マイクロシネマコンテストの地域プロモーション部門の優秀作の制作者にお話を訊いていく。今回は4世代にわたって家族経営されている「阿蘇茅葺工房」の活動を、美しい阿蘇の風景織り交ぜながら描いた作品。この作品が生まれてきた経緯を取材した。

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取材・文/編集部 一柳

 

『阿蘇茅葺工房』藤本周一さん

テレビの取材で訪れた高森町に惹かれそこに住むようになって生まれた作品を5分に再編集

熊本県高森町にある「阿蘇茅葺工房」は、植田龍雄さんの祖父・本田末保さん(95歳)が70年前に立ち上げた。元々サラリーマンをしていた龍雄さんだったが、祖父や父の技を繋ぎたいと25歳で茅葺の世界に入った。そんな「阿蘇茅葺工房」の1年を追った。その元になった30分のオリジナル番組と見比べてみても面白い。

 

美しい阿蘇の空撮映像やポートレートショット。ビデオグラファー的な表現も印象的だが、話を聞いていくスタンスや構成にベテランのテレビマンの腕も感じられる。お会いしてみたら、やはり制作者の藤本周一さんは、ビデオグラファー世代ではなく、長年テレビの制作現場に関わってきたディレクターだった。

「RKK熊本放送の関連会社に新卒で入って、3年間務めたあとは、ずっとフリーランスもしくはプロダクションに入って、熊本と福岡でディレクターとしてやってきました。もっぱらテレビ関係で、企業のVPをやったりと、好きなことをやってきましたね。

ただテレビに携わってきたなかで、どうしても自分が作りたいものとのズレが出てきました。RKK熊本放送に携わっていたときに、夕方の番組で熊本の山間地域で棚田が点在している高森町ということころがあって、棚田にまつわる情報番組をドキュメンタリーとして制作したことがあって、こんないいところがあるんだと知りました。その後ゴールデンでも高森町をテーマにした番組を作って思いが強くなっていったんです。そんなときたまたま地域おこし協力隊という制度で、高森町のケーブルテレビが募集しているのを知って応募しました。その制度は3年で卒業したのですが、その後も関わらせていただき番組を作らせてもらっています」

高森町でたまたま遭遇して取材をし始めたのが親子4世代にわたって野焼きから茅を育て、刈り取り、茅葺までしている阿蘇茅葺工房だった。ケーブルテレビの番組として作ったのが今回の作品のオリジナルにあたる30分番組だった。その後も季節ごと、現場ごとに取材を続けている。その膨大な取材素材を5分に凝縮した。

「個人的にはある程度の尺で構成を作っていくのが好きなので、短いものは物足りなさがあるし、果たして5分でエッセンスを詰め込めるだろうかという不安はあったのですが、いい経験だと思って挑戦しました。かなり苦労しましたね」

 

デジタル一眼で身軽に取材

撮影はデジタル一眼(キヤノンEOS 80D)で。ポートレートなどはケーブルテレビが所有するEOS C200を使用したが、大半はEOS 80Dで身軽なシステムでひとりで取材する。

「実は現場での取材のときは、ガンマイクもつけていません。茅のなかに入っていくときにマイクが邪魔になるので(笑)。それでもキヤノンのカメラは声がクリアに録れていたので助かりました。編集も九州では早い段階からディレクターが編集することが多かったので、私もEDIUSで作業しています」

使用カメラは、左からキヤノンEOS 5D Mark IV、富士フイルムX-T4、キヤノンEOS 80D。レンズのフロントにバリアブルNDフィルターを装着。

自宅の編集環境。EDIUSで編集している。

 

ライフワーク

偶然出会ったテーマだが、奥は深かった。藤本さんにとってまさにライフワークになってきた。

「茅葺は古い建築の葺き替えもありますが、新しい店舗で新しい使われ方をされ始めて、今それが広がっていて興味深いんです。あと親子4世代というのも、茅葺のサイクルを感じさせるもので、家族のあり方としてなかなかありません。いろいろなことが絡み合ってこのテーマは興味が尽きないんです」

 

撮影現場

追い続けている阿蘇茅葺工房の作業の様子をデジタル一眼カメラにズームレンズ、モニターというスタイルで撮影。




 

主な機材リスト

 

藤本周一さん。茅葺以外にも、飲食、料理関係のテーマで取材。テレビの情報番組だと素材の生産者まで取材しなくてもいいと言われるが、どうしても産地が気になるという。その他、高森町のケーブルテレビで作った作品は以下から。

 

●その他の作品

 

 

 

●VIDEO SALON 2024年1月号より転載