The HD Digital Workflow 2009 レポート


8月7日、キヤノンの業務用HDカメラとアップル社の編集コーデック「ProRes422」での収録が可能なAJA社の映像記録デバイス「Ki Pro」を使用した最新のワークフローを紹介するセミナー「The HD Digita Workflow 2009」が開催された。場所は新宿駅西口のSPACE107。


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左から司会の石川幸宏さん、貫井勇志さん、神谷信人さん、高野光太郎さん。
今回のセミナーは2部構成で、第1部は映像作品「幻海」(げんかい)のテスト撮影版をもとに話が進められた。パネラーはこの作品の監督である映像作家の貫井勇志さん、照明の神谷信人さん、映像ディレクターの高野光太郎さんの3人。司会はDVJ BUZZ TV編成局長の石川幸宏さんで、このトークの模様はストリーミング配信された。
会場でKi Proを使ったワークフローを実演
「幻海」のテスト映像は南伊豆のロケと、スタジオ撮影した人物素材との合成で構成されている。ロケ撮影はスタッフ6人と少人数で行われた。現場は足場の悪い場所であり、機材は最小限にとどめ、軽トラック1台で移動しながらの撮影。電源がないため、照明は一切使わずレフ板のみを使用した。カメラも小型で機動性のよいキヤノンのHDカメラXH G1Sを使用、レンズは今回は標準セットだけを試しているという。
合成や編集の作業はAdobe AfterEffectsで行っている。ロケ撮影したHDV映像は、まずFireWire経由でMacBook Proに取り込み、Final Cut ProからXMLデータを1度Adobe Premierに読み込み、ファイルインポートでAfterEffectsに取り込んでいる。このワークフローのメリットは、中間ファイルを一切作らずに済むこと。
一方、人物の素材はスタジオにてキヤノンのHDカメラで撮影し、FireWire800で接続したKi Proに記録。Ki Proのストレージモジュール(今回はHDD)をMacにつなぎ、FCPで作業を行う。従来はポストプロダクションに持ち込んで行っていた作業が現場で行えるようになる。会場はあたかもテレビ局のスタジオのようなステージ構成にあっていたが、それはここでその実演をするためだった。テスト映像にも出演している役者が登場、殺陣のシーンをKi Proを接続したキヤノンHDカメラで撮影し、Macに取り込む作業を行なって見せた。FCPを立ち上げる前に今ProRes422で収録したQuickTime映像が再生できており、その便利さをまざまざと見せつけた。
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トークに続いて、スタジオを使ってのキヤノンHDカメラXL H1S+Ki Proでの収録の実演が行われた。
腰が重い放送業界をデジタルでどう変えられるか
第2部は最新のデジタル撮影&編集ワークフローに関するパネルディスカッション。先述の3人に、番組プロデューサーの佐々木茂晴さん、ディレクターの熊藪智さんが加わり、放送業界の実情も踏まえつつの話となった。
小型HDカメラの活用は、機材やスタジオの小型化という点でメリットがあり、さらに暗いところでの撮影に強いことから、照明のローコスト化も図れるうえ、電源が取れないロケ撮影も容易になる。一方、カメラごとにコーデックが異なる問題は、Ki Proの登場でProRes422への統一化が図れる。また、HDカメラで非圧縮で撮影できるといっても、これまではデータが重くなりすぎて使えなかったが、ProRes422は非圧縮に近い画質が得られることから、「ようやく追いついた」という話が出た。
ただし、放送業界ではHDはまだまだの状態。一時はHDVやHDCAMでの収録が増えたが、予算削減でSDに逆戻りする現象が起きている(手持の機材やテープがあるため安上がり)。また、大勢のスタッフが関わるゆえの「教育問題」もある。現場の知識レベルは「SDのノンリニア編集の勉強がやっと終わった状態」で、一部の人だけが最新のノウハウを持っていてもだめで、全体の底上げが必要だ。デジタル化で美しい映像が得られることは同時に「アラが見える」ことでもあり、悩ましい問題とも。
とはいえ、デジタル撮影により大幅なコストと時間が削減できたという話も出たし、まだ足並みが揃わないとはいえポスプロや放送局でFCP環境は揃いつつあり、ワークフローのデジタル化は間違いなく進むだろう。これによって効率化だけでなく、「これまでと何か違う表現ができるのではないか」を考えるチャンスは増える、との話で締めくくられた。
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パネルディスカッションには佐々木茂晴さん(右端)と熊藪智さん(右から二番目)も加わった。