Ari Keita(あり・けいた)
1985年生まれ。幼少期をタイ・バンコクで過ごし、大学卒業後はアメリカ・サンディエゴに留学。帰国後、YouTubeにてビロガーとして動画制作を開始。フリーランスとして企業PVの制作も手がける。2012年、YouTube NextUpプログラムに選抜され、参加。映像制作と動画コンテンツの知識を深める。2016年からVERYbig株式会社で映像制作をする。
取材・文●笠井里香/現場写真●ivana micic (vil tokyo) http://vil.tokyo/
ビロガーのアリ”といえば、多くの人がその名を知っているのではないだろうか(ビロガーとは、ビデオブロガーの略称でAriさん自身が造った言葉)。YouTube界では非常に人気の高い動画制作者だったAri Keitaさん。まだ“ユーチューバー”という言葉もなかった頃の話だ。
時事ネタや抜群の企画力でのチャレンジ企画など様々な動画を配信していた。自らを動画オタクと言う通り、世界中の動画を独自の視点で紹介するキュレーション番組「VEST MEDIA」ではAriさん自身が番組の司会としても活躍。だが、2015年秋を最後にYouTube上での動画配信をやめてしまう。
YouTubeで出演と制作両方の経験を経て…
Ariさんは、中学生の頃からマーチングバンドでトロンボーンを演奏していた。大学時代、チャリティバンドで養護施設などに演奏に行っており、その際演奏に必要な楽譜の編集を始め、編曲なども行うようになる。当初は音符も読めなかったそうだ。
大学を卒業後アメリカ・サンディエゴに留学すると英語を勉強するために海外の映像をYouTubeを通して見るようになり、そこで楽譜の編集ができるなら映像編集もできるのではないかとiMovieを使い始めた。それまで映像作りの経験はなく、ここから独学で自身のノウハウを構築する。
「VEST MEDIAでは、番組の司会もやっていましたが、実はプロデューサーとしても仕事をしていたんです。予算、セット、番組構成、台本も書いていました。番組は作りたかったんですが、人が見つからず結局出ることになって。もっといろんな方に出ていただきたかったんですけどね。そういうことを考えているうちに、自分が好きなのは裏方の仕事なんじゃないかと思うようになったんです」
視聴デバイスを意識し、少数精鋭で作り上げる作品
現在は、VERYbig(https://www.verybig.jp/)という会社で企業プロモーション映像やドキュメンタリー、ファッションやミュージックビデオなど、さまざまなクライアントを抱え、活躍している。
「あまり大きなチームでの制作はせず、1~3人くらいの少数精鋭で集中して作ります。大きなチームにも魅力はありますが、やはり三脚を置いて、スライダーをセットして、照明をやって……と時間もかかる。それならカメラを手持ちでバン! とやってしまった方が味があるし、スピード感も出ます。僕自身の個性とも言えるところとしては、スマートフォンでの視聴を前提としていることも多いので、必ずクローズアップを挟んでいきますね。引いた絵が多いとスマホ視聴ではどうしても退屈になりがちですから。いちばん大事なのはアイデアで、撮影を実際にして思うのは、ミーティングをして機材を決めて…と時間をかけるなら、その時間にまずあるもので撮ってみる。動画は常に動いているので、まず“やっちゃおうぜ!”みたいなライブ感のある仕事が可能なんだと思います。将来的には、旅動画など100%自分が作りたいもの、誰にも邪魔されず純粋に、思ったままに撮ったものをライフワーク的な形で出していけたらと思っていますね。ひとりだと誰にも迷惑をかけることなく、実験的なことも積極的にやっていけますから」
好奇心、サービス精神旺盛なAriさんは、とても研究熱心で自身も一視聴者として世界中の映像を楽しみ、新しいアイデアを常に模索している。その姿勢こそが、Ariさんの映像のアイデンティティであり、新たな世界を切り拓く武器でもあるのだ。
●撮影現場の風景
●Ariさんの手がけた作品
L’ENOVL
Amazon Fashion Week TOKYO 2017に初参加したブランド「VIVIANO SUE 」と「IIMISA」のランウェイオープニング映像。映像のテーマは「恐怖と美」。
Daydream Hakuba
長野県白馬村を旅行した際の記録をまとめたもの。緑が生い茂る山々と残雪の白馬岳の対比が美しい。今後はクライアントワーク以外の作品にも力を入れていきたいという。
●最近のお気に入り機材
●よく使う機材リスト
※この記事はビデオSALON 2018年3月号に掲載した内容を転載しています。