Panasonic LUMIX DC-GH5&GH5S を活用した映像制作の現場レポート
ドキュメンタリーカメラマン辻智彦さん(ハイクロスシネマトグラフィ)のケース
イベント記録を
GH5SのV-Log Lで撮る
Report_編集部
光をコントロールできない現場で
真価を発揮する高感度とV-Log L
適材適所でショルダーカメラから、ハンドヘルド、一眼、GoProまで使い分けるのが現在の映像制作の現場。テレビドキュメンタリーから劇映画まで幅広く手がける辻智彦さんは長くビデオカメラを使ってきたこともあり、デジタル一眼には当初興味がなかった。2012年秋からシリア、ヨルダンの難民キャンプを取材することがあり、そこでGH3を使用した。その理由はルックではなく、スチルカメラだと思われるから取材しやすいということ。その後、富士山登山しながらの撮影にもGH3を活用。テレビのミニ番組でデジタル一眼を使うことが増えてきた。
辻さんの会社、ハイクロスシネマトグラフィは一眼のマウントはマイクロフォーサーズに統一している。その理由はマイクロフォーサーズであればENG用のB4マウントレンズが変換アダプターを介して使用できること。マウントアダプターは当時もっとも頑丈そうなポーランド製のものをチョイスした。取材ではとっさに対応できるENG用のレンズがやはり便利だ。一方でドキュメンタリーであってもインタビューシーンでは、背景のボケた映像を求められる。コシナのNOKTON 0.95シリーズが出たのが転機だった。マイクロフォーサーズであれば、取材用でもインタビュー、ドラマ撮影でもレンズを交換することで両方に対応できる。現在ではマイクロフォーサーズマウントのカメラとして、社員の個人所有も合わせて、GH3、GH4、GH5に加え、JVCのLS300が稼動している。
▲辻智彦さん(左)と満若勇咲さん。ハイクロスシネマトグラフィの編集室でお話を伺った。テレビや映画の撮影だけでなく、編集、制作など全般を請け負う。また今回の事例のように自主企画の制作も。
▲トークショーは満若さんが撮影。満若さんは個人でGH5を使用している。高感度特性が良くなっていることに驚いていた。レンズはLEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm/F2.8-4.0 ASPH./POWER O.I.S.。他のシーンも含め、ほぼこのレンズのみで撮りきることができた。ガンマイクはロードのVideoMic Pro。
今回は辻さん自身がキュレーションした展覧会のイベント記録用にGH5Sを使ってもらった。GH5Sが特に威力を発揮したのは高感度特性だ。展覧会もそれほど明るくない4Kプロジェクターからの投射作品であり、またトークショーもスライドを使ったものなので会場は暗くなり登壇者が見えるか見えないかくらい。ハンドヘルドカメラではそもそも写らないようなケースでも、GH5SのISO25600は、実用レベルの映像になる。
▲オープニングのトークイベントは、現代美術家の束芋さんと辻さんの対談。スライドを使ったもので、会場の電気が消えると真っ暗に近い状態になるが、ISO25600まで上げても明暗のバランスが取れ、実用的な映像が収録できた。
▲辻さん自身がキュレーションした近江八幡市にあるボーダレス・アートミュージアムNO-MAでの展覧会「アール・ブリュット 動く壁画」にて。作品を辻さんの目線で撮影し、それを4Kプロジェクターで投射している。その展覧会の様子を4K V-Log Lで撮影したが、色も含めて階調豊かに再現することができていた。映像が飛ばず、かつ暗い部分も潰れずに表現できている。
フォトスタイルは全編V-Log Lで。GH4でV-Log Lを試したことがあり、ドキュメンタリーであっても効果があった。むしろ舞台撮影やドキュメンタリーなど、撮影者側が光をコントロールできない撮影にこそV-Log Lは威力を発揮するという。Logは後処理が手間という先入観があるが、作業としてはメーカー提供のLUTを当てるだけで想定したトーンになる。GH5SではLogでのS/Nが向上しているのも、このワークフローをより現実的なものにしている。
▲V-Log L撮影。Adobe Premiere Pro CCのLumetriでLUTを適用するだけ。
⬇︎
▲Log撮影は後処理が面倒というイメージがあるが、フィルターをひとつ適用するだけ。「LUT一発」でいいこともあるし、Premiere であれば、Lumetriのパラメータでコントラストなどを調整することもある。上のような白飛び、黒つぶれしない柔らかいトーンはフォトスタイルのパラメータでは作りにくいので、このワークフローの意味がある。
【ワンポイント】
ステレオミニの音声入力でもライン入力が可能になったのは大きい。ミキサーからの入力もラインレベルのほうがノイズに強い。