スマートフォン、特にiPhoneによる撮影がひとつの表現手段として確立されつつある昨今。例えばiPhone 17 Proシリーズは、Apple LogやProRes RAWによる収録により、映像制作者にとってひとつの選択肢になり始めています。ただ、iPhoneだけで撮影をするのは難しいというのも現実。その中で重要になってくるのが、iPhoneを「カメラとして成立させる」ためのリグの完成度です。本記事では、TILTAのスマートフォン用シネマリグ、TILTA Khronosシリーズより、iPhone 17 Pro対応モデルを、実制作の視点からレビューします。

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デザイン:iPhoneを“カメラ”として成立させる造形

TILTA Khronosを手にしてまず感じるのは、デザインと質感の完成度の高さです。アルミのフレームは、スマートフォン用アクセサリーというより、シネマカメラ用ケージに近い印象を受けます。

そして注目すべきは、iPhone本体のデザインを過度に覆わない点です。多くのiPhone用リグが「包み込む」方向に行き、iPhoneのコンパクトさをあまり活かさない中で、KhronosはiPhoneのプロダクトデザインを尊重しつつ、必要最小限の構造で高い剛性を確保しています。スマートフォンを“ガジェット”ではなく、“撮影機材”として扱うための思想が、造形から明確に伝わってきます。

iPhone 16以降から搭載されたカメラコントロールボタンも、ケース越しに操作が可能です。多くのiPhoneケースにある切り掛けとは違い、ボタンのセンサーに対応したパーツで、開発に苦労をしたとか。

例えば「Khronos マグネット式 多機能バックプレート for iPhone 17 Pro/Pro Max」は、単なるMagSafeのプレートかと思いきや、ダンボールカッター、マグネット式フィンガーリング、キックスタンドと、3つの機能が搭載された便利なツールとなっています。

ケースに数箇所存在する、アクセサリー装着用ポートの真ん中にある、この4つのドットが電気を通すようになっており、後述するPDハンドルからクーリングファンへの送電を可能にします。このような様々な機能を搭載しながら、ケース自体はブラック、スペースグレイ、オレンジ、ベージュと日常使いもできるように配慮されています。


拡張性:現場使用を前提としたモジュール設計

TILTA Khronosの大きな魅力のひとつが、アクセサリー装着時の完成度。サイドハンドル、NDフィルター、冷却機能など、TILTAがシネマカメラ用アクセサリーで培ってきたノウハウが、そのまま落とし込まれています。

そもそも、TILTA Khronosが優れているのは、iPhoneの充電と冷却を同時に行うことができる点。初代であるiPhone 15 Proシリーズ用のTILTA Khronosが登場してほぼ2年が経ちますが、いまだにそのような機能を持ったアイテムはほとんど登場していません。

TILTA Khronosのシリーズからは様々なアクセサリーが登場していますが、ここでは代表的なものを紹介したいと思います。

Khronos Focus PD Handle for iPhone

グリップ自体がバッテリーでありながら、BluetoothでBlackmagic Camera、もしくは純正カメラアプリのRECとズーム&フォーカスが可能な優れものです。


Khronos Quick Release USB-C Hub

iPhoneに外部電源やSSDなどのデバイスの同時接続を可能にするハブです。


Khronos Cooling System V2

PDハンドルからの電気を、前述のドットを通して受け入れ、iPhoneの冷却とMagSafe充電を可能にするクーリングファンです。冷却と充電はそれぞれ2段階で調整が可能。初代のモデルでは電圧の関係で不可能だった、USB-Cハブを介してのアクセサリーの接続とクーリングファンの同時使用が可能になりました。


Khronos 58mm フィルタートレイ for iPhone 17 Pro/Pro Max

TILTA Khronosでは、今まで専用の固定NDフィルターの装着のみが可能だったのですが、今回のiPhone 17 Pro対応モデルから、マグネット式の可変NDを装着できるアダプターが登場しました。これにより、ND2~32までの間で調整が可能です。

他にもNATOレールに対応したハンドル、LEDライトなど、様々なアクセサリーが存在します。


信頼性:Apple Log撮影時代のひとつの答え

iPhone 17 Proシリーズでは、Log撮影を前提とした運用が可能です。iPhoneをシネマカメラのように使うとなると、その際に重要となるのが、NDフィルター運用、そして放熱への配慮です。Khronosは、これらの要素をバランス良くカバーしています。

とくに屋外撮影や長回しの現場では、リグの剛性と信頼性が効いてきます。スマートフォン撮影にありがちな不安定さを感じることなく、シネマカメラと同じ感覚で撮影に集中できる点は、実用面で非常に大きなメリットです。例えば日本での真夏の撮影は灼熱になることが多いので、シネマカメラ以上に優れた放熱機能を持ったTILTA Khronosでの撮影はひとつの選択肢になると思います。

最近発表されたBlackmagic Camera ProDockと、SamsungポータブルSSD T9、そしてVマウントバッテリーのCore SWXと同社のクイックリリースプレートを装着することも可能です。この組み合わせにより、タイムコード入力やGenlock入力、ProRes RAW収録が同時に可能になります。

操作性:物理操作がもたらす撮影の安定感

実際の撮影で強く感じたのは、グリップや物理操作系の完成度です。タッチ操作が中心となるスマートフォン撮影では、どうしても「撮っている感覚」が希薄になりがちですが、Khronosではグリップやシャッターボタンを通じて、カメラを構えて操作する感覚が戻ってきます。これは単なる使いやすさにとどまらず、撮影時の細かなニュアンスに直結します。

ワイヤレスレンズコントロールシステムなども自社で作っているTILTAだからこその信頼性です。

総評:iPhoneで撮る理由を明確にするリグ

TILTA Khronosは、単なるiPhone用アクセサリーではありません。iPhoneで撮影することを、積極的に選択したくなるリグです。

・スマートフォンでも映画的な映像表現を追求したい方
・ワンオペでも操作感とクオリティを両立させたい方
・iPhoneを本気の撮影機材として運用したい方

こうした映像制作者にとって、Khronosは現時点での有力な選択肢と言えるでしょう。

スマートフォン撮影の進化は、センサーやアプリだけでなく、このようなハードウェアの思想によっても支えられています。その最前線に立つ存在が、TILTA Khronosです。

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