テスター:SHINYA SATO

筆者は普段からロケを中心にポートレートムービーと一緒にスチルも同時に撮ることが多い。ひとりで動画と写真を行き来しながらの撮影はなにかと慌ただしく持ち出す機材も増えがちなため、レンズについてはできるだけ取り回しが良く高画質なものを選んで必要最小限に抑えるようにしている。

今回Nikon ZRをテストするにあたり数本のレンズをお借りした中で、小型軽量なZRの画質面でのポテンシャルを充分に活かしながらも使い勝手の良かった2本をご紹介したい。

今回ZRと一緒にテストしたレンズ
24-70mm f/2.8 SⅡと50mm f/1.2 S

NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S Ⅱ

ニコンZマウントレンズの中でも特に高品質な基準を満たすS-Lineシリーズの一つとしてリリースされているF2.8通し標準ズームの最新モデル。Ⅱ型にリニューアルされたこのレンズの最大の特長はフルサイズセンサー用としてこのクラスで初となるインナーズームの採用と675gという軽さだ。全長は142mmと標準ズームとしてはやや長めだが、カメラに装着すると重量バランスが良くリングなどの操作系にも余裕があるため、その軽さもあって撮影時のハンドリングが良好ですぐに気に入った。

インナーズームはジンバルを使用する際の重量バランス変化が抑えられることも大きなメリットだが、特にZRとの組み合わせでは小型のジンバルでもバランスを取ることが可能で非常にコンパクトなセットアップを実現できる。

性能面でもⅡ型では動画撮影への最適化が進み、AF動作の静粛性や滑らかなピント移動、フォーカスブリージングの少なさなど、ストレスを感じることなく撮影に集中させてくれるレンズに仕上がっている。

画質については作例で確認いただければと思うが、ピント面の解像感やボケの滑らかさなどにおいて高品質ズームレンズとして全く申し分のない水準を備えている。写真撮影も並行する移動しながらのワンオペのロケでは、機動性を重視して動画を標準ズームで撮り切ることも多いため、取り回しと信頼性に優れたこのレンズはZRと一緒に最初にまず導入したい一本となった。

Ⅱ型で全長142mm、フィルター系も77mmとなり標準ズームとしては細長いがとても軽い印象。インナーズーム化され各リングの幅も広くなり操作面も良好
手前にはレンズ側より機能のアサイン変更可能なファンクションボタンとコントロールリング、AF/MF切り替えとフォーカスリミッタースイッチが配置される
裏面にはコントロールリングのクリックOn/Offスイッチも備え動画撮影にも配慮
付属する花形のレンズフードには装着したままで可変NDやPLなどのレンズフィルターの回転操作を可能とする開閉式の窓を備える
ニコンダイレクトでも販売されているSmallRigの専用ゲージとともにZRに装着。拡大されたグリップで手持ちの安定性がなかり確保できるので、基本的にこのセットで写真も動画も撮影することが多かった
インナーズームと軽量性を活かし、ファインダーのないZRとの組み合わせではDJI RS4 Miniのような小型ジンバルへも搭載が可能だった


動画作例からのキャプチャ。R3D NEのRAWで撮影し、REDより配布されているクリエイティブLUTを適用している。ピント面のシャープさと柔らかさのバランス、そこから続く控えめだが自然なボケ感が特徴的。今回レンズフードやマットボックスは使用していないが逆光耐性も高く良好なコントラストが得られた
Nikon ZR(R3D NE 12-bit Log3G10 / 6048×3402 59.94p)

50mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB4200K
Lut : RED_LUSH
28mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB5200K
Lut : RED_ NARCISSUS
25mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB6500K
Lut : RED_ NARCISSUS
28mm 1/100sec F2.8 ISO800 WB4600K
Lut : RED_ NARCISSUS


スチルでの作例。ファインダーとメカシャッターを持たないZRだが、Z6Ⅲと同様の24.5MPのセンサーと画像処理エンジンEXPEED 7を搭載し、高いAF性能と高精細な大型モニタによりスチル撮影も快適に行える。
本レンズのスチル使用では写真らしいシャープでクリアな結果を得ることができた
Nikon ZR(RAW撮影から現像)  

