動画配信スタジオ 運営日誌 第24回 ATEM Mini Proを使った 「ライブ配信まるごとレンタルキット」


第23回 ATEM Mini Proを使った 「ライブ配信まるごとレンタルキット」

写真・文◉川井拓也(ヒマナイヌ)

 

中小企業がセミナーや 商品説明を配信するためのキット開発

4入力スイッチャーの価格をグッと下げて話題となったATEM Miniの発売から半年もたたず配信エンコード機能を内蔵したProが出たので、すぐに購入しましたが、今回の目的はスタジオのシステムに組み込むのではなくレンタルキットを作るというものです。新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の影響でオンラインセミナーやライブ配信が盛んになってきました。

スマホ1台で気軽に配信することもできるけれど、複数のカメラを使ったり、スライドをきれいに入れながら商品紹介したいとなると、スイッチャーが欲しくなってきます。

パソコンの入力やアプリを駆使して実現することもできますが、ITスキルの高い担当者がいないと安定した配信パソコンを作り上げることはできません。ATEM Mini Proを中核機器にすることで誰でもパッケージを開けたら数時間で使い方をマスターして、どんどんコンテンツを作れるようになるレンタルキットを作ろうと考えたのです。

ATEM Mini Proを基盤にした「ライブ配信まるごとレンタルキット」を考案

▲スイッチャーはブラックマジックデザインのATEM Mini Pro。マルチビューやUSB-C経由で録画も可能。ソフトウェアコントロールパネルはWindowsタブレットを使用。

▲レンタルキットにはカメラも含まれる。キヤノンHF G10とG20。

▲マイクはゼンハイザーのワイヤレスマイク・XSW-D PORTABLE LAVALIER SETを使用。

 

 

ATEM Mini Proの 本体操作だけでできることを 理解する

数年前までのATEMシリーズといえば、本体にはほとんどボタンらしいものはなく、すべてはソフトウェアコントロールパネルで操作するというスタイルでした。ところが最近の製品ラインナップはどれも本体に必要最低限のスイッチがつくようになり、使いやすくなってきたのです。

ATEM Mini Proも配信の設定こそパソコンが必要ですが、カットの切り替えや録画、PinPなどの基本的な操作は本体だけで可能です。オーディオミキサー部分もマルチビューにレベルメーターが表示されるので、本体だけで必要最小限のミキシングが可能です。今回のレンタルキットでは本体だけで操作してもっと細かい調整をしたい人はパソコンをつないでソフトウェアコントロールを使うという前提で設計してみることにしました。

 

何がワンパッケージになっていれば便利なのか?

これまでにライブ配信やマルチカメラ収録の経験はない人が借りてもすぐに使い始められるように何がワンパッケージになっていれば便利なのかを考えました。ATEM Mini Proは4入力ありますが、そこをカメラ2入力とパソコンを2入力に割り振ることにしました。

「メディアプール」を使わずにパソコンからの逆グリーンバックを使ってタイトルをクロマキーで合成しながらパワーポイントのスライドと2台のカメラで講師の寄りと引きを切り替えたい。そんなニーズに対応するためです。

2台のカメラは一眼ではなく、一般的なビデオカメラにしました。映像の質感は全体にピントが合ったパンフォーカスなテイストになりますが、高倍率な電動ズームが使えて、様々な画角を選べたほうが画作りがしやすいからです。

配信せずにどんどん録画しながらコンテンツを撮りためるニーズが多いだろうと考え、USB-CのHUBも梱包しました。これにSDカードやUSBメモリーを挿すだけで録画できます。マイクはゼンハイザーのXSW-D PORTABLE LAVALIER SETにしました。

 

HDMIもわかりやすい カラーケーブルを使って パッケージ

ATEM Mini Proへの4入力に使うHDMIケーブルは一般的なブラックケーブルではなく、カラーケーブルを使いました。現場でよくあるのが、どのケーブルがどの機材に接続されているのかがわかりにくくなることです。

先端同士にテプラを貼っておくこともできますが、カラーケーブルにすれば一目瞭然です。「オレンジのケーブルに切り替えて」などプレゼンテーション用のパソコンを操作している講師の人がスイッチャーの人に伝達するのも簡単です。

 

ATEM操作用の Windowsタブレットも インストール済みで添付

今回のキットではATEM Mini ProのUSB-C端子は録画用に使うので、ソフトウェアコントロールパネルはEthernet経由で行えるようにWindo wsタブレットと5ポートを備えるギガビットハブもキットに入れることにしました。ATEMを制御するためのタブレットにCPUパワーはそれほど必要ではないので、中古のもので十分です。

ライブ配信はYouTube LiveとFacebook LiveとTwitchに限られますが、ビジネスニーズならおおよそ充分でしょう。XMLを書き換えて、その他のサービスに配信する裏技などもありますが、それはレンタルキットを貸し出す側が大きな声で教えることではありません。

 

「ライブ配信まるごと レンタルキット」の ニーズはありそう!

こうして2台のカメラと2台のパソコン、合計4ソースをライブでスイッチングしながら収録と配信ができる「ライブ配信まるごとレンタルキット」が完成しました。これを週4万円でレンタルして1カ月で元の機材費を回収というモデルです。

グリーン/ブルーバックとLED照明をつけたオプションを追加し、合成にも対応できるようにしました。6月からサービスインしましたが、利用者からは好評で今後も最適化をチューニングしながらユーザーニーズにフォーカスしていきたいと思っています。

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次回はヒマスタに刺激を受けて立ち上がった全国のスタジオ運営者に「スタジオ運営をはじめてよかったこと」をリモートインタビューします。

 

「ライブ配信まるごとレンタルキット」の全パッケージ

▲カメラ、スイッチャー、マイク、照明、PCなども含めたレンタルキットの全機材。

 

 

VIDEOSALON 2020年7月号より転載