昨年末にソニーから発売されたフルサイズミラーレス一眼カメラ α7 V。「ベーシックモデル」として、ソニーが位置付けるα7シリーズの後継種として発売された製品は、BIONZ XR2という新たな画像処理エンジンを搭載しているなど、発表と同時に多くの話題を集めている。今回は、シネマトグラファーとして活躍しながら、YouTubeでも精力的に発信を続けるうえでぃーさんに製品レビューをしていただいた。



レポート うえでぃー Uedy

シネマトグラファー、コンポーザー。大阪で活動する映像クリエイター。現在ミュージックビデオやドラマの撮影を行いながら、YouTubeでも精力的に発信。さまざまなメーカーとタイアップを行い総再生回数は約1000万回となっている。生粋のソニーラバーで、Sony α7CIIからCineAlta BURANOまでムービーは全てソニーカメラで撮影している。


うえでぃーさんのYouTubeチャンネルで、製品の設定の様子などを公開中!




ソニー α7  V 

ボディ:オープン価格(420,000円前後)

ズームレンズキット:(FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS II)
オープン価格(440,000円前後)

※2026年春以降発売予定




自在な調整ができる4軸マルチアングル液晶モニター



ホールド性と操作性が、向上したグリップ。シャッターボタンの位置や角度も、スムーズに操作できるよう最適化された。



SONY ILCE-7M5 / FE28-70mm F2 GM 45mm, 1/125s, ISO400, F2




ソニーから発表され、瞬く間に話題を呼んだカメラそれが昨年登場したα7Vだ。

長らく「フルサイズミラーレスの基準(ベーシック)」として君臨してきたα7シリーズ。

今回Mark Vへの進化は、単なるスペックアップではなく、「ベーシックモデル」という言葉の定義を根本から覆す、フラッグシップ機に迫る性能を引っ提げての登場となった。

一見すると、バリアングルチルトモニターに目が奪われがちだが、そんな見かけの進化だけではない。

予約開始前夜、偶然にもクリエイター仲間たちと熱海旅行に来ていたが前夜時点で予約準備を済ませ就寝する友人もいた。


前モデルと同様にメモリーカードスロットは、CFexpress Type AとSD UHS-IIのデュアルタイプ。




Section1. 核心となる進化: 今後数年を担う BIONZ XR2 プロセッサー

α7 Vの最大のトピックは、新開発の有効約3300万画素「部分積層型(Pa rtially Stacked)」CMOSセンサーの採用と次世代の画像処理エンジンBIONZ XR2だ。

これらの恩恵が本機では大いに発揮されている。

① 読み出し速度の高速化:ローリングシャッター歪みが低減。電子シャッターでの動体撮影が実用レベルになった。

画素数こそ3300万画素あるが、α7C IIなどで採用されている裏面照射CMOSではなく部分積層CMOSなので、簡単に言えば「ちょっとしたα1 II」のような体験が可能になっている。

② ブラックアウトフリー連写:電子シャッター使用時、最高約30コマ/秒の連写を実現。(※電子シャッター使用時)

画素数はα7 IVと同じ3300万画素に据え置かれているものの、中身は別物である。心臓が変わったのだ。高感度耐性とダイナミックレンジも改善されており、風景写真からスポーツ撮影まで、これ一台でこなせる守備範囲が圧倒的に広がった。

ダイナミックレンジは16ストップになり、より豊かな階調での写真撮影も実現できるようになった。

この注目すべき最大16ストップのダイナミックレンジは、メカニカルシャッター時に限定されるものの、今までよりも明暗差に臆することなく、シャッターを切れるのクリエイターの創作意欲をさらに増すアップグレードになったといえるだろう。



SONY ILCE-7M5 / FE28-70mm F2 GM 38mm, 1/8000s, ISO160, F2




Section2. オートフォーカス:AIプロセッシングユニットの成熟

「AIプロセッシングユニット」が、α7 Vにも標準搭載された。その認識精度はさらにチューニングが進んでいる。

【「姿勢」を読むAF】

人物撮影において、瞳の認識だけでなく「骨格情報」から姿勢を推論することにより後ろを向いた瞬間や、障害物で顔が隠れた瞬間でも、AF枠が被写体に粘り強く食いつき続ける。

実際に撮影チームのひとりが「試しに使ってみて良いですか?」と言うので渡してみると、適当にシャッターを切った背を向けている写真でも的確にフォーカスを合わせている。

【被写体認識の多様化】

• 人物・動物・鳥:瞳認識の精度向上。

• 昆虫・車・列車・飛行機:新たに追加・強化。

特に野鳥撮影やモータースポーツ撮影において、これまでの「ベーシック機」では収まりが悪かったシーンでも、α7 Vならガチピンを量産できるようになっている。AFシステム自体は759点の像面位相差AFで、画面のほぼ全域(約94%)をカバーしている。

