お洒落で実用的なストラップ
サクラカメラスリング
Report◎斎賀和彦
カメラの必須アクセサリーの代表はストラップでしょう。わたしの知る限りストラップが標準で付属しないカメラはありません。メーカーが同梱するものは、機能、強度としては充分なのですが、その多くはメーカー名や機種名が大きくプリントされていたりします。もちろんそれが良いって場合もあるのですが、自分の好きな色がいいとか、他の人と違った感じにしたいとか、考え出すと付属品以外が欲しくなりますね。
メーカー純正でもサードパーティでもたくさんのストラップが出ていて、革、ナイロンといった素材や柄やカラーなど膨大な選択肢があるのは、やはり数少ない見た目のカスタマイズ要素だからでしょうか。でも素材や色にこだわっても、見た目はほぼ同じなのはストラップという役割の宿命でした。
ところが今回試してみたサクラカメラスリングは、ストラップのイメージを大きく変えるデザインと、それでいながら実用的な機能を持つ、新世代のストラップでした。
サクラスリングは一見、ストール(アラフィフのわたしは大きなスカーフと言ってしまいます)をストラップの代わりに使ったもの。柔らかな薄い生地に美しくカラフルな模様。とても優雅でお洒落ですが、その分、見た目重視のファッションアイテムのように勝手に思い込み、知ってはいても自分には関係ないものだと思っていました。が、それは大きな誤解でした。
大きなストール状の生地のストラップを、まさにストール(肩掛け)のようにかけることによって荷重が分散され、カメラが「軽く感じ」られます。
もちろんカメラの重量が変わるなんて魔法はあり得ないのですが、従来のストラップが線で支えるものだとすれば、サクラスリングは面で支えるもの。ストラップだと肩が凝ったり、これから夏に向けて素肌の首筋を擦って赤く、痛くなった経験もあるかもしれません。サクラスリングはその荷重面を分散させるだけでなく、広げて掛けると素肌を夏の日射しから守る効果もありそうです。
もともとこのカメラスリングはベビースリングから着想を得たもの。大きな布で赤ちゃんをたすき掛けのように抱っこするひとを見たことがあると思いますが、あれがベビースリング。サクラカメラスリングの発案者でありデザイナーでもある杉山さくらさんが十年以上前、ママ友に教えられベビースリングに出会い、様々に応用していく中でカメラストラップの代わりにストールを結んでみたのが始まりだといいます。
一見、頼りない薄い布ですが、たしかに赤ちゃんを安全に抱っこできるのだからカメラでも大丈夫なのは言うまでもありません。その発想が他のストラップにはない新鮮で洒落た外観と、軽く感じる特性を生み出したというわけです。
さらにストール状の構造を活かし、サクラスリングにはポケットがふたつ(ひとつはファスナー付き)あります。裏側にさり気なく設けられたポケットにはクリーニングクロスやレンズキャップを入れられるのがとても◎。レンズキャップ、どこに入れたか分からなくなるものの筆頭ですよね。
そして大きな布でもあるので、鞄に入れる時、さっとカメラをくるむことで保護用にもなります。柔らかく薄い生地だから耐衝撃性は期待できませんが、擦り傷防止には有効のはず。いかにも、なカメラバッグではなく大きめの鞄にカメラを突っ込みたい時に好適です。サクラカメラスリング、何年も前から出ているし、冒頭に書いたようにお洒落重視のアイテムと誤解していましたが、こうしてみると従来のストラップより合理的かつ実用的な気がします。
とはいえ鮮やかで美しいカメラスリングは女性にこそ似合って、カメラおじさんにはちょっと…と思ってしまいます…いや、思っていました。
そうしたら、いつのまにか男性にも似合う渋い生地のシリーズが出ていたのですね。落ち着いた色味のシリーズは逆に若い男性より、ジャケットを着たアラフォー、アラフィフ(わたしです)が使うととても洒落ていてモテるような気がします(錯覚ですか?)。
公称耐荷重は2.5kg。テスト的に15kgで引っ張っても異常なかったと書いてあるので、ミラーレス機はもちろん、EOS 5Dクラスの一眼レフでも(大口径望遠レンズ以外なら)大丈夫なスペックです。
どうしても見た目が似てしまうカメラにあって、ストラップは自分らしさを演出できる数少ないアイテム。自分用に、あるいはカメラ好きのパートナーへのプレゼントに、洒落た洗練さと実用性のバランスの良いサクラカメラスリングは好適だと感じます。
Sakura Sling Project
http://sakurasling.com
※この連載はビデオSALON 2018年7月号に掲載した内容を転載しています。