注目映像とTechネタを紹介! CineWhoop Shooting STYLE 〜 vol.2 『Tiny Drone with Tiny GoPro』


CineWhoop(シネフープ)と呼ばれる撮影用小型ドローンで作られた注目の映像とそれに関連する技術を紹介していきます。

文●青山祐介/構成●編集部

 

 

vol.2 『Tiny Drone with Tiny GoPro』

 

補正前の映像も公開

ReelSteadyで補正前の映像もVimeoで公開中。

 

3年前の2017年といえば、まだ、マイクロドローン用のFPVカメラが4KはおろかHDが対応する前の頃でした。そんな時代に、外装を剥いだGoPro HERO5を積んで撮影したというのはあまりにも画期的でした。

GoProアワードを受賞したこの作品は、アメリカのロバート・マッキントッシュさんが作ったもので、マイクロドローンにGoPro HERO5を載せて、朝日が昇るロサンゼルス・ベニスビーチの様子を淡々と描いています。バックしているかのようなドローンが吊り輪の中を通り抜ける。そんな衝撃的な映像に、当時私はマイクロドローンの可能性を確信しました。

その後、ドローンで撮影した元のリールがVimeoで公開され、逆再生に編集でスタビライズをかけてあることがわかります。作者であるマッキントッシュさんは、After EffectsのプラグインであるReelSteady GOの開発者で、その後、同社がGoProに買収されるとともに、彼もGoProに加わっています。

 

ソフトの補正力はもちろん操縦のうまさも見どころ

そんなReelSteady GOの効果もさることながら、リールを見ても機体の上下やピッチングがほとんど目立たない操縦のうまさがわかります。また、撮影地はロスのビーチで、マイクロドローンにとってはそれなりに影響のある風が吹いていると思われますが、そんな風をほとんど感じさせません。

なにより、決して行き当たりばったりではなく、作品の壁の人物のアップから、最後の朝焼けまで、どこをどう飛んでどう見せるか、ということを緻密に計画した上での撮影だったと思います。また、テニスやバスケットボールの音などを入れることで、静かで誰もいないビーチながら昼間の生活感を感じさせる作品となっています。

さらに、マイクロドローンでしか通り抜けられないような狭い場所が、通り過ぎた後にわかるという逆再生ならではのトリックも見せ方の妙だと思います。今でこそ、こうした作品も見られるようになりましたが、それを3年も前に“剥ぎPro”を作り、このクオリティの作品を発表したということが画期的だと思います。

 

 

CineWhoopのTechネタ

本連載の監修でドローンエンジニアの田川さんがCineWhoopでキレイな映像を撮るためにメカニカル的な観点でワンポイントアドバイス!

監修 田川哲也

ドローンにも使われている、アイペックスコネクターの設計を本職とするドローンエンジニア。Facebookグループ「 U199 ドローンクラブ」の発起人、管理人。現在 DMM RAIDEN RACIN G チーム エンジニア。

 

CineWhoopを安定して飛ばす方法は?

機体のレートとスロットルの設定が肝

今回紹介した動画『Tiny Drone with Tiny GoPro』を3年前に観たとき、揺れの少ない映像に驚いたことを覚えています。この3年の間に、GoProも進化し、揺れ補正も強化されていますが、ここではドローンそのものの揺れを減らす方法を紹介していきたいと思います。

飛んでいるカメラの揺れを抑えて、いかに滑らかに移動できるかは機体設定とプロポのスティック操作が重要になります。

 

バッテリーを使い分ける

まずは機体の上下の動き(スロットル)を滑らかにするための方法を紹介します。それは使用バッテリーを使い分けて機体重量やパワーを調整することです。機体そのものは軽いに越したことありませんが、軽ければ軽いほど動きが機敏になる傾向があるので、撮影シーンに合わせて使い分けています。私の場合は室内や室外の狭いところを飛ぶ(木々の枝をすり抜ける等)時には、3Sバッテリーを使い、パワーを抑えています(お気に入りは450mAh、600mAhクラス)。屋外でもう少し速く飛ばす場合には、4Sの450mAhクラスを使っています。

▲田川さんがCineWhoopに使っているバッテリー。容量やセル数など様々。

 

