文・作例 ナカドウガ
TV番組のオンラインエディターを経て、日本で唯一のテロップ漫談家を自称しながら、テロップについてのノウハウを発信している。

 

テロップの文体や表記には、通常の文章にはない独自のルールがあります。たとえば句読点を入れないことや、「です・である」などの語尾を使わず、箇条書きのように結ぶなど。また、表記のゆれなど、うっかりミスが多いのも日本語ならでは。今回は文体と表記についてルールを決めます。

 

最初に4つの文体を見比べていきましょう。それぞれ内容は同じですが、文体に違いがあります。ここで気にしたいのが、よりテロップとしてよく見かける文体がどれかということ。まずはセオリーの文体を抑えることからはじめましょう。

 

 

よりテロップらしい文体とは?

テロップとしてよく見かける表記は、キーワードまたは箇条書きです。「です・である」など語尾を使うと、客観的な視点が強くなり、違和感が生じてしまいます。また、このような表記を推奨する理由は、短時間で文章全体を理解できるようにするためです。伝えたい趣旨とは直接関係のない文字も極力少なくするよう意識しましょう。

必ずしも正しい文体にしなくても良いのがテロップ文体の特徴で、意識しないとついつい冗長な文章になってしまいます。この他「だ・である」調も、無用な威圧感の元になるので注意。もちろん印象を意図的に変えたいという場合は例外です。

短い時間でキーワードを視認させる必要があるテロップならではの表現方法。体言止めのような文体から、漢字ひと文字などで端的に表現するものもここに含まれます。キーワードと同じ意味合いの英文を沿えることでデザイン性もアップします。

話し言葉は、たとえ丁寧な話し言葉であっても、ネガティブな軽々しさを強く感じてしまいます。情報を取り扱う番組や動画ではNGと心得ましょう。逆に縦型動画などのカジュアルな動画では、こうしたフレンドリーさがプラスに働く場合もあるので、使いどころを正しく見極める必要があります。

長文での説明が必要な場合、端的にまとめられる箇条書きが役に立ちます。文章をコンパクトにして、分かりやすいテロップを目指しましょう。夜の報道番組などがお手本になります。

 

 

 

よりテロップらしい表記ルールとは?

ここからは細かい表記ルールについてです。率直に言ってしまうと、このルールを知らなくてもテロップは作れます。しかし、たとえ優れたデザインだとしても、視聴者にやさしいテロップとはいえません。面倒なものも含まれますが、ルールを無視せずに作ることで確実にクオリティは上がっていきます。

 

① 表記のゆれに注意する

表記のゆれとは、同じ意味の言葉でも異なる表記が使われることを指します。たとえば、「センチ」と「cm」、「乗物」と「乗り物」などです。これらの表記の違いを見つけてしまうと、そればかりが気になって映像の内容が頭にはいってこないなど、思いのほか深刻な影響がおこります。これを防ぐために、あらかじめ使う表記を決めておきましょう。さらに、用語集や辞書などを参照して一貫性のある表記を心がけましょう。

 

② 句読点は基本的に必要ない

テレビなどの映像メディアでは、限られたスペースと時間で、多くの文字情報を詰め込む必要があるため、句読点を省略することが多いです。ただし句読点の代わりにスペースを配置して見やすさの確保をすることは必須です。句読点の代わりに適度なスペースと覚えておきましょう。

 

  ③ 正式名称の確認をする

人物や商品を紹介する動画で、1番気を付けるべきポイントです。たとえ視聴者は気にしなくても、紹介されている本人やメーカー担当者はひっそりと傷ついている可能性があります。誤表記は失礼に当たるので、公式サイトを確認したり、担当者に直接問い合わせたりするなど、配慮を怠らないようにしましょう。

 

 

  ④ 「ら抜き言葉」を避ける

「ら抜き言葉」とは、助動詞の「ら」を省略表記する文章のことを指します。たとえば「食べられる」を「食べれる」と表現するケースです。幼稚な印象を与えるほか、正しい日本語ではないため不特定多数の人が視聴する公式動画などでは避けるべきです。普段の話し言葉では省略しがちなので、見落としがないように気を付けましょう。

 

  ⑤ 漢字と平仮名の割合

漢字が多いと物々しい印象になってしまい、そもそも読みたくないという印象を持たれがちです。適度に平仮名があることで、そういった印象を払拭できます。しかし、漢字をすべて平仮名に変えると、文章の雰囲気が変わってしまうためバランスが必要です。「漢字4:平仮名6」程度が、丁度良いバランスではないでしょうか。

 

⑥ 同じ助詞が続かないようにする

長い文章を短く要約する中で、知らず知らずやってしまうケースがよくあります。文章の構造を入れ替えたり、他の単語に差し替えるなどして回避しましょう。テロップ作りには多少の文章力も必要です。

 

 

CHECK!

現場で困ったら参考にしたい表記辞典

NHK漢字表記辞典(NHK出版)
編:NHK放送文化研究所

ナカドウガも報道番組のテロップ作業でお世話になった本。よくある例として「硬い」「固い」「堅い」の使い分け。こうしたパッと判断ができない事例に対して役に立ちます。放送に関わるプロダクションは必ずと言っていいほど常備していると思います。NHKの表記ノウハウがつまった一冊です。最新の版は13刷。

 

今回のひとこと

実は最近、我が家に猫を迎えました。これがけっこう気難し屋のネコでして、ねこグッズを沢山用意するものの、どれもさほど気に入っている様子がありません。NEKOは気ままな動物とよく言われるようですが、本当にそうなんだな、とつくづく実感します。

 

 

 

●VIDEO SALON2023年6月号より転載