなんて絶対難しいんです。フォーカスを見ちゃったら、今度はシナリオが見られなくなっちゃうわけですよ。なので、そういう時はカメラもオペレーターをつける。このスタイルなら4~5人いればどうにかなるなと。それが新しい人だともちろん新しい視点や要素が入ってくるメリットはあるんですけど、チーム作りで言うと僕、ドラクエⅣタイプなんですよ。馬車にライアンとかアリーナとかキャラクターがいて「あ、今はこいつ」だって感じで極力、あんまりチェンジしたくないんです。自分のわかってる前提で話をする。「僕に任せろ」タイプなんで。自分の好きなことを忠実にしてくれる人と一緒にやりたいんです。
岸田
よくわかります。
(会場笑)
鈴木
なので、極力そこでメンバーをフィックスをするという感じでやってます。それをやることによってやれる仕事が増えるし、現場の進行時間が早くなるんですよね。相手を待たせないからスムーズに進むんです。打ち合わせをしている間にわかってるスタッフが次のセットアップをしてくれる。だから自分は自分がお客さんが欲しいものに対して誠実にまっすぐにいける、そういうことです。
チームを作ることで見積が考えやすくなる
岸田
固定メンバーを雇ってその人達を養ってる感じなんですか?
鈴木
基本的に今おもしろいのが照明部や録音部が結構自分たちの機材持ってるんですよ、僕達みたいに。それで雇われで、もちろんグロスもOKだし機材出してもらってプラスαを支払うとかそういった形もあるので、プロジェクトごとです。プロジェクトごとに「こういうのあるからやってくれない、また?」って感じのスタイルで基本的にはやってます。
岸田
毎回、同じ人にプロジェクトごとにお願いをするということなんですか?
鈴木
はい。もちろん。基本的にはそうです。ただ、毎回どうしても予定が合わない人がいるから、予備というと失礼ですけど、ちゃんとわかっている人にお願いするという感じですね。
岸田
サッカーチームの監督みたいですね(笑) 補欠みたいな
鈴木
そんなことないですよ、僕サッカーできないですからね(笑)でも、そういう感じでやってます。それに対してちゃんとお金を払っていれば、またやってくれますから。そうすると、見積もれるんですよ。みなさん、よく「いくらでできますか?」って言われるでしょ?「なら、いくらでやりたいんですか?」って話じゃないですか。それを出すのに、チームでできるとまたやり方が変わってくる。
岸田
さっき100万超えると厳しいとおっしゃってたんですけど、言える範囲でいいんですけど、いくらぐらいの仕事を何人くらいでやられてるんですか?
鈴木
予算によって、使用するカメラを変える事はあります。
岸田
なるほど。100万円以下もやっぱりチームでやられるんですか?
鈴木
50万までは一人でやります。やる内容によりますけど、70万くらいからちょっときついから照明か録音のどっちかが入りますかね。でも、照明も録音も入ってくる場合だと「ロケの日数も換算して、100万くらいじゃないですか?」と提案して、値切られて85万とかなんで。じゃあロケ日数を減らしてどれくらいにするかと考えます。見積の考え方なんですよね。あくまで一例ですけど、見積の考え方は僕のなかではあわよくば7割。もらえるようにして、6割デッドライン。で、5割で「うーん、でも楽しいからいいか」。4割だと仕事を絶対に受けないというスタイルなんです。
岸田
なるほど
鈴木
50万で見積を出して、35万もらえたら、まぁいいじゃないですか? 撮影3日くらいやって。編集と修正だなんだ一週間くらいやって…まぁ、悪くないかな。25万だとちょっときついですよね? そういう考え方なんです。
岸田
むちゃくちゃわかりやすい。全員が共感性の高い話でしたね。
次石さんの場合:日頃は個別に仕事をするフリーランス同士が集まってチームを作る
岸田
では、次石さんは会社ではなく「Tomato Red Motion」というチームをやられてるということで、どういうメンバーが集まって、それぞれどういう役割なのかをお聞きしたいと思います。
次石
それぞれ個別に仕事をやっているメンバーが集って、Tomatoとして集まってやる案件があるということですね。
岸田
僕、Tomato Red Motionは会社だと思ってたんですけど、違うんですか?
次石
会社ではないです。あくまでも個人のフリーランスの集まりという感じです。
岸田
さっきの鈴木さんの話だと、照明とか録音の人とか役割分担があったと思うんですけど、次石さんのチームにはどういう役割があるんですか?
次石
基本的には、自分はカメラだけしかできないという人はいれてないです。例えば、ディレクションとカメラ、ディレクションと編集ができますとか。例えば5人でやらなければならないところを3人でやって、単価が低くても受けられるとか。そういうことですね。
岸田
メンバーの人は撮影も編集もディレクションも制作進行的なことも全員等しくできるということですか?
