多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』村上 岳


村上 岳

1992年生まれ。東京都在住。明治大学法学部在学中に写真を独学で始め、ブライダルやイベント、WEBメディアの撮影を中心に活動スタート。2018年から映像に切り替えて活動。映像を作るための出会いの場として「映像小屋」を運営。役者やクリエイターなど300人以上のメンバー参加する。第73回 広告電通賞 OOH広告 インフルエンス部門 金賞 ・TikTok映画祭2021 ファイナリスト。
WEB●https://gakumurakami.myportfolio.com/ 

文●笠井里香/写真提供●村上 岳

 

村上 岳さんの手がけた作品

『俺の海』

ショートショート フィルムフェスティバル & アジアに向けて制作されたショートフィルム。都会の喧騒を離れ、海沿いの一軒家に引っ越した一家を描く。村上さんは撮影で参加。

 

『EVEN』

クローンが普及した近未来を舞台にした縦型映画。第34回東京国際映画祭「Amazon Prime Video テイクワン賞」にノミネートされ、日比谷シャンテのスクリーンで上映された。

 

 

残った僕とカメラ そこからすべてが始まった

学生時代に写真を始め、スチル撮影から映像制作へと独学で歩を進めた村上 岳さん。クライアントワークはもちろん、短編映画も自主制作している村上さんに話を伺った。

「学生時代に付き合っていた彼女を撮るためにカメラを買いました。ニコンのAPS-Cセンサーでは当時一番いいモデルでした。でもその後すぐに振られてしまって(笑)。カメラだけが残ってしまい、春休みになるタイミングだったのでカメラを持って出かけてみたら撮影が楽しくなったんです。在学中にInstagramが流行し、企業がSNSに力を入れ始めている頃でした。僕は学生で時間に融通も効いたので、企業のイベントなど、WEBに掲載するものをスチル撮影するようになりました」

学生時代から企業とのつながりを持った村上さんは大学を卒業し、カメラマンとして活動をスタートする。

「当初はスチルを仕事にしていましたが、現場で映像も撮れませんか? と言われることが多くなって、スチルと同時にムービーを撮影するようになりましたが、少しずつ映像側に比重が変わっていき、2018年に映像に転向しました。最初に買ったのがニコンだったので、D850を使っていましたが、ミラーレスで映像を撮ろうとZ 7を購入しました。今はZCAM E2-F6をメインに使っていて、最近Z 9を購入しました。わからないことは調べて、自分で自主制作をし、独学でやってきましたね。なんでも自分で知りたくて、人に教えられるのが嫌いなんです(笑)」

 

あらゆることを試し工夫し 効率化する

「最近は(企画などもやる)ビデオグラファーというより撮影に専念した案件に関わることのほうが多いです。服の機能性、体の使い方、そこにいろいろなアイテムを組み合わせて、こんな環境でも撮れるんだ! という工夫を突き詰めていくのがとても面白くて、無駄を省いて効率化していくことを考えるのがすごく好きです。なんでも楽しいと思えるように発想するのは昔からずっと変わらないですね。これは撮影に関することだけじゃなく、現場を効率化することで現場の人たちにもきちんと報酬が分けられて、みんながハッピーになる現場にしたいなという思いもあってのことなんです。

今後は自分がどこまで行けるのかチャレンジを続けたいです。広告の仕事も楽しいのですが、いまはお芝居を撮るのがとても面白くて。『EVEN』ではTikTok映画祭2021のファイナリストにも選ばれ、東京国際映画祭でもスクリーン上映されました。ビデオグラファーを経験してきたからこそ、もっと還元できること、自分の立ち位置を上げていって、やれることを増やしていきたいと思っています」

 

主な使用機材リスト

 

制作風景と機材

▲映画『俺の海』の撮影風景。映画ではチーフ、セカンド、サードなど複数人のカメラクルーが入ることが多いが、この現場では村上さんひとりで撮影を担当。ビデオグラファースタイルの経験が役立ったという。

▲現在のメインカメラはZ CAM E2-F6。EASYRIGは村上さんの現場で欠かせない。ジンバルから三脚に即座に付け替えられるようにEASYRIGはクイックリリース仕様。


▲村上さんが撮影の時に重視するのは重心のバランス。ボックスタイプのZ CAMはジンバルに取り付けてもバランスが取りやすく重宝している。モニターなどを装着したときはカウンターウェイトでバランスを取る。

▲撮照録をひとりでこなした機材装備。早朝ロケで水平線から登る朝日をバックに人物を撮影する際に使用した。EASYRIGの上にPavoTube。


▲ACCSOONのCineEy 2S Proはレシーバーを用意することなく、複数台のiPadやiPhoneに映像を伝送できて便利。

▲バイクに乗っていた登場人物が衝撃のシーンを目撃するまでを一連で撮りたいという監督の要望に応えるため、E2-F6を演者に取り付けて撮影した。

 

 

VIDEO SALON2022年1月号より転載

 

vsw