 

スロットルの感度を調整

ドローンには飛行にあたって機体の制御を行うフライトコントローラーと呼ばれるパーツがあります。これは飛行の要となるものですが、Betaflightというソフトで好みの設定に変更できます。例えば、プロポのスロットルを持ち上げた時、機体の上下動が敏感だと感じた時、「スロットルMID(スロットルカーブの中間)」と「スロットルEXPO」の数値を下げることで、緩やかな動きに変えることができます。スロットルEXPOが0の時はリニアになるので、MIDの値を変えても挙動に変化はありません。ここではMIDを0.50、EXPOを0.3に設定しました。

カーブの特性を理解するために、広い場所で極端なカーブに変えて試してみると、ほとんど飛ばせなくなると思います。写真のようにスティック中央付近の動きが鈍化されるようにカーブさせると飛ばしやすいと思います。

一般的にプロポのスティックがスロットル中央の位置でホバリングするくらいに調整すると飛ばしやすいとされています。しかし、機体によって重量が変わるので、ホバリングするスロットル位置は異なります。その違いを細かく調整するためにはプロポ側で設定する必要があります(次ページ参照)。ここでは私が普段使っているプロポを例に手順を紹介しています。

私はこのあと紹介する「レート」はBetaflightで設定していますが、「スロットル」に関してはプロポで設定するようにしています。

 

操縦のフィーリングに関わる 「レート」は人それぞれ

機体の操縦フィーリングと密接な関係にあるのが、Betaflightの「レート」プロファイルの設定です。「PID設定は?」と思う人もいるかもしれませんが、今日のCineWhoopのフライトコントローラーは大変良くできており、ほとんどの場合、PIDはデフォルトで問題なく飛びます。触り始めると沼にはまるので、慣れるまではデフォルトでいいと思います。それよりも「レート」設定を触って自分がドローンを操作しやすい設定見つけてください。

このレート設定はあくまで操縦する本人がいいと思う値を見つけなければなりません。上手な人の設定が必ずしも自分にとっていい設定であるとは限らないので、自分に合った設定をおのおのが決めていくしかありません。

レートにある3つの項目の意味は次の通りです。「RC RATE」全体の挙動を決める値です。「Super Rate」はスティックエンドでの挙動に関する設定です。スティックエンドに操作した時のみ機体をフリップ(宙返り)させたいという場合にはこの値を高くします。スティックエンドの最大速度の値が変わります。「RC EXPO」はスティック中央付近の挙動に関するものです。スティック中央付近でスティックを動かしても挙動を緩やかにさせたい場合、数値を入れて曲線を寝かせていきます。

レートの設定は、機体ごとに設定するものではなく、飛ばし方の種類によって変えています。例えば、レースで飛ばす時に機敏な動きをさせたい時の設定、空撮用にゆったりとした動きで飛ばしたい時の設定という感じで決めていきます。これは機体が変わっても基本的に同じ値使っています。ぜひ自分が操縦しやすい設定を見つけてみてください。

 

Betaflightの設定

Betaflightは機体の飛行特性などを調整するための無料ソフト。「PIDチューニング」の「Rateprofile設定」にある「スロットル」と「レート」を調整する。レートはプロポのスティックの舵入れの強弱で機体がどのように反応するかという感度の設定。「レートプレビュー」にある横軸はスティックの倒し具合、縦軸は回転(ロール)、前後(ピッチ)、左右(ヨー)で機体がどのように反応するかを曲線で表している。これは操縦者のフィーリングによるため、それぞれ操縦しやすい設定を探していく。

▲スロットルカーブ。スロットルMIDとEXPOの数値を変えるとカーブが変化する。

 

プロポ(フタバ18SZ)のスロットルカーブの設定方法

▲機体マークを押す。

▲「モデルメニュー」で「デュアルレート」を押す。

▲「D/R1」はファンクションを「スロットル」、「スイッチ」を「SA(任意)」に設定。

▲「モデルメニュー」に戻り、「AFR」を押す。

▲スロットルのカーブを好みに合わせて調整。

 

 

VIDEO SALON 10月号より転載

 

 

 

 

 

 

 

vsw