多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』YP


YP

1994年、兵庫県生まれ。映像ディレクター。森永乳業リプトンTVCM『夢を追いかける人』篇を当時(20歳)最年少CMディレクターとして演出を担当。MIYAVI・KREVA・三浦大知のコラボMVの制作も行ない、yonigeやあいみょん、水溜りボンドなど同世代の若手アーティストのMV作品も手掛ける。近年は人材育成にも力を注いでおり、会員制コミュニティ「YP映像大学」も開講。

Twitter●https://twitter.com/YP

文●松岡佳枝/写真提供●YP

 

YPさんの手がけた作品

『触れた、だけだった。』純猥談

現代の性愛にまつわる体験談の投稿サイト「純猥談」。そこに寄せられた投稿をもとに映像化した作品。YPさんとしては初のストーリーものの監督作。撮影・編集も自ら手がけた。

 

Gorilla Attack – 隔世gorilla Music Video

ラップユニットGorilla AttackのMV。360度カメラを使い3Dモデルを制作し、渋谷の街を覚醒させるストーリーを描く。CGはVFX映像チームUNDEFINEDやPoint Cloud ArtistのNio Takutoが制作。

 

 

既存の価値に囚われず、 新しい価値を紡ぎ出していきたい

YPさんは「映像クリエイター」というより「イノベーター」と呼ぶべき存在ではないだろうか? 企画、演出はもちろん撮影、編集、カラーグレーディング、CG制作まで手がけるYPさんだが、あえて肩書きを記すなら“映像ディレクター”。マルチな才能を持ちながらも、あえてディレクターをメインとしているのはなぜなのか。

「僕はいま映像、バーチャル、コミュニティの3つを軸に活動しています。自分達で音楽を作り、MVを作り、原作を作っています。今後は『攻殻機動隊』のように、拡張性のあるコンテンツを展開していきたいと考えています。ストーリーものを作品として展開しながらリアルタイムの活動をMIXさせた新しいコンテンツを作っていきます。

ここ数年で自分自身の役職である“映像ディレクター”というものの限界を感じています。デザイナーという言葉が特に高度経済成長期から現代に至るまでの目紛しい時代を移り変わりながら意味合いがアップデートされてきたように“映像ディレクター”という肩書が持つ意味合いも進化させていかなければと感じています。クライアントワークでは投げられた球は受けるしかないし打つしかないですよね。難しくはあるのですが、自分で球を作り、世の中に投げかけていく。そうすることで世の中の映像コンテンツをアップデートしていきたいですね。

単純に自分の拡張をすることに興味があります。映像を軸に根を張り、様々な分野を横断しながら知識を蓄えて枝葉を伸ばして花を咲かせて実っていくように成長していきたいです。映像ディレクターはもう映像のことだけを考える人ではないと思います。これからは世の中の流れをよく見て、時代の空気感を捉えて、映像コンテンツがどう人とコミュニケーションが行われるのかを考えていく人が映像ディレクターなのだと思います」

 

初めての映像作品のころから“企画”をやっていた

YPさんが映像制作をする上で大切にしていることは企画だという。

「最近はカメラの性能も上がってきて、簡単にいい映像が撮れてしまうのですが、それがいい映像だと錯覚してしまうんです。良い企画のある映像はスマホで撮っても良い映像になる。カメラの性能でごまかさずに映像制作に向き合うべきだと思います。

一番最初に作った映像は、中学生の頃、B’zのパロディを作ろうということになって、家にあった母のデジカメやPCを使って制作し、YouTubeにアップしたんです。それはネットに公開するというよりは友人へのサプライズ的な感覚でした。再生数が思いのほか伸びて、世界中からリアクションが来たのが当時の自分には衝撃でした。それからはリスナーをどう満足させるかという試行錯誤を繰り返していました。思えばどうコメントされるか、どうバイラルするかを考えることは企画の種になっていたのだと感じます。

その延長戦上で、高校生の頃YouT ubeで音楽番組を作ったりもしていました。たまたまですが、2回目のゲストには同級生の友人である“あいみょん”に出演してもらいました。それがプロデューサーの目にとまり、彼女がデビューするという稀有な経験もしました。別に自分がいなくとも彼女の実力と性格ならどこかで跳ねて売れると思うのですが、自分の作品がきっかけとして存在しているというのは僕自身にとっても大切な経験ですね。映像が連れて行ってくれる景色はあるんだなと強く感じました。

“企画”はクライアントやプロジェクトのゴールを描くこと。“映像ディレクター”はそのゴールに導くことが役目です。ゴールの解像度やスケールは体験や知見によってアップデートされていくので日々学んでいたいですね。

引き続き粛々と自分にできることの拡張をしていきます。5年後には自分が育てているコンテンツが時代の真ん中に着地して世の中を賑わせられるように頑張ります。楽しみにしていただければ幸いです」

 

 

主な使用機材リスト

 

使用機材と制作風景、活動内容

▲カメラはレンタルを含めれば様々なものを使用するが、個人ではソニーFS7を所有。シグマのシネレンズのほか、オールドレンズなども活用する。

 


▲西尾維新『新本格魔法少女りすか』PVの制作現場。

▲『触れた、だけだった。』の現場にて。学生時代からのチームで作り上げた。

▲YP映像大学ではオンラインでの活動以外にも実践的なワークショップも。

 

 

VIDEOSALON 2020年9月号より転載