次石
まぁ、得意不得意はあるんですけど、とりあえずやるようにはしてます。取ってくる制作案件はTVCMとかをやるわけじゃないので、いわゆる企業さんのPVとか何役もやりながらできるような。さっきの鈴木さんみたいにディレクションと撮影で僕が入ってても、カメラをセッティングしながら演者さんの指示ってできないじゃないですか? そうするとプロダクション・マネージャーのスタッフさんが演者さんに「こういう感じでやりまーす」って言ってもらってる間に僕はカメラを準備してるみたいな。そういう感じで、音声やりながら照明もやってるみたいな状態です。
岸田
私の経験として、写真家の人とライターさんと映像と3人で組んで、仕事取ってやってたことがあるんです。でも、お金で揉めて最終的に解散したんですよね。よくある話じゃないですか? 誰が取ってきた仕事だとか、それをどういう配分で分けるとか難しいなっていうのがあるんですけど、次石さんのチームの場合、そのあたりはどういう風になってるんですか?
次石
あくまでもTomato Red Motionの営業さんがいるわけではないので、各それぞれが映像クリエイターという考え方なんですよ。なので、元々自分で仕事取ってきたメンバーを集めてるので、例えば僕が自分で取ってきた仕事に関しては自分がギャラを決めるんですよ。他の誰かが取ってきた仕事はその人がギャラを決めてOKなんです。
鈴木
例えば、僕が決めてきたら次石さんを2万円で雇うみたいな。
次石
そうですね。アウトソーシングするって感じです。イメージ的には。
大石
それって、他の人達はTomato以外の仕事も受けてるんですか?
次石
やってます。だから成り立つし、法人じゃない理由はそこにあるという。
大石
事務所とか借りてますよね?
次石
事務所はウエディングで接客のスペースとしてよく使うので僕が借りてます。
大石
個人で支払ってるんですか?
次石
そうです。
鈴木
金の匂いがしますね。
(会場笑)
大石
でも、大事な部分ですよね。必要なものだし。
次石
そうなんですよ。誰が出すのかみたいな話ってあるじゃないですか?
鈴木
使用料取ったりとかはしないんですか?
次石
それはないですね。
鈴木
じゃあ、嫌いだったら「お前出てけ」って言えるんだ?(笑)
次石
まあね(笑)。そこは一応節度を保ちながらやっていけたらと。
岸田
チームの出入りってあるんですか?
次石
基本的にはないです。一度入れたらそいつが辞めたいというまでやってるような状況ですね。今は、7人いるんですけど、案件によって呼ぶ、呼ばれないというのがあるんですよ。
岸田
それって不公平感が出ません?
次石
でも、そいつは自分で仕事をしているので別にOKなんです。
鈴木
機材はどうしてるんですか?
次石
機材は自分で。共用じゃなくてそれぞれ所有してます。
鈴木
ユニットの中に自分がジョインインするわけだ。
次石
そうそう。
岸田
例えば、7人の中で一人だけパナソニックでそいつだけ色合わないみたいなことってないんですか?
次石
という時は呼ばれないんです。
(会場笑)
それが嫌だったら買うしかないんです(笑)
大石
わかりやすいですね(笑)。潔いと言うか。
岸田
その中でチームである程度、結束を高めてやっていかなきゃならないじゃないですか? その辺はどういうふうにやられてるんですか?
次石
そもそも4人でスタートしたんですけど、その集まり方もmixiの掲示板で僕が募集したメンバーでやってるんですよ。なんで基本的にはめちゃくちゃ仲いいです。バーベキューとか家族ぐるみでやりますし、それこそ旅行も全然行けますし。その信頼関係の元、やれてるってのはもちろんあるので、誰もがピョコピョコ入って、人数増やして行けるもんでもないと思うんで、そのあたりは人数を増やして、仕事の件数を増やしていこうとは全く思ってないですね。
岸田
チームは男性も女性も両方いますよね? その辺で最低限のルールとかはあるんですか?
次石
えっ? それはなんですか?
(会場笑)
岸田
ちょっとややこしい関係になっちゃったとかよくあるじゃないですか?
大石
次石さんのFacebookにいつも写ってる方いますよね?
次石
ああ、はい。彼女はカメラができないので、今カメラを教えている子です。
大石
じゃあ、ギャラもちょっと割安になるんですか?
次石
あぁ、だいぶ安いですね。
大石さんの場合:CM制作の流れを受け継いだチーム作り
岸田
それでは次は大石さんのチームビルディングの考え方というのをちょっと教えていただけますでしょうか?
