レポート●Matthew Carmody(カモディ マシュー)

(株)マット・プロダクション Matthew Carmody Matt(e) Production, Inc https://www.matte.jp

URSA Mini Pro 12Kの発表を聞いた時にすぐ手に入れて現行のURSA MINI PRO 4.6Kとの比較や8Kハイスピードの検証をしたいと思いました。幸いにそのチャンスが回ってきた10月末~11月初旬に格好の被写体=プロバレーボールの撮影が入っていて、さっそく実際の現場に導入して検討してみました。

結論から先に言うと、購入に踏み切りました。

 

試合では主に8K/120pと12K/60p(どちらもISO 1600 / シャッター180°/ BRAW 8:1)を使った撮影を行なっている。作例は以下。

試合前のジンバル映像はURSA Mini Pro 4.6K (Zeiss Contax 50mm F2 / Sigma Cine 135mm T2.0)で、今までの映像と合わせるためにあえてこの作品ではGen4カラーで仕上げた。現行4.6Kと新型12Kの比較として4Kで見た場合は、特にSIGMAのレンズで統一すればUrsa Mini Pro 4.6Kはまったく色褪せないと感じる。

 

以下は試合で主に8K/96pと12K60p(どちらもISO 1600 / シャッター180°/ BRAW 12:1)を使った撮影。

最初の撮影と違って、BRAW 12:1に圧縮率を上げてみたところ、データが軽い割に映像が思ったより綺麗に撮れたのでバレーボールはこれからこの設定で撮影することに決定。データ量を抑えるため解像感を犠牲にする必要はない。BRAWに感謝。

 

見ての通り、URSA Mini Pro 12Kのボディは同じパーツを流用しながら見えないセンサー部や処理ユニットをアップグレードして「12K」の文字以外、URSA Mini Pro 4.6Kと瓜二つ。ちなみに一番手前は初代URSA Mini 4.6Kでモニターが大きいため現行モデルより使いやすい場合があってまだまだ現場で使うことが多い。このモニターに戻してほしい・・・。

▲SIGMA Cine 50-100mm T2を使ったMovi Pro限界仕様。

一つ意外だったのが、Movi Proの内蔵12V D-TAPではURSA Mini Pro 12Kは起動しないこと。パワー食い虫のREDでも起動するのに。よって外部のV-MOUNTバッテリーよりボディへ給電した。

 

クロップせずにセンサーを活用するURSA Mini Pro 12Kのユニークな撮影モード

今回発表されたURSA Mini Pro 12Kの一番すごいところは実は12Kではない。センサーをクロップせずに色んな解像感とフレームレートを選択できる新しいセンサー技術である。

今までのシネマカメラでは、フレームレートをあげるために基本的にセンサーをクロップして撮影する必要があった。スポーツや野生動物のような被写体では時に助かるこの機能は画質の劣化やレンズの選択幅などという悩みを伴う問題もある。

それに対してURSA Mini Pro 12Kは、例えばフルセンサーで12K/60p、8K/120p、6K/120p、4K/120pという塩梅で今までのカメラと違ってクロップせずにプロジェクトに適切な解像度・圧縮率を自由に選択できる。大変助かる機能で待ち望んだ方も多いことだろう。これだけで購入する価値はある。

▲8K/96p / ISO 1600 / シャッター180°/ BRAW 12:1 / SIGMA CINE 50-100mm T2 @T2.8

▲8K/96p / ISO 1600 / シャッター180°/ BRAW 12:1 / CANON EF70-200mm F2.8L IS II USM @F2.8

▲同じフレームでノイズがわかるように2.5倍クロップしたもの。

今回はシャドウ部分をしめてノイズを隠すことでノイズ除去作業を省略。圧縮率を12:1にしても室内のハイスピードでも満足できる映像が得られることを確認。

120pで足りない場合はs16というクロップモードで4K240pも選択可能。4Kと言っても8K120pを見てから個人的に少し解像感は欠けると感じるものの、シャープなレンズと十分な照明で撮影するとそれなりに綺麗に撮れる印象。

▲4K/240p / ISO 1600 / シャッター180°/ BRAW 8:1 / SIGMA CINE 50-100mm T2 @T2

4K240pモードではセンサーはS16にクロップされるためノイズが増えて解像感も(8K120pに比べて)落ちるからBRAWを5:1もしくは3:1にして画像劣化を少し抑えることをお勧め。今回の照明がハイスピードにやさしいとはとても言えない体育館LEDということを考えれば、大変良好な結果。

 

 

記録メディアについて

今までのURSA Mini Proファミリー同様、URSA Mini Pro 12KはCFAST2.0とSDカードを使う仕様となっている。4TB分のCFAST2.0を持っている者として大変嬉しい限り。

それに加え、外付けのSSDを接続しての撮影も可能だが、現時点で本体で再生できないようだ。安定性・安全性を考えてSSDを使った収録はBlackmagic URSA Mini Recorderを導入する予定。

注目すべき収録機能の一つは2枚のCFAST2.0を使った同時書き込み。

2枚のCFAST2.0を使った同時書き込みをONにした場合、片方のカードに拡張子「braw」、もう片方のカードに拡張子「braw2」のファイルが収録される。同じフォルダーにバックアップしてDaVinciにインポートしたら一つのファイルとして自動的に認識されて通常通り編集できる。8K/60p以上で撮る時はいつもこのモードを活用。

▲USB-C 3.1 Gen 2を使った外付けSSD仕様。撮った映像は本体で再生ができなかったため、確認が取れなくて少し不安。試合ではすぐにCFAST仕様に戻して撮影した。

 

果たして12Kは編集できるのか?

はい。できます。SSDを使ってタイムラインの解像度を下げれば8K/120pや12K/60pは数年前のパソコンでもストレスなく編集できた。書き出しの際はタイムラインを4Kや8Kに戻せば問題ない。書き出し自体はさすがに時間かかる場合がある。

▲タイムラインをFULLHDにして8Kの映像を再生した際のリソース関係。16GBのVRAMを積んだRADEON VIIが複数のグレーディングノードでも余裕なので古いCPUでもサクサク動いてくれる。

▲タイムラインをUHDにして8Kの映像を再生した際のリソース関係。少しひっかかる箇所があってサクサクではない。そろそろシステム全体をアップグレードするタイミングかもしれない。

 

最後に一言

新しい12Kセンサーを搭載して大幅にパワーアップしたURSA Mini Pro 12K。

今使っているURSA Mini 4.6K、URSA Mini Pro 4.6K、BMPCC4Kと組み合わせてマルチカム撮影をはじめ、いろんな現場でメインカメラとして導入する予定。特に8Kのハイスピード撮影がしたい人ならお勧めできる一台。

ここでは言及していないが、他にもいろいろと便利な機能は搭載されている。メーカーHPを見れば丁寧に説明されているのでぜひご覧ください。

 

テスト機材協力:SIGMA