24mm 1/100sec F2.8 ISO6400 WB2800K
70mm 1/125sec F2.8 ISO2800 WB3000K
29mm 1/100sec F2.8 ISO3200 WB2700K
24mm 1/125sec F2.8 ISO640 WB4300K
24mm 1/125sec F2.8 ISO1250 WB3800K


NIKKOR Z 50mm f/1.2 S

Zマウントの50mm単焦点レンズにはF1.8 S / F1.4 / F1.2 Sの3本がラインナップされているが、中でもこのNIKKOR Z 50mm f/1.2 SはフラッグシップとしてS-Lineとしても最高クラスの光学性能を備えた大口径単焦点レンズという位置付けとなっている。

F1.2という明るさと中心から隅々までの極めて高い解像力を両立し、さらに非常に美しく滑らかなボケの品質や収差の少なさなどを備えた描写性能には一切の妥協がなく、実際の撮影においても写真だけでなく動画でも最高の撮影体験を楽しめるレンズである。サイズや重量については決してコンパクトとは言えないためZRに装着するとややアンバランスとはなるが、結果にこだわってこのクラスのレンズを撮影に取り入れるならリグやグリップの追加で対応したい。

実際の画質については、高品質な24-70mm f/2.8 S Ⅱと比べても絞り開放の描写に単なるボケの大きさだけではない明確なアドバンテージがあり、50mmの画角で被写体に寄ったシーンを背景から際立たせることでより印象的に見せることができる。月並みな表現だがまさに何気ないシーンを作品にしてくれる魅力があり、24-70mmとの併用でもここぞというときに活用したい。

全長150mm、重量は1090gと単焦点レンズとしてはやや大柄だがその描写性能と機能性は間違いなくフラッグシップレンズにふさわしいものだ
24-70mmと同じレイアウトで揃えられたコントール部。ファンクションボタンとコントロールリング、AF/MF切り替えスイッチを配置
レンズ上面に備えられたパネルで絞り値、撮影距離などを確認することができ、表示する情報は隣のスイッチで切り替えることができる
フィルター系は82mm。15郡17枚のレンズ構成とナノクリスタルコート/アルネオコートにより徹底的に歪みや収差、フレア等を抑制し極めて高い描写品質を実現している
付属のフードは深めの花形でしっかりしたものだ

 動画作例。滑らかで美しくぼけた背景から浮き立つ被写体の繊細さが印象的ではっとさせられる。R3Dによる6KのRAW撮影では繊細なレンズ描写の差もあますところなく明確に記録してくれた
Nikon ZR(R3D NE / 6048×3402 59.94p)

50mm 1/100sec F1.4 ISO800 WB4600K
Lut : RED_LUSH
50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5200K
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5200K
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5200K
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F1.2 ISO800 WB5300K
Lut : RED_ FLUORESCE
50mm 1/100sec F2.0 ISO800 WB5300K
Lut : RED_ FLUORESCE


スチル作例。極めて高い描写性能と美しいボケの質感でポートレート撮影においてこのレンズの使用価値は非常に高く、ZRとの組合せでもスチルを真剣に撮りたくなる魅力に溢れている
Nikon ZR(RAW撮影から現像)  

50mm 1/125sec F1.2 ISO160 WB5000K
50mm 1/125sec F1.2 ISO110 WB5100K
50mm 1/125sec F5.6 ISO900 WB5300K
50mm 1/1250sec F1.2 ISO100 WB4500K
50mm 1/125sec F1.2 ISO360 WB4600K
50mm 1/125sec F1.2 ISO1100 WB3300K
50mm 1/125sec F1.2 ISO720 WB2700K
50mm 1/125sec F1.2 ISO720 WB3000K
50mm 1/125sec F1.2 ISO720 WB52700K
50mm 1/500sec F1.2 ISO100 WB4700K
50mm 1/400sec F1.2 ISO100 WB4200K

【制作協力】
 モデル: 香川りえ https://mi-ne.link/composite/rie555
      Mako     https://www.instagram.com/m_a__k_____o