【斎賀教授のアフターファイブ】わずか20cmが新鮮な映像を作る カメラバッグに入る電動スライダー エーデルクローンSliderONE PRO


わずか20cmが新鮮な映像を作る
カメラバッグに入る電動スライダー
エーデルクローンSliderONE PRO

Report◎斎賀和彦

優秀な手ブレ補正もジンバルスタビライザーの浮遊感もいいけれど、やはりどっしりと安定した、それでいて視点が変わっていくスライダーによるドリー撮影は格別です。

その一方、スライダーは大きさと移動量が比例してしまうため、ワンマン撮影には厳しいサイズの荷物になりがちです。

独特な撮影支援機材をリリースするエーデルクローンから登場したSliderONE PRO(スライダーワンプロ)は非常に小型ながら意外と使い甲斐のあるスライダーでした。

▲ エーデルクローンSliderONE PRO(手前)と関連製品のFlexTILT HEAD(奥)。スライダーワンプロには雲台は付属しないので、汎用の雲台もしくはこのフレックスティルトヘッドを使う。単体でも使えるが、三脚があると便利。取り扱いは株式会社テイク。

製品をひと言で言うと小型の電動スライダー。長さは27cm、幅と高さは約10cmと5cm。カメラバッグに収まるサイズのスライダーで重量も1kgを切ります。ほぼ三脚相当のサイズになる他のスライダーに較べ圧倒的にコンパクトなのが特徴ですが、その代わりスライド幅(移動範囲)は20cmしかありません。

たった20cmではたいした視線変化もないし効果が薄いのでは? と思ってしまいます。たしかに漫然と風景をスライドさせるだけならスライダー独特の面白さは感じません。しかし、遠景と近景のあるシチュエーションやテーブル上といった近接撮影時には意外とダイナミックな視点移動が感じられます。

もともと数十cmのスライダーでも動き出しの不安定なストローク部分は捨てることが多く実際に使うのは20cmもあれば充分、というのが本製品の出発点らしく、本製品は精度の高いコアレスDCモーターにより動き出しから使えるのもアドバンテージです

実際にいろいろ使ってみました。モーターによる電動であることは前述しましたが、そのコントロールはスマートフォンとBluetooth接続し、専用のアプリから行います。

このアプリが単なるワイヤレスリモコン的なものではなく、プログラムコントローラーとでも言うべきもので秀逸です。スライダーの移動速度(時間)の設定はもちろん、20cmの移動量の中で使う範囲、さらに動き出しと終わりに滑らかなカーブを付けるイーズイン・アウト設定、スタート前のディレイまで設定可能。さらに指先の動きに合わせてスライダーを動かすマニュアルモードも搭載しています。

▲ スマートフォンからの制御で精緻なスライド駆動を行う。同じ動きを何度でも繰り返せるのが大きなアドバンテージ。

特筆すべきは移動速度を4cm/秒から27μm/秒まで0.1%刻みで設定できること。これは20cmを2時間以上かけて等速で動かす超スロー移動撮影が可能ということで(こんな撮影が必要かどうかはともかく)、人間による操作ではとても実現できない撮影ができるのです。もちろん通常の速度域においてもムラのないスライダーの動きは移動撮影のクオリティをワンランク向上させるでしょう。

さらに、一眼カメラとケーブル接続する(カメラごとに別売り専用ケーブルが必要)ことにより、スライダーとタイムラプスやストップモーションアニメを連動させることもできます。

このような高度な動作プログラムを作れるのも、コントローラーが内蔵機械式でなくスマートフォンのアプリベースだから。そのためこれからアプリのバージョンアップで更なる機能強化が期待できますし、実際、Apple Watchからのコントロールにも対応すると発表されています。

今回、梅雨時だったこともあり室内でのミニチュア撮影に没頭したわけですが、意外とカメラを選ぶな、という印象。

スペック的には推奨搭載重量9kgと、重い一眼プラスレンズでも余裕の性能ですが、レンズが重くフロントヘビーになるとSliderONE PRO単体だとバランスが取れないのです。三脚に固定するとカメラ位置が高くなりすぎる。同社のFLEXTILT HEADを併用すると角度決めの自由度が増しますが、その場合、耐荷重が2.5kgになってしまいます。

▲ FLEXTILT HEADはカメラの角度や高さを簡単に調整できる。アオリ、俯瞰を活用すると、20cmの移動量でもダイナミックな画作りが可能。

また、精緻な電動移動を活かすにはカメラに触ってはダメですが、近接撮影だとフォーカス固定では厳しいシーンが多いので、コンティニュアスAFのアルゴリズムとの相性はかなり重要だと思いました。レンズのAF駆動の滑らかさも含め、使いこなしには研究の余地がありそうです。

そんな試行錯誤していてこの製品の大きなアドバンテージを再認識することになりました。それは、移動速度等を数値でコントロールできること。まったく同じカメラワークを何度も繰り返すことが可能なため、リハもリテイクも条件が揃い、微調整や修正が非常に効率的でした。これは手作業では実現できないことです。

たかが20cm。されど20cm。精緻に追い込んでいく撮影に大きな力になる小さな機械がこれです。

 

◉アプリ操作画面解説

1.SliderONE PROのバッテリー残量表示。ちなみにバッテリーはEOS5D、6D、80D等で広く使われるキヤノン LP-E6互換。 2.マニュアル操作エリア。速度と動作の緩急を指先でコントロールする。 3.スライダー両端をA、Bとし、ヘッドの位置をリアルタイム表示。 4. A、Bの位置はスライド移動範囲の中で自由に設定できる。 5.ヘッドの移動速度設定 6.設定速度と、その設定でのAB間所要時間。 7.スタートボタンタップ後、ヘッドが動き出すまでの待機秒数を設定可能。 8.動き出し、終わりに速度のカーブ(イーズイン、イーズアウト)を設定 できる。 9.タイムラプス設定画面へ。 10.ストップモーションアニメ設定画面へ。 11.AからBへの移動開始ボタン 12.ループモード 13.最高速度でB(またはA)に移動。

※この連載はビデオSALON 2018年8月号に掲載した内容を転載しています。