航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.39 DJIスマートコントローラーは買いか?


vol.39 DJIスマートコントローラーは買いか?

文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

 

従来までの形に囚われずに 作られたコントローラー

DJIから先ごろ「スマートコントローラー」なるプロポが発売になりました。機体や新しいテクノロジーではないので、あまり注目はされなかったのですが、先行して使える機会があったのでレポートをします。

InspireやPhantomなどのコントローラーはそれまでにあったラジコンの「プロポ」や機構をある程度踏襲した形になっています。例えば、ラジコンの基本は目視で飛ばすものなので、FPV用の画面がなかったり、飛行設定を瞬時に変える必要があったので、様々な機能をアサインできるスイッチ類が数多くついたものでした。

しかし、ドローンメーカーがドローン用のコントローラーを作るに当たり、必要なものは装備し、不必要なものは排除したものがこのスマートコントローラーなのではないでしょうか? アンテナの配置や画面の大きさ、カメラ系の操作位置などは空撮するドローン用のコントローラーの決定版といっても過言ではありません。

対応する映像伝送システムがOcuSync2.0専用ということで、現在はMavic 2 Pro/Zoomしか使えませんが、今後対応機種は増えてくると思われます。Mavic 2シリーズがロケハンや軽い番組制作の現場に最高のパフォーマンスを発揮してくれていて、最近はPhantomシリーズよりも出番が多くなっており、このスマートコントローラーの長所がとても役立っています。

スマートコントローラーボタン・端子類配置

DJI
スマートコントローラー
83,700円

1.アンテナ/2.戻る・ファンクションボタン/3.スティック/4.RTHボタン/5.フライト一時停止ボタン/6.フライトモードスイッチ/7.ステータスLED/8.バッテリー残量LED/9.電源ボタン/10.5Dボタン/11.確認・カスタムボタン/12.タッチスクリーン/13.USB-C(充電用)/14.マイク

 

15.フォーカス・シャッターボタン/16.カメラ設定ダイヤル/17.USB-Aポート/18.microSDカードスロット/19.HDMIポート/20.録画ボタン/21.カスタムボタン/22.スティック収納部/23.ジンバルダイヤル

 

 

HDMIの外部出力に対応

プロの現場では、監督をはじめ他のスタッフに飛行中の映像を確認してもらうための外部モニターへの出力が必須です。この機能を使うためだけにPhantomを現場投入することも…。Mavic 2では付属のコントローラーでは外部モニター出力に対応していませんでしたが、スマートコントローラーでこれに対応しました。アプリ画面のミラーリング出力なので収録には向きませんが、全画面にすると、一応映像だけが表示されます。

Mavic 2のコンパクトな機体でも映像チェックができるのはとても便利で、特にMavic 2 Zoomはレンズ交換式のInspire 2の撮影のアングルのシミュレートもできるので、万能のロケハン機になりました。

 

外部モニターに映像出力が可能

▲左写真はMavic 2の標準コントローラーと比べたもの。右写真はHDMI出力で外部モニターと接続した状態。

 

 

バッテリーの持ちはどうか?

標準コントローラーは小型の筐体のため、バッテリーも小さいものでした。5フライトは持たないでしょうか? それよりも写真のように接続したiPhoneが3フライトくらいでほぼ空になり、iPhone本来の機能にも支障をきたしたりしていました。

これを避けるために、わざわざタブレット用のホルダーを装着したりしていたのですが、これを現場で組み立てるのが面倒で…あ、脱線しましたが、大型バッテリー(5000 mAh@ 7.2 V)搭載により、比較的持つようになりました。…と言いたいところですが、大画面と性能向上に伴って、まあまあ素晴らしいスピードでバッテリーも減っていきます。満充電からだと2時間半が連続使用時間で、撮影現場でガンガン使うと少し心許ない印象です。

ただ、USB-Cによる高速充電が可能です。ケーブル、高出力型のモバイルバッテリーなど、機器は選びますが、充電しながらの運用は可能になっています。本体の消費電力が15Wあるので、それ以上の出力があるものでないと、「追充電」はできなく、ただ単に減る速度が遅くなるだけになります。

今回、記事の執筆時点ではACアダプターが付属していなかったのですが、QUICKCharge2.0以上程度のACアダプターがないと、急速充電モードに入らない模様です。

 

アンテナ角度

以前、この連載でもプロポの持ち方や電波の回などでお話ししましたが、コントローラーから上向きに立てるアンテナの形状では、機体とアンテナの向きが理想的な角度になりづらいので、下向きにして使っていると書いたかと思います。

スマートコントローラーは下向きと水平の二段階で向きを調整でき、 2本揃って動くようになりました。これにより、水平方向やや上に理想的な角度でアンテナを向けられます。また、操縦スティックから手を離さずに瞬時にアンテナの向きを変更できるようにもなっています。

アンテナの向き

▲アンテナの向きは水平と下向き2段階で調整可能。

 

セッティングのしやすさ

標準コントローラーでも、スマートフォンやタブレットを接続しなくても飛行は可能です。見える範囲内で目視で飛ばす分にはスマホは接続する必要はありません。ただ、空撮機で映像をモニターをしないで飛ばす意味は練習以外にはあまり見い出せません。というわけでスマホやタブレット、CrystalSky(DJIの高輝度液晶モニター)などを装着します。セッティングに数十分もかかるわけではないのですが、これがまた面倒くさい。事前にリンクしてあれば、スマートコントローラーは電源を入れるだけで即飛ばせます。移動の多い現場になると、この地味な時間や面倒臭さが効いてくると思います。

 

温度対応の広さ

-20度から+40度まで対応可能になりました。暑い場所でのテストは未知数ですが、コントローラーそのものよりも、スマホやタブレットのほうが直射日光と自身が発する熱でシャットダウンしてしまったり、寒冷地ではスマホ自身の電圧低下により、やはりシャットダウンしてしまうことが多いので、これはとてもありがたい性能です。また、各メニュー操作が5Dボタンや操作スティックでもできるので、手袋をはめた状態でも使いやすくなっています。

Mavic 2ユーザーで、ここに挙げてきたような不満がある人にとっては、約8万5千円の価格を許容できるようであればスマートコントローラーは買いなのではないでしょうか? 産業用のMavic 2 Enterpiseには今後対応予定なのですが、消防等ではセキュリティー的に個人のスマホと接続して使うのが難しい場合もあるので、スマートコントローラーは必須と言えるでしょう。

ビデオSALON2019年4月号より転載