【映画作家主義】ふるいちやすし 第14回 三脚でのカメラワークは動かし方も含めて構図であり、映像演出


プロフィール
脚本、監督、撮影、編集、音楽を一人でこなす映画作家。モナコ国際映画祭:最優秀撮影監督、脚本、音楽、アートフィルム賞。ロンドンフィルムメーカー国際映画祭:最優秀監督賞。アジア国際映画祭:最優秀監督賞。最新作『千年の糸姫/1000 Year Princess 』はアメリカSMGグループから世界配信中。

 

第14回 三脚でのカメラワークは動かし方も含めて構図であり、映像演出

ジタル一眼の動画機能が目覚ましく進化し、シネカメラとしても使われるようになってから、それまで静止画しか撮らなかった人が動画も撮るようになったことは自然なことだろうし、これからも増えると思う。大判センサーや交換可能な様々なレンズにより、動画の表現力がそれまでのビデオカメラに比べて飛躍的に向上したのだから、私も迷わず使い始めたのだが、それらをずっと使い続けてきたのはスチルカメラマン達で、当然カメラについての知識には自信があるだろうし、扱いにも慣れている。だが、だからと言ってすぐに素晴らしい動画が撮れるかと言うとそうでもない。動画ならではの技術やセンスを改めて習得しなくてはならないし、例えプロであっても、慣れている分、そこに油断があったりするものだ。

当たり前だが動画は動く。動く物を撮るだけではなく、カメラを動かして視点も変える。これは一からトレーニングをして身につけなくてはならないテクニックなのだ。

例えばフォーカスにおいても、スチルであればオートフォーカスで速ければ速い方が良いのだろうが、そのフォーカスの合い方の速度さえも動画では表現の一つだ。それをコントロールするためにはフォーカスリングの動きに粘りがあり、さらに機械式でなければならない。つまりリングの動きや位置が絶対的な距離と一致してなくてはならないのだ。

そういうマニュアルレンズを使ってフォーカシングのトレーニングをし、またそのためには大きなモニターも用意して、目で確認しなければならない。

また、三脚もスチル用とビデオ用が大きく違っているのも分かるだろう。雲台が違うのは当たり前だが、脚も本来は一脚につき複数本のパイプでできている。ズバリ言うと、スチル用の三脚はガチッと止めるための物で、ビデオ用は動かす為の物なのだ。その為に捻れに強い構造になっている。カーボンファイバーの採用でシングルタイプでも捻れにくいビデオ用の三脚が出てきたが、最近ではカーボンファイバーのツインタイプといった決定版のような物も発売されている。雲台は縦位置にはできない物がほとんどだが、簡単に水平がとれる仕組みになっていて、横(パン)縦(ティルト)方向へセンシティブな動きができるように粘りがあり、その強さもそれぞれ調節できるようになっている。これを縦横同じにすることで、斜めにも綺麗に動かせるようになる。また、カメラを上や下に向けた時に、ロックしなくてもその位置で止まるカウンターバランスという機能を持った物も有り、思い通りに動かし、ピタッと止めることができる。ただし、カウンターバランスは最初に精密に合わせておかなくてはならず、例えばレンズを付け替えて前後の重さが変わるとその都度合わせ直さなくてならない。フォーカスやズームで長さが変わってしまうレンズは厄介で、できれば使わない方がいい。この粘りやバランスが無段階で調節できる物が望ましいが、しっかり合わせておけば、安定して美しい動きができる。カメラを手持ちで動かすのが悪いという訳ではないが、三脚の操作に自信が持てれば“動きの表現力”にグッと幅が出る事は間違いない。ビデオグラファーにとっては手足と同じような物なので当然肉体的な能力が必要になるが、その分、動きやフォーカスが思い通りにピタッと決まった時の快感は凄いので、ぜひトレーニングを重ねてほしい。

前回まで静止画的に構図の作り方を書いてきたが、動画においては動かし方も含めて構図であり、映像演出なのだ。そのためにスライダーやジンバル、ミニジブクレーンといった動かすための様々な機材があり、もちろんそれぞれにトレーニングは必要だろう。また、そこには特にスチルカメラマンが陥りやすい落とし穴があったりする。次回からも続けて解説していこう。

 

▲マンフロットのカーボン・ツインタイプ三脚(MVTTWINMC)とナイトロテック(MVHN8AH)雲台との組み合わせ。最新型ではあるが、今後、私の愛機になることは間違いない。パン、ティルトの粘りとカウンターバランスの全てが無段階に調節でき、思い通りの動きができ、ピタッと止まる。カメラは借り物の現場でも、これだけは持っていくようにしている。私の手足だ。

 

▲カウンターバランスはしっかり調節すればカメラを上に向けても下に向けてもロックしなくてもピタッと止まる不思議な機能。これをしっかり合わせておけば、パン棒をしっかり握る必要はない。指先で優しくつまむ程度でコントロールする。人間の身体は鼓動や呼吸も含めて不要な動きをするものだ。止める時にはだんだん力を抜いてゆき、最後には離してしまえばいい。

 

 

ビデオSALON2019年5月号より転載