多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』Taka Tachibana


Taka Tachibana

台北在住の映像作家。CHINZEI / CAPSULE Inc. 所属。脚本から演出、撮影、編集まで幅広く手がけ、物語性のある表現を得意とする。福岡で10年間のフリーランスを経て、台湾ではMVやWEB広告などの映像制作に従事。その傍ら3DCG・VFXを駆使した作品づくりに取り組む。Short Shorts Film Festival & Asiaをはじめ、国内外70カ所以上の受賞・入選歴。
WEB●https://taka-t.com/

文●松岡佳枝/写真提供●Taka Tachibana

 

Taka Tachibanaさんの手がけた作品

黃氏兄弟MV『光 Light』

台湾でアイドル的人気を誇るYouTuber黃氏兄弟のMV。橘さんが監督を手がけ、アナログなフィルターを使った柔らかな画作りのなかにデジタルな3DCGも盛り込まれている。

 

『Anicca』

「Anicca」とはパーリ語で「無常」という意味。台湾の夜景の実写映像に、Blenderを使って幻想的なクラゲをCG合成したショートフィルム。2021年中には全編CGの映画も制作予定。

 

 

台湾で3DCGという 新たな表現を手に入れた

現在、台北を拠点に活動する映像作家の橘 剛史さんは実写だけでなく、3DCGやVFXを使った作品制作も行うなど活動の幅を広げている。

「父が映画好きで、一緒によく見ていました。僕はゆとり教育世代で板書をするような通常の授業ではなく、プレゼンを行うようなスタイルの授業が多かったんです。当時PowerPointなどを使って発表をする人が多かったのですが、家にあったビデオで映像を作ってプレゼンしたところ、皆が面白がってくれました。それが映像制作の原体験かもしれません。

大学へ進学するつもりでしたが、映画の道に進もうと考え、東京フィルムセンター(現:東京映画・俳優&放送芸術専門学校)で映画監督科を選択しました。それがきっかけで自主制作映画を撮り始めて、映画祭にも作品を出品しました。卒業後は東京に残る人が多かったのですが、僕自身は人と違うことをしたいタイプでしたし、当時はキヤノンのEOS 5D MarkⅡが出る前後で個人で映像が撮れるようになってきたこともあり、新しい環境でやってみたいと故郷の福岡に戻ってフリーで仕事をしていました。福岡では映画監督を目指しながら、ブライダルやミュージックビデオなどの撮影もしましたね。さまざまなお仕事をさせていただきながら、20代前半は自主制作映画を撮っていました」

そんな橘さんに転機が訪れたのは2年前のことだった。

「台湾に来て2年目ですが、いつか海外でやってみたいという思いは以前からありました。YouTuberのマネジメントをメインとする台湾の会社で日本人の映像制作者を探しているというお話があり、そのチャンスに乗り、こちらに移住してきました。まだ自身の作家性を見い出せていない自分を感じてもいたので、台湾で新しい表現への刺激も得られるのではないかと考えたからです。台湾に来てからこちらの案件でAfter Effectsを使う機会があり、そこからモーショングラフィックスに加えて、3DCGも始めてみることにしました。CG演出では表現の幅が一気に広がり、新しい自分の表現を見つけたように思います。それからBlenderも使うようになり、メディアの方からもお声がけをいただくなど、注目していただいています。CGは現場ではコントロールできない天気や環境なども自分で突き詰めていくことができるのが魅力だと思っています。もともと理系なので物理演算なども活用し、映像を作っています。もちろん、実写で学んだディレクションの経験も生かすことができますし、できないことがないと言えるくらい幅広い表現を追求できます。映像表現にとことんこだわりたい自分に向いていると感じています」

 

主な使用機材リスト(個人所有のもの)

 

制作風景



▲台湾でのMV撮影の現場。2019年から台湾に渡り、 台湾最大のクリエイターマーケティング会社 CAPSULEで映像ディレクターとして勤務。以前は自分でも撮影を担当することもあったが、最近はディレクションとCG制作に専念することが多い。

▲台湾のスナック菓子、乖乖(クワイクワイ)。撮影の間、機材の上において安全祈願をするのが台湾の映像制作の現場の習わしだという。

▲昨年から無料CGソフトBlenderを独学で学び、自身の作品のなかでCGも取り入れている。その他、Slackでのコミュニティー「みんなのBlender」も主催。

▲仕事の傍ら自主制作の作品にも取り組む。個人の機材で重視するのは小型・機動性。『Anicca』の実景撮影は手持ちのα6600で行なった。

 

 

VIDEOSALON 2021年2月号より転載