航空カメラマン・野口克也の 前略、空からお邪魔します vol.47「最終回・ドローン撮影のこれから」


vol.47「最終回・ドローン撮影のこれから」

文●野口克也(HEXaMedia)

東京都生まれ。空撮専門会社「株式会社ヘキサメディア」代表。柴田三雄氏への師事の後、ヘリコプター、モーターパラグライダー、無線操縦の小型ヘリなど、空撮に関わるすべての写真、映像を区別なく撮影。テレビ東京系地上波『空から日本を見てみよう」、BS JAPAN『空から日本を見てみようPlus』などTV番組やCM等の空撮を多数手がける。写真集に夜景の空撮写真集「発光都市TOKYO」(三才ブックス)など。http://www.hexamedia.co.jp/

 

 

ドローンの進化はめざましく、 今なお進化を続けている

ドローンの開発と空撮の環境は、現在進行形で目まぐるしく変わっています。私がドローン空撮を始めた7年前から考えても、 機材そのもの、そしてそれを使ってできることは、劇的に変わってきました。

直径が1mくらいの大型のドローンに載せた揺れるサーボ方式のジンバルに取り付けたミラーレス一眼で「フルHDが撮れる!」と目視内で撮影して喜んでいたのが7年前。

それが、つい先日の火山の観測では、直径60cmの機体のほか、たった30cmの機体も活躍。離陸地点から3km遠距離まで飛ばし、 1kmに高度を上げて赤外線空撮ができるようなドローンを運用してきました。 余裕の飛行時間。 映像伝送も切れることなく、  多少の雨すらものともせずに飛んでいました。たった7年で、雲泥の差です。

今後もこんな感じのスピード感で、ドローン周辺の世界は進化し続けていくことでしょう。

 

空撮のコモディティ化

また、 当初は特殊な撮影技術を持った人のこだわりの道具だったドローンが、 今や一般の人が購入して、 気軽に飛ばして空撮を楽しめるような機体も販売されて久しくなりました。自撮り動画や画像認識でドローンがペットのようについていくような技術も出回り、そんな情報を得られる人なら誰もが動画SNSに空撮をアップし、 空撮カメラマンを名乗れるようにもなりました。 もともと空撮カメラマンと名乗っていた私の地位は、 特殊な技量と経験とネットワークを持ったすごい人から、 ただのドローンおじさんに埋もれていきました…(笑)。

 

この先、ドローン空撮は どうなっていくのか?

「この先、ドローン空撮がどうなっていくのか?」と、 よく聞かれます。コンシューマーの機体は、 もっと気軽に簡単に、 しかも高機能な機体が出てくることでしょう。しかし空撮には興味ない方もいるので、数的にはこれ以上の普及はしないと思われます。

そして、プロ向け、商業用途の空撮については、自動化が一層進むでしょう。 「かっこいい空撮なら俺に任せてくれ!」的な人の需要はすでに頭打ちであり、今後はますます減少傾向になるかと思います。それに伴って増えてくるのが、半自動・全自動のドローン空撮です。

半自動は予めキレイな空撮ラインを飛ばしてプログラムとして覚えさせ、その同じラインをトレースし、被写体や内容に変化をつけて、何度も撮影。 それを1本の映像にまとめ上げるような映像撮影手法。つまり、操縦技量で同じラインやかっこいいラインを飛ばす時代はやがて終わり、美しいドローン航行ラインのプログラムを書ける人の引き合いが高まると私は考えます。

 

自動化・AI導入による未来

これは点検作業などのドローン運航にも言えることで、例えば太陽光発電の点検でも最初に安全で効率的な自動運航プランを作ってしまえば、その後の点検フライトはドローンを持っていって、電源を入れてボタンを押すだけになります。

また、空間内の場所をすべて高画素360度カメラで撮影し、後で任意の視点に移動できるような、空間の中の映像をすべて撮影してしまう撮影方法も採用されてくるでしょう。その技術が深くなると、地形や撮影場所のスキャンのためにドローンは必要だけれど、そのデータからコンピューター内で様々なアングルを合成できるようになるかもしれません。

もっと踏み込んだ言い方をすれば、AIが「人間がカッコいいと考える空撮カット」を自動で判断し、実際のドローン飛行コマンドもAIが指示して飛行する。なんて世界にもなってくるかもしれません。映画やCM撮影など、なるべく人間臭い「味」を残したい業界は最後まで抵抗すると思いますが、施設点検や巡回監視ドローンなど「作業」に近い分野の撮影から、こういう技術が発達してくると思います。

 

空の蒼に惹きつけられた

さて、今回で私の約3年の連載は最終回になります。航空カメラマンの連載エッセイだったはずですが、ドローンの機材やノウハウ系の掲載回のほうが多かったかもしれません。人目に耐え得るような文章をあまり書いてこなかった私は、文章表現の得意な妻に校正を(というか構成も)頼み、ほぼ二人三脚で連載原稿を書いてきたのです。おかげで妻は、おそらく世界一? 「空撮に詳しい羊毛フェルト作家」という変態に仕上がりました(笑)。

子供の頃から一貫して憧れてきた、空。その中でも「蒼」…ただの青ではなく、成層圏(Strato)の黒に近い「蒼」に、なぜかとても惹きつけられた私の夢への道は、まず自分自身が蒼い空に飛ぶために、ヘリコプターのライセンスを取得するところから始まりました。生まれた一人息子も、蒼一郎と名付けたものです。

同時に写真撮影の魅力にもとりつかれ、空撮カメラマン・航空カメラマンと名乗り始め、ヘリコプターからのスチル撮影→モーターパラグライダーからの動画撮影→ヘリコプターからの動画撮影→空撮番組を毎週ヘリコプターで撮影→ドローンでの撮影と進化し、なんなら空撮用ドローン自体も自分で作ってきました。

今後も飛んだり飛ばしたりして、撮影をし続けることでしょう。そのベクトルや歩調が合い、同じ方向を向いて歩いてくれる仲間は、 いつでも大歓迎です。最近始めた別の会社の名前も「Stratoblue」と名付けました。どこかで「Stratoblue」の文字を見かけたら、陰で応援していただければ(日向でも大歓迎です)ありがたいと思います。

 

▲筆者が最近はじめた会社(https://stratoblue.jp/)。

▲ドローン技量の定量化、平準評価をするためのNIST-STM for sUASを日本各所に提案予定。

▲今年度は火山観測でM210を運用中。

▲西之島で赤外線撮影をするM210。

 

ビデオSALON2019年12月号より転載