航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.43「ShenZhen UAV EXPOで見た ドローン業界最新事情」


vol.43 ShenZhen UAV EXPOで見たドローン業界最新事情

文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

 

ShenZhen UAV EXPOとは

DJIをはじめ、ドローン企業が集中する中国・深圳で開催される中国最大規模のドローン関連の展示会。深センコンベンション&エキシビションセンターにて6月20日〜22日に開催された。産業用や点検用ドローンの展示が中心になっているが、今回はその展示とドローン業界の動向についてレポートする。

 

 

様々なドローンが展示される 世界最大の展示会

ドローンについて、いろいろと書き綴っている筆者ですが、世界のドローン事情にも通じておきたいという目的のもと、昨年に引き続いて中国の深センで開催されたUAV※ EXPOに行ってきました。

まず、規模がデカイ! 会場は日本の同様の展示会の5倍以上の出展社数と広さです。そして、展示してある機体もデカイ! 日本でREDを載せて撮影するようなドローンですら、まったくのおもちゃに見えるサイズ感です。昨年からの傾向としては機体の大型化、ペイロード(積載重量)の重量化、長距離飛行型がより増えている印象でした。

中でもVTOLという「離発着はマルチローター型で、通常飛行は固定翼型の機体」の展示がかなり増えた印象でした。これは中国国内、もしくはその他の国土の広い場所での偵察、監視、物資輸送などの業務において、マルチローター型のドローンの弱点…すなわちエネルギー効率が悪すぎるため、長距離、長時間の安定したフライトができないことに起因するものと思われます。

裏を返せば、本気でドローンを実務運用する気が満々なのです。消防、警察、防災、輸送など「人の役に立つドローン」や「国の役に立つドローン」を官民をあげての開発の本気度がよく見えるものでした。

現実にドローンでの消火や物資輸送、軍事用途や暴動鎮圧などへ導入が進み始めていることでは、日本の事情と比べたらドローンの活用に対する真剣味が違いすぎて、圧倒されました。

会場もドローンを世界中に売り込む気が満々なブース設計で、もちろん中国語の表記は多いけれど、ほとんどのパネルの表記は英語で、ドローン技術を世界にアピールしていました。商魂たくましいその姿に、今の日本にはない勢いを感じずにはいられないのでした。

※UAVは「Unmanned aerial vehicle」の略。人が載らない航空機。つまりドローンのこと。

 

なぜ深センに行くのか?

ところで「なぜ、深セン詣でをするのか?」と尋ねられることがあります。それはUAV EXPO会場はもちろんですが、実はそれだけでなく、街中がこの強いエネルギーに包まれているのを感じ取るために行っている、と言っても過言ではありません。社会において新しいこと、良いと思うことの導入スピードは、日本の10倍は速い感覚です。いまや普通の商店はおろか露天商はもちろんのこと、大道芸の投げ銭ですらQRコード決済が進んでいる。そんな街のスピード感を肌で感じ、今の自分を奮い立たせ、戒めるために、行くことにしているのです。

ShenZhen UAV EXPOで気になった展示物

▲SMD社の大型物資輸送用のVTOL機。AIによる自動航路判断や、5Gによるテレメトリー監視装置なども装備する。

 

▲中型のVTOL機。分解して折りたたむと、専用ケースの中に収まってしまうサイズ感。

 

▲HARWAR社の消防用中型機(日本でいえばかなりの大型だが)D-HOPE 1。消火カプセル(破裂して消化させる)を16個落とすことができる。

 

▲ZIYAN社RANGER P2。シングルローター機(用途不明)だが、未来感とアニメ心をくすぐられるデザインは特に目的がなくても飛ばしたくなる。

 

▲こちらも消防機。長いノズルの先から消火剤入りの水を噴射する。昨年までの展示はドラム缶が飛んでいるような、旧ソ連風のデザインだったが、洗礼されたデザインに変わった。

 

▲撮影機としては老舗のFLYINGCAM社のDISCOVERYという機体。ドローンが出るまではこの機体がラジコンでの空撮の主流だった。現在は中国の映画産業向けに中国に拠点も作って販売している。

 

▲深センのそばの広州に拠点を置くEhang社の人員輸送用ドローン。初代機184は175cmの筆者が乗り込むのに苦労したが、新型の216は比較的、乗り降りしやすい形に変更された。

 

▲SUNHAWK社のドローン。何を搭載しているのかあまり考えないようにしたが、(消火弾という説明だったが)大重量を運ぶエンジン式のタンデムロータードローン。軍事利用の視野に入れての開発であろう。

 

ビデオSALON2019年8月号より転載