航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.38 映像制作の現場でもこんな風に使える 産業用ドローン・Mavic 2 Enterprise


vol.38 映像制作の現場でもこんな風に使える 産業用ドローン・Mavic 2 Enterprise

 

文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

 

Mavic 2 Enterpriseとは

みなさんはMavic 2をもう体験されましたか? 筆者の周りでもユーザーが増えてきたように思います。前モデルのMavic Proはエントリーユーザー向けでしたがMavic 2では、それなりに映像にこだわる方でも、ある程度満足できる絵を写し出すマシンになってきました。Mavic 2はMavic 2 ZoomとMavic 2 Proの2機種が発売されています(以下M2ZとM2P)。M2Zは光学2倍、HD撮影時はロスレスのデジタル2倍ズームに、M2PはH.265、10bitのLog収録とHDR動画(HLG)に対応しています。

そんなMavic 2を点検・測量・人命救助等の産業向けに派生させたモデルが「Enterprise」と、「Enterprise Dual」(以下M2EとM2EDに略します)です。 仕様の詳細はメーカーサイトで確認いただくとして、ざっくり説明すると、 M2Eが 「M2Zにスピーカーとライト、ストロボがついたよ」というモデル(HD時デジタルズームは3倍)、 M2EDが「ズームはないが、赤外線カメラがついてスピーカーとライト、ストロボもついてるよ 」というモデルです。

今回は、映像の現場で、これらの機能を撮影カメラとしてではなく、少しイロモノな制作用小道具として使ってみようという提案です。

 

産業用モデルMavic 2 Enterpriseは2モデルを用意

▲写真左はズーム撮影に対応したMavic 2 Enterpriseと右は赤外線カメラを搭載したMavic 2 Enterprise Dual。

▲底面に備えられたLEDライト。

▲5km先からも目視できるビーコン(定期的に発光するストロボライト)。

 

 

・スピーカー

あまり大音量では音を出せませんが、高さ10〜15mではっきりと聞き取れる音量で鳴ります。機体にはマイクがついていないので、双方向のやり取りはできませんが、インスタントメッセージモードだと、地上で指示した声や音が、数秒後にはM2Eのスピーカーで鳴ります。大声や大音量のスピーカーが使いづらい場所、遠距離の演者やエキストラ、スタッフへの指示など、トランシーバーを持たせづらい時に役立つかもしれません。

また、60秒以内であれば、予め録音したデータを繰り返し流す機能もあるので、ミュージックビデオのリップシンク部など、一曲まるごとはまだ流せませんが、そんな大音量のスピーカーを配置しづらい場所などに効果的かもしれません(すみません、あくまでもアイデアで、現段階では実際に書いているような環境で使ったことはありません)。

M2シリーズは機体も軽く、 静音設計されたプロペラとも相まってかなり静かに飛行するので、 スピーカーの音がプロペラ音にかき消されることはありません。 私がスピーカーをテストした時は「デジタル世代の焼き芋屋」と称して、「やきいも〜やーきたて〜」などと吹き込んでテストしてみました。

 

スピーカーの使い方

スピーカーで流す音声はアプリで録音する。「Instant Broadcast」は録音した音声を1回きり、「Already Playing audio」は予め録音した音声を繰り返し再生するモード。

 

・ライト

明るいとは言えませんが、安価で小回りの効くライティングドローンとしては使えそう。荒野の真ん中でサスペンションライト代わりにも。ただ、ライトが垂直に下を向かないので 照射角度に工夫は必要です。大掛かりな大型LEDを装備したライティングドローンも弊社では運用していますが、そこまでの光量がいらない場合には役立ちます。また、移動できるので、「角度が変わるスポットライト」のような効果も作り出せます。 M2シリーズ共通の機能として低照度状態でのビジョンセンサー動作のために、垂直方向にLEDライトが装備されています。垂直方向はこのライトも手動で点灯させることができます。

 

・ビーコン(ストロボライト)

ドローン機体の視認性向上のために、ヘリコプターなどにも搭載されているピカピカ点滅するストロボライトも備えています。この発光も視覚効果として映像制作的に面白く、革新的な使い道も見つけられそうです。

 

・ズームレンズ

M2Z、M2Eにはズームレンズが装備されています。4K時は光学2倍、HD時は3倍のデジタルズームです(ロスレスではない)。機体の動きとチルトなどを併用すると、空からズームインするような効果が得られます。倍率が低いので高い高度から小さいものには寄れませんが、ズーム効果を活かした撮影は可能です。HD画質にはなりますが、光学とデジタルズームの併用で6倍のズーム効果があり、光学とデジタルの境目感はほぼ感じられず、スムーズなズームができます。

 

・赤外線カメラ

M2EDは、赤外線カメラと可視カメラが併設されています。同じ飛行タイミングで、両方の映像が撮影可能です。また、赤外線の映像に可視映像のコントラストを合成したMSXという映像も撮影されます。赤外映像(もしくは赤外映像にMSXオーバーレイ)と可視映像は別ファイルとして収録されるので、片側だけでの利用も可能。太陽光パネルの点検や夜間の不審者対策、鳥獣監視等の業務用途だけでなく、例えば家屋の断熱効果の可視化や動物番組等での動物の夜の生態の調査など、アイデア次第ではエンターテインメント業界でも様々な利用が見込まれます。

 

赤外線カメラで撮れるサーモグラフィの映像

Mavic 2 Enterprise Dualの映像。赤外線のサーモグラフィーとPinPで実写画面が見られる。誌面ではモノクロで、伝わりづらいので実際の動画を見て欲しい。

 

 

・バッテリー

M2E、M2EDのエンタープライズバージョンは自己発熱バッテリーを使用しています。 ドローンのバッテリーといえば、低温下では能力を発揮できず、バッテリーの保温、加温管理の必要なものでしたが、 Inspire 2同様、15度以下では自己発熱してバッテリーが自動で温まるようになり、低温による不用意な電圧低下などに効果的です。Enterprise版のバッテリーは通常のMavic 2でも使えるので、低温下の運用、撮影などでは、こちらのバッテリーを利用することをおすすめします。

 

ビデオSALON2019年3月号より転載