佐藤正樹
1994 年生まれ。映像ディレクター・ビデオグラファー・フォトグラファーとして活動。MV、ライブ映像のほか ツアー帯同でのライブコンテンツの制作、 Dr.MartensのWEBムービーやAV IREX・ Schott 等ファッションブランドの映像を 中心に制作を手がける。
文●松岡佳枝/メイキング写真提供●佐藤正樹
佐藤さんの手がけた作品
I Don’t Like Mondays. 『Plastic City』MV
ロックバンド、I Don’t Like Mondays.のMV。ティール&オレンジを基調に色味を作り上げた。夜の街とスタジオの2つのシーンで構成。ライティングでもRGBカラーのLEDを使用。
KiU 2020 Web Movie
アウトドアシーンでのレインコートなどを中心に展開するアパレルブランドKiUのリブランディングの一環でのプロモーション映像。モーショングラフィックスも駆使。
カメラが好きでこれを コミュニケーションツールに
音楽とカメラ好きが高じてビデオグラファーになったとも言える佐藤正樹さん。ここまでのあゆみを聞いた。
「ロックバンドが好きでミュージックビデオはよく見てきました。なかでもINNI VISIONさんの映像には衝撃を受けました。芸術とも言えるような映像で、自分が映像に興味を持ったきっかけのひとつです」佐藤さんは社会人2年目で映像を始めるまでまったく違う分野の仕事をしていたという。
「僕は元々カメラが好きで趣味ではありましたが、体育大学で教員免許を取得してから病院で介護やリハビリの仕事をするという、映像制作とはかけ離れたスタートでした。認知症病棟で患者さんを見るなかで、5分前のことを覚えていられない認知症の方々、またそのご家族と、どうしたらうまくコミュニケーションをとれるのかと考え、カメラを活用していました。入院されているみなさんの笑顔の写真を撮り、ご本人やご家族にお渡しするようになりました。その写真を喜んでもらったり遺影にしてもらったりする経験で、カメラというものが自分の中で大きいウエイトを占めていきました。そんななか、ある患者さんから“人生は短いから、好きなことをしたほうがいいよ” と言われた翌日、その方が亡くなってしまったんです。このことがきっかけで『人生ってそんなに長くないんだな』ということを実感し、後先考えず病院を辞めて、映像を仕事にしようと決めました」
自分の人生を変えてくれた 存在から学んだこと
決意してすぐ独学で映像を学び、撮影、編集などのノウハウを身につけた。その後イベント映像の制作会社に入社。1年半勤め、現在はフリーランスとしてMV やファッションのCM制作を中心に活動を続ける。
「独学で映像を学ぶ中で、クリエイティブを仕事にしている方数十人に話を聞きまくりました。どうやって仕事にしていったか、プロセスやビジョンが気になったんです。中でも当時フィルムウォーカー(現ニューピークス)のKazuhiro Joy Kimuraさんの存在は大きかったです。Joyさんにお話を聞いたことで、自分もやってみようと勇気をもらいました。それまでは、自分ができないことをしている人に憧れを抱きがちでした。でもそれは思い込みで。できないことをできるようになるのは、実はそんなに厚い壁じゃないと教えてもらいました。フォトグラファー・アーティストとして活躍し、リスペクトするJesse Kojimaさんに言われた言葉に “準備万端になることは一生ない” というものがあって。多少強引でも、自分が進みたい道に対して常に”どうやったら実現できるか”という選択をしています。今まで自分が見るだけだったアーティストのMVやツアーの撮影などをさせていただくようになり、めちゃくちゃ夢のある仕事だと思っています。音楽やアートからインスピレーションを受けながら、今後は3DCGにも挑戦していきます。今年、3児の父になる予定なので今度は人にポジティブな影響を与えられるようになりたいですね」
●最近主に使う機材リスト
●使用機材と制作風景
▲メインカメラはRED SCARLET-W 5K。もともとキヤノンユーザーのため、EFマウントのレンズが中心の構成。αやBMPCC 4Kで撮影する場合はマウントアダプターで各マウントに変換する。
▲ライブ撮影やMVなど機動性を生かした撮影ではジンバルも活用。
▲色を自由に変えられるLEDライトは写真のような小型のものから大型のものまで様々なものを活用する。
▲ダイモのテープに名前を打ち込んでバッテリー等に貼り付けている。
▲ペリカンケースやバックパック。
▲スタジオでの撮影の模様。
●VIDEOSALON 2020年6月号より転載