【5月号特集】テロップ、ナレーション、セリフなしで伝える
「映像ストーリーテリングの手法」の前書きとサンプル動画
〜フィルムメイカー酒井洋一さんの作例で学ぶ〜
音楽に合わせたおしゃれでかっこいいムービーだけど、途中でなぜか飽きてしまう映像を作っていませんか? あの人はセンスがいいから、で諦めていませんか? 映像でストーリーを伝えるには手法があるのです。ウェディングのフィルムメイカー酒井洋一さんの作品を例に構造分析をしてみましょう。
特集で使用するサンプル映像
【作例SAMPLE 1】主人公の感情の動きをストーリーにする
「やまいは足元からオシャレは気から」
新製品のカメラをテストでオーダーメイドの婦人靴店のプロモーションムービー風に
これはパナソニックEVA1のカメラテストとして制作したもので、すでにご覧になっている人も多いでしょう。ショートムービー仕立てになっていて、WEBサイトに掲載するオーダーメイドの婦人靴店のプロモーションムービーと言ってもいいかもしれません。こういったテイストの作品はこれからどんどん増えていくのではないでしょうか?
【作例SAMPLE 2】キーワードをピックアップしてストーリーの軸を作る
披露宴で上映するロシア在住のカップルのムービー
ロシアに赴任してすでに現地で生活している新郎新婦。二人の日本での披露宴のオープニングで流す映像として制作しました。実際に酒井さんが一人でロシアに赴き、3泊4日でモスクワとサンクトペデルブルクで撮影しました。二人と打ち合わせをしながら、いくつかのキーワードを元に軸を作り、そのミニストーリーがそれぞれ進行していくというスタイルになっています。
【作例SAMPLE 3】撮影した素材を元に編集でストーリを作る
長野善光寺での挙式&披露宴
イベント記録をどう感動的に仕上げるか、というのはアマチュアも含めて多くの人が悩むところではないでしょうか? 事前に予測できないことも起こるので、撮影した素材で構成するしかないケースも多いからです。あるカップルの挙式と披露宴を撮影した素材から何をピックアップし、ストーリーを作っていくのか、この作品はいい参考例になると思います。
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最近、増えてきたのは、映画ともCMとも違う、ましてやテレビのバラエティ番組とはまったく違う、WEB時代の新しいスタイルのムービーです。映像には、映画、ドキュメンタリー、ライブ記録、ミュージックビデオ、解説ビデオ、CMなど目的が異なる様々なジャンルがあります。それらは尺も違えば、表現スタイルも異なります。
ドラマのようなフィクションではなく、あくまで基本的には記録映像。しかし単なる記録ではなく、それを感動的なストーリーを感じられるように仕上げていきます。音楽は1曲まるごと使われることが多く、その他の音声は、インタビューや現場音がポイントで入ります。テロップはほとんどありません。
しかし、視聴者はそのムービーから大きな感動を得ることがあります。映像と音声で感情を揺さぶろうという映像制作の王道の醍醐味と言えるかもしれません。
実はその背景にはデジタル一眼ムービー機能の進化がありました。映画でなくても、個人のオペレートで映画的な表現力を実現できるようになってしまったのですから。ただ、被写界深度の浅いスタイリッシュで美しい映像、スライダーやジンバルを利用した映像を次から次へと繰り出したとしても、人を感動させることはできません。人は映像作品に「美しい映像」(視覚的な快楽)を求めているのではなく、「心揺さぶられるストーリー」を求めているからです。
この特集では、ウェディングのシネマトグラファー、酒井洋一さんの作品を例にその手法を分析してみます。酒井さんはこう言います。
「それ自体が映画みたいだね、というとてもドラマチックなストーリーに出くわすこともありますが、そのようなお話はほんの一握りだと思います。では、TVや映画の中で見る世界でしかドラマチックなことはないのかといえばそうでもありません。おばあさんが可愛いお孫さんに飴をあげる、こんな些細な出来事、これも立派なストーリーです。もちろんこれを題材に映画になるかといえば少し難しいかもしれません。しかし、そんなささやかでも良いから様々な形のカメラマン自身を含める、人の心が動いている瞬間を感じられるシーン、そういった小さなストーリーを『ミニストーリー』と呼ぶことにします」
役者も資金もない個人ではいきなり大作映画はできません。でも、一般の人たちを撮る行為であっても、撮影と編集でミニストーリーを積み上げることによって視聴者の興味を惹きつけ、その積み重ねに成功すると、最後まで見終わって感動(余韻)を与えることができるのです。
こういった手法は映画やテレビ番組の一般的な作り方ではなく、「ミュージックビデオ」や「ショートムービー」「シネマティックウェディング」の文化が生まれ、音楽に合わせて短い映像を見せていくうちに定着していったものと言えるのかもしれません。個人の映像クリエイターが習得すべきテクニックとは、そういった映像ストーリーテリングの手法なのだと思います。
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解説は、ビデオサロン5月号をお読みください。