Cinematic Drone Shooting STYLE 〜 vol.5 ドローンが見えない360度映像を撮影できるFPVドローン


この連載では、映像を撮るためのドローンをCinematic Droneと呼び、注目の空撮映像やそれに関連する技術、気になる製品などを紹介していきます。今回は360度カメラInsta360 ONE Rを搭載できるFPVドローン・X-Knight360を監修の田川さんにテストしてもらいました。

文●青山祐介/構成●編集部

 

●BetaFPV X-Knight 360

▲28,747円(ドローンのみ)〜。

360度カメラメーカーのInsta360とマイクロドローンメーカーのBetaFPVのコラボ製品。ドローンのフレーム内にInsta360 ONE Rを組み込むことでドローンが見えない360度空撮映像を撮影できる。insta360ショップで「見えないドローン」としても発売中。Insta360 ONE Rを持っていない人のためにカメラとのセットや既にカメラを持っている人のためにドローンのみのセットなどが販売されている。

 

BetaFPV X-Knight360でテスト撮影した映像

▲ふたつのレンズで撮影した映像はカメラ内でスティッチされ、360度全天球映像としてひとつのファイルに記録される(.insvという独自形式。記録メディアはmicroSD)。insta360で無償提供しているソフトInsta360 Studioを使えば、360度の一部を16:9の画角で切り出して後からカメラワークをつけることもできる。また、Insta360の手ブレ補正技術flowtechの恩恵でジンバルがなくても揺れの少ない映像を作れる。ロール回転やリトルプラネットなど通常のカメラでは表現できない映像を作れるのも魅力。

 

 

360度ドローンの周囲すべてを撮影できるCinematic DroneがBetaFPVの「X-Knight 360 FPV Quadcopter」です。機体本体の重さが194.4g、専用の4セル1000mAhのバッテリー(純正以外のバッテリーは機体の高さより飛び出るため使えない)が118gと合計した離陸重量は200gを超えてしまうため、残念ながら航空法適用外機にはなりません。

ただし、Insta360 ONE Rの重さ85gを加えても全重量が401gしかありません。プロペラが5インチの3ブレードタイプのため、5インチ機のわりには軽く、フワフワと飛ぶのが第一印象です。一般的なGoProを積んだ5インチのフリースタイル機は700g程度の重さがありますから、この機体はかなり軽いと言えるでしょう。

撮影目的であれば機体を重くするか、プロペラのサイズを4インチに下げて、どっしりとしたフィーリングにすることをおすすめします。

機体はカメラに写り込まないように、カメラの厚みと同じ高さの平べったいデザインです。結果として上下方向の重心が中心に集まっているため、ロール方向に回転するフリップは機敏に行うことができます。もっとも、360度カメラでロールフリップしてもカメラ映像は回転しないため意味はありませんが…。

また、85gもあるカメラが前方にあり、それとバランスとるために機体後方にバッテリーを積むため、パン方向に機体を回転させるときには、重さに振り回されるフィーリングです。ただし、先に述べたように、5インチ機のわりに軽量なので、ヨー(パン)方向の回転に対しても特に違和感はありません。

このドローンを扱う上で神経を使わなければいけないは、機体の上下面で1番出っ張っている部分がレンズだということ。離着陸は柔らかい布を敷くなどして、レンズが直接地面や硬い床などに触れないようにする必要があります。また、レンズが大きいため、墜落させたりするとレンズに傷がつく可能性が高く、フライトには細心の注意が必要です。

 

製品のポイント

BetaFPVとInsta360のコラボ製品。

▲ドローンのフレーム内にInsta360 ONE Rを組み込んで使える。レンズ保護用のカバーもついてくる。元々カメラを持っている人のためにフレームのみの販売も行なっている。

▲ランディングスキット(360度の画角に写り込んでしまう)がないため、そのまま着陸させると底面のレンズが傷ついてしまう。離着陸の際は柔らかい毛布などの使用をおすすめする。

