『映像ガジェット調査隊!』 第八回 自動スイッチング機能で対談番組を量産中!


文●川井拓也

株式会社ヒマナイヌ代表。配信チームLiveNINJA主宰。Ustream黎明期からマルチカメラによるライブ配信や収録を手がける。筆者のブログ●http://himag.blog.jp/

Vol.008 自動スイッチング機能で対談番組を量産中!

筆者が運営するイベントスペース「ツカパー」の配信システム

気の置けない仲間とバーカウンターで語り合う様子をローランドV-1HDで自動スイッチングシステムを構築し、配信。ここで最近は毎日のように対談番組を配信・収録している。

マルチカメラによる番組制作にはカメラを切替えるスイッチャーさんが必要です。自分もその仕事をしているのですがこれを無人にできないか?という実験を進めています。まるで自分で自分の仕事を殺すかのような実験ですが、これには目的があります。現場を出演者だけにしたいのです。居酒屋やバーで気の置けない友達と飲んでいると楽しい会話になりますよね? そういう空気を作るためにスタッフをゼロに出来ないか?それが実験の発端です。

◉ローランドV-1HD/V-1SDI/VR-4HDには自動スイッチング機能がある

ローランドV-1HDの自動スイッチング機能で3台のカメラをスイッチング。VR-3EXは主にオーディオミキサーとして使用。配信はセレボLiveShell Xで行う。キャンプ用テーブルに収まるコンパクトなシステム。

そのための強力な味方がローランドのV-1HDに搭載されているオートスイッチング機能です。これは入力されているソースを設定した任意の秒数で自動スイッチングしていく機能でこれまでVR-3EXにも搭載されていました。フルHDのスイッチャーとしてはV-1HDやV-1SDI、そして最近発売されたVR-4HDにも搭載されています。

◉壁に3台のマイクロフォーサーズカメラを設置して明るい単焦点レンズで狙う

神田にある「ツカパー」は自分がプロデュースする配信スタジオですが、バーカウンターのセットがあります。ここで無人収録の対談番組を作るために壁際に3台のカメラを設置しました。三脚を使うといかにも撮影という感じになるのでクリップ三脚に。ケーブルが床をうねうねと這うのは嫌だったので壁に設置したニトリの棚に設置しました。

ここに明るい単焦点レンズをつけて人物を狙います。ビデオカメラでは生々しくなりすぎるので、被写界深度を浅めにした25mmや50mmレンズを使います。マイクロフォーサーズはフルサイズと違ってボケすぎないので背景のディテールも程よく残るのが気に入っています。人物のメインショットはライカMマウントのズミクロンを使います。こうしたオールドレンズはMFですが、ピント位置をしっかり固定できるのでマーキングしておきます。カウンターのテーブルにも同じ色のテプラで矢印が貼ってあるので出演者はそこに座れば顔にピントが来るようになっています。

カメラはGH2にライカのズミクロンなどのオールドレンズを使用。レンズにはフォーカス位置がテプラで貼ってある。

◉V-1HDのオートスイッチングの肝はカメラの接続順と秒数設定

次にV-1HDにカメラをどう繋ぐか? 自動スイッチングは入力の1→2→3→4→1という風に切り替わっていきます。つまりカットの順番がカメラをどこの入力に入れるかで決まりますから、それが自動スイッチングの動画の印象を決定づけます。カットが切り替わる秒数の設定はいろいろ実験してみて7秒くらいが早すぎず遅すぎず飽きない出来上がりになることがわかってきました。

小型モニターもクリップ型クランプで固定。左はプログラム出力で右はマルチ画面を表示。 SETUPメニューのAUTO SCANをONにすると自動スイッチングが使える。

このシステムで無人収録した対談番組を見返すと意外にも自然に見ていられることに気づきます。人がスイッチングするとつい話している人物を重視してスイッチングしがちです。ところが無人スイッチングは秒数でどんどんカットが変わっていくので聞いてる側の表情も均等に入るんですね。それが妙なリアリティを生むんです。人間って話している時の表情より聞いている時の表情の方がその人らしさが出るんですね。すごく面白い発見でした。

録画はアバーメディアC910で行なっている。

このシステムのおかげで毎日のように対談番組を作っています。準備時間ゼロでどんどん親しい人との会話をデジタル・アーカイブできます。撮影スタジオを持っている人はカウンターひとつでこんな番組が作れるので真似してみてください!

vsw