大石
僕は先程鈴木さんが言っていたトイレ1つに18時間ライティングをするというようなスタジオでまさに撮影していた部類で、メディアガーデンでAOIグループなので、同じグループにいて、そっちの畑出身なので、わりとCM的な流れを受け継いでいるというか意識がそうなっちゃうんですけど。
まず、制作会社から依頼が来る場合が結構多くて、監督をお願いされたら、「じゃあカメラマン誰にしますか?」という話になります。で、コマフォトのカメラマンファイルを見たりとか、知り合いの人に聞いたりとか。あとは今まで仕事したことのある人のことを思い出して、制作会社経由でお願いをしてもらったりしてますね。元々、自分も制作部だったので、そういうチーム作りをやりつつも、ビデオグラファーとしても活動しているので、自分で撮るものも多々あるんですけど、自分が演出に専念できるみたいなのはあって、作品のクオリティにも比例するかなと思います。
岸田
鈴木さん、次石さんと違って、固定メンバーではないということですよね?
大石
そうですね。予算やスケジュールもあるんですけど、基本コマフォトの『キャメラマンファイル』に載っている人とか、世の中の誰でもカメラマンとして呼ぶことはできますね。
鈴木
今度呼んでください、カメラマンとして。静かにしてますから。
(会場笑)
岸田
めっちゃ高そうですよね(笑)
鈴木
そんなことはない。
岸田
ということは、初めての方と仕事することも多いわけじゃないですか? 「この人だったら大丈夫」という基準はあるんでしょうか?
大石
やっぱりその僕もディレクターとして全うに活動できているのはまだここ数年なので、母数が少ないんですよね。「この人だったらこうなるな」っていうニュアンスが分かる人が少なくて、そういう時はやっぱり増やしたいわけですよ。そういうわけでいろんな制作部の人やプロデューサーに「どういう人がいいですかね?」とそうすると、「最近若い人でこういう人いるよ」とかちょっとリール(作品集)を見せてもらったりして、「あ、こういう系統やってるんなら合うかも」とか「いい人ですか?」とか聞いてみたり。
岸田
なるほど。今聞いて思ったんですけど、例えば大石さんと仕事をしたいと思った人が自分で売り込んでくることって言うのはあるんですか?
大石
基本ほとんどないですね。
鈴木・次石
(手を挙げて)よろしくおねがいします。
(会場笑)
大石
たぶんCMの人達は、売り込みって自分達でしてないんですか?
岸田
じゃあ、コマフォトのファイルに載るのは? 今日は玄光社の方も来てますけど。「キャメラマンファイル」って「コマーシャル・フォト(コマフォト)」という雑誌が出している付録ですよね?
大石
そうですね。年に何度か付録がつくんですね「ディレクターズファイル」とか「ムービーキャメラマンファイル」とか。あれは制作会社にはマストですね。
岸田
なるほど。我々ビデオグラファーがそういう仕事したいなと思って、チーム的な組み方をして、そういうところに売り込んだりもするんですけど、今みたいな話を聞くと、それが実際に仕事につながる可能性は低いなと思うんですけど、そういう意味では「コマフォト」に無理やりなんとか載せてもらえるようにお願いしたらいいんですかね?(笑)
大石
それはかなり効果はあると思いますね。ただ、昔と違って今はFacebookとかも出てきて、かなり重要なプロモーションツールなので、知り合いのカメラマンもかなりの頻度で仕事をアップしてたりして、「あ、こんなのやってるんだ」とか思うことは多々ありますんで、そういうのも活用できればいいなと思いますね。
鈴木
未だにコマーシャルってシステム変わってないんですよ。だからビデオグラファーというか、カメラマンとして優秀な人かどうか、ディレクターとして優秀な人かどうかだけなんです。たまにカメラマンがDPとして入ったりすることもありますけど、演出とカメラが一緒のことってほとんどないですよね? 安くできるのに、安く作りたくないんですよ。
大石
そう。そうなんですよね。
鈴木
結局、一眼やデジタルシネマカメラって高感度ですから、昔のフィルムの時みたいに大型のライトなんて正直なくてもできるようになっているのに、なのに入れますからね。見せライトみたいな感じで。
大石
まぁ、全部がそうじゃないですけど、そういう側面もありますね。
チームで戦うフィルムメーカーとしての今後の展望
岸田
具体的な話だったので、ひじょうにおもしろかったんですけど。それぞれ今後どういう仕事をしていくのかということをチームで戦うフィルムメーカーという観点で、今後の展望のようなものをお聞かせいただけますでしょうか? 大石さんからお願いします。
大石
今は半々くらいの割合でカメラマンをお願いできるビッグバジェットの仕事をしたり、ビデオグラファー的に僕が一人あるいは少人数でやっているWEB CM的な案件があるんですけど、前者のほうでいうと、やっぱりそっちを増やしていきたいという思いはあるんですが、撮るの大好きだし、エディターをつけるより、自分でやったほうが楽しいと思っています。ただ、僕は元々ディレクターや制作部出身でカメラの勉強をしてるわけではないので、まぁ独学ですよね。なので、プロの本当のカメラマンの方の技量や知識には絶対かなわないんですね。