▲Insta360 ONE Rの液晶画面。タッチパネルでメニュー操作も可能。最大5.7K/30pの360度映像を撮影できる。

▲バッテリーはドローン後部にマジックテープで固定。4S 1000mAhのバッテリーがふたつ付属する。

▲カメラ電源はドローンのバッテリーから供給する仕組み。USB-Cの基盤が備えられているので、それをカメラと接続する。

▲前方のFPVカメラは0度のほか、25度、45度に傾けて使える。隣にはInsta360 ONE Rの電源や録画ボタンも。

▲FPVゴーグルに映像を送るためのVTXのアンテナ。映像は見通し約600mを伝送できる。

▲受信機のTBS CrossFire(左)は国内では電波法違反となるため、今回はフタバR2000SBM(右)に積み替えて使用した。

 

 

ドローンの激しい動きで アングルが乱れることも

空撮機やFPV機で撮影する場合、当然、カメラの向きを意識してフライトすることになります。しかし、360度カメラであるInsta360 ONE Rを搭載している、このX-Knight 360をフライトする場合は、こうした意識を変える必要があります。というのも、画角のセンターや軸といった概念がなく、専用ソフト「Insta360studio」を使い後からアングルを自由に決めることができるからです。

このソフトには一般的な動画編集ソフトと同じように、タイムラインとプレビューといった基本的なレイアウトの編集機能に加えて、Insta360 ONE Rのカメラアングルに関する機能があります。プレビュー上でドラッグすればアングルを自由に変えられるほか、ズームイン/アウトもできます。最大限までズームアウトすると、空に球体状の地面が浮かんだような“リトルプラネット”も表現できます。

私はFPVドローンに慣れ親しんでいるせいか、どちらかというと機体の動きに対して“前を見たい”という意識が強いようです。そういう場合には、ソフトの「Lock Direction(カメラの向きを固定)」機能をオンにすることで、自動的に機体が進む方向にカメラアングルが向くようになります。ただし、X-Knight 360はInsta360 ONE Rを水平に積んでいるため、内蔵のジャイロセンサーが機体の加速度に負けて誤動作して動きを正しく記録できないようです。ときどきLock Directionが誤動作して、アングルがパン方向にグルグル回ってしまいます。

 

 

従来のドローンの概念とは 違う発想で“飛ぶ&撮る”

どうしてもFPVドローンというと、前方の景色を意識して、機体の動きとアングルを求めてしまいがちです。ただ、それだけであれば一般的なドローンでも撮影することが可能です。しかし360度カメラを積んだこのX-Knight 360は、機体の動きとはまったく関係なく、後からアングルを切ることができるドローンだといえます。

特にFPVドローンらしい機敏な動きを見せながら、上下左右にカメラを向けることもできます。いわば、パイロットとカメラオペレーターのふたりで操作するプロ用空撮機が、激しい動きで飛ぶようなものです。ひとりでドローンを飛ばして、後から自分自身でアングルを切っていくことができるわけです。

そのため飛行中はカメラのアングルよりも、むしろ機体の飛行軌跡に集中し、アングルは後からじっくり切る、といったように、飛行や撮影の概念を、まったく変える必要があります。この発想の転換ができれば、このX-Knight 360とInsta360 ONE Rの組み合わせは、これまでにない映像表現ができることでしょう。

 

後からカメラワークをつけられるFreeCaputureの設定手順

①Insta360 Studioに動画ファイルを読み込んだ状態。画面上から「FreeCapture」を選択する。

 

②動きの起点となる位置で上のボタンを押すと、キーフレームが設定される。ここではドローン離陸直後の地点にキーフレームを打った。

 

③タイムラインを動きの終点となる位置(ここでは離陸から7秒後の地点)に動かし、映像を移動したい位置にドラッグする。設定し、ドラッグ&ドロップでモニュメントのセンターを捉えるように画面を調整した。

 

④再びボタンを押すとキーフレームが設定される。これを再生すると、離陸からモニュメントの中心ずれが起こらないカメラの動きを設定できる。

 

▲キーフレームを選択して、左の写真のアイコンを選択した上で数値を調整すれば表示方法を変えることもできる。右は「リトルプラネット」で表示した例。

 

監修・レビュー 田川哲也

ドローンにも使われている、アイペックスコネクターの設計を本職とするドローンエンジニア。Facebookグループ「 U199 ドローンクラブ」の発起人、管理人。現在 DMM RAIDEN RACING チーム エンジニア。

 

 

VIDEOSALON 2021年4月号より転載

vsw