ちょっとこの記事を書きながら、欲しくなっている気がする。



Section3. 動画性能:待望の 「4K/60p クロップなし」

動画クリエイターにとって、α7 IVの最大の不満点は4K/60p撮影時に1.5倍クロップされること。それが解消されたことは、シネマティックな映像表現をする人たちにとっては歓喜だろう。

• 4K/60p (ノンクロップ):7Kオーバーサンプリングによる高精細な4K映像を、画角を変えずに60pで記録可能。

• 4K/120p:クロップあり(Super 35 mm)。ハイフレームレート撮影に対応。スローモーション表現の幅が広がった。

• 手ブレ補正:「ダイナミックアクティブモード」を搭載。歩き撮りでもジンバル不要と言えるほど強力に補正する。

α7IVではファームウェアアップデートでもこのダイナミックアクティブモードは実装されなかった。しかし今回からついにスタンダード機でも使用可能に。

そして実は、この機種の最大の魅力は省エネ化だ。

バッテリーの減りがとにかく目に見えて進化した。長年のソニーユーザーなら「ん? まだこんなにバッテリーあるの?」と疑い深くなるほどだ。

SNSでも話題だが「4K/60Pで2時間Rec回しても止まらなかった」など数多くの賞賛の声が届いている。これは前述したBIONZ XR2の存在が大きく関係している。まさにこの心臓部分といっても過言ではない核が、α7 Vのスタミナをタフにしているのだ。



Section4. ボディ・操作性:ユーザーの声に答えた改良

スペック表には現れにくいが、実際に手に取って最も感動するのが「使い勝手の向上」。

【4軸マルチアングル液晶モニター】

α7RVで好評だった「チルト」+「バリアングル」の両立機構がついに採用。

• 光軸をずらさずにサッとローアングル・ハイアングル撮影(チルト)。

• 自撮りや縦位置ローアングル撮影(バリアングル)。

このふたつのメリットを融合させたモニターは、スチル派・動画派の不毛な論争に終止符を打つ最高のソリューション。ケーブル干渉も最小限に抑えられている。





【グリップ】

グリップは少し深くなり、小指余りが解消されやすくなった。α7C IIを愛用している自分からしたら、これが本当に羨ましい。やっぱり少し欲しくなってきた。

【ファインダー(EVF)】

約368万ドットのQuad-VGA OLEDを採用。α7 IVとドット数は同等クラスなものの光学系の設計が見直され、周辺まで歪みが少なくクリアに見える。リフレッシュレートも120fps対応で、動く被写体も滑らかに追従することができる。



Section5. 画質と実際の写り

動画は自身が愛してやまないレンズであるFE50mm F1.2  GMを使用したが、ダイナミックアクティブと組み合わせると、撮影時から編集までとても心地よかった。

前述のグリップの握りやすさが、気持ちの良い手持ち感をしっかりとサポートしてくれている気がした。

4:2:2 10bitでここまで美しく、ビットレートを選択して自身のストレージとも向き合いながら撮影できるソニー機はやはり強いと感じている。

少し脱線するかもしれないが、ソニーは、こういったスタンダード機からCine Alta (BURANO、VENICE 2など)の映画業界を支える超ハイエンド機までを一貫して揃えてくれているのは、クリエイターとして憧れを持ち続けられるのでモチベーションにも繋がる。

実際自分も初代α7Cからミラーレスカメラを始めて、今ではBURANOをメイン機にしながらさまざまな作品作りに没頭している。

また、たくさんの新しい才能を持ったクリエイターたちが、この新しいスタンダード機からどんどんと大きく羽ばたいて行ってくれることを心から願っている(なんか格好つけた感じなってしまった、ごめんなさい)。



動画から切り出した一コマ。S-Log 3 / S-Gamut3.Cineはそもそも業界でもかなり評価が高いLogだが、今回もそれはもちろん健在である。




Overall Evaluation 総評

α7 Vは、迷ったらこれを買っておけば、今後数年は困らないと言い切れるカメラだろう。写真も動画もハイレベルにこなしたい、でも機材はできるだけコンパクトにまとめたい。そんな現代のクリエイターの欲張りを、ソニーは「技術の力(部分積層×AI)」で見事に解決してくれた。

これはもはやベーシックモデルではなく「ハイスタンダード」という新しいカテゴリの誕生ではなかろうか。