僕が信頼しているカメラマンの方を呼ぶと照明を組まずに…というかロケで組めないんですけど、ちょっとこの光を切るだけで劇的によくなったりとか、ちょっとレフがあって、向きを変えてみるだけでも「こんな変わるんだ」みたいな。それをそもそもどこにするかみたいなちょっとしたことでかなりよくなるという発見があったりとか。あと、エディターの方にお願いした時も「いやぁ、ここは数フレこっち」みたいなやり取りが大変なんですけど、結果的には自分の作品を客観的に見られて、いい視点で作れたなという時もあって、総じてそういう人に巡り会えば、自分の作品が向上するというのは多々思ったんですね。なので、カメラマンの人もいろいろいて、同じインタビューのシチュエーションでも50mmのレンズで構える人もいれば35mm、24-70mm構える人もいてやっぱ全然違うんですね。そういう違いも含めて、いいカメラマン、いいスタッフさんの母数を増やして、ちょっと鈴木さんの考えに近くなると思うんですけど、自分の好きな人を増やして一緒に作って自分の作品も向上させていくという体制を作っていきたい。体制というか知り合いを増やしていきたいですね。
岸田
じゃあ、次石さん。
次石
そうですね。自分達になぜ仕事がきているのか忘れてはいけないのかなと思ってますね。単純に高いカメラを買ってCMを撮りたいというのは全くなくて、やっぱりウエディングをベースに僕はやってるので、そのやり方をベースに少しでも高いバジェットを取っていきたいんですけど、岸田さんもさっきおっしゃってくれたように「Tomatoっぽいね」と言われる、そこを伸ばしていくのがいいのかなと思っていて、自分たちがやりたい映像や楽しいと思えるものを作っていくのがいいのかなと思っています。
岸田
鈴木さん
鈴木
何の話でしたっけ? 最後のまとめですよね? みなさん、お金好きですか?
(会場笑)
もうそれしかないんですよ。単純にやっぱり僕は仕事が好きなんです。趣味がなくてですね。「仕えること」。誰かの役に立つこと。ウェディング(個人)も企業さんも一緒です 。そこに対して値段が違うというのは飲食店と一緒で「原価3倍で売る」と。ウエディングを15万でやってるんだから、企業さんは最低45万だなとか決めてやってます。そこに付随する自分が一日いくらでやってるとかどれくらいの価値があるかと。自分の価値を高めつつ、守銭奴になりきらず、きっちり生活はしなければいけないですから。ホントそれは自分で何年後にいくらほしいとか何年この仕事をやるのか、そういうのを考えてそのスタイルで20年食えるんだったら、ずっとそのままやったほうがいいです。
もっと上に行きたい、誰かとやりたい、自分のスタイルを追求したい。表現に行きたいとなるとまた変わってくると思うんですけど、表現をしようと思ったら、やっぱりお金が必要。だったら、お金を貯めるためにはどうしたらいいか? そういう話ですね。
それをずっとやるためには自分を鼓舞して、どういうことが潮流になるのか、何年後の自分に今、投資するのかということですよね。僕達が当時バブルなCMの世界だったんですけど、憧れた人達っていうのはすげえ金持っててかっこよかったんですよ。いい意味でも悪い意味でも。それが今なくなっちゃってて、 例えば僕達が登壇してて、「この人言ってることすげえかっこいいな」って人がすげえイイこと言ってるのに、裏でコンビニのおにぎり食べてたらがっかりしちゃうじゃないですか?そういうことも踏まえて、夢をもたせられないといけないですよね。今年なんか特にGH5が出て、また輩が増えますから。単価も下がりますよ、きっと。また5D MarkⅡと同じようなことがまた今年も起こります。その中でいかに自分で戦うか考えて、どうやって迎合するかということを大事にしたいと思います。
岸田
ありがとうございました。今日のサミット全体の中で、このセッションはどんな意味があったのかということをまとめたいんですけど、今後仕事をしていく上で、ビデオグラファーというのは一人でやらないとだめで一人でやっていく技術を上げなければというのが今まであったと思うんですけど、そういう感覚は一回リセットして、いい表現をするためにどういう体制でやるのがいいのか、それは一人でやるのがいいのか、チームでやればいいのかっていう。
もっというとTVCMなのか、これはビデオグラファースタイルの仕事なのかという垣根はなくなっていくと思うんで、そういうなかで3年後、5年後自分が映像の仕事をやっていくなかでどういう形でやっていくのがいいのか考えていくなかで、1つの参考にしていただけたらなと思います。
どうもありがとうございました。
●Next Filmmaker’s Summit公式サイト