多様化する映像クリエイターの制作スタイルを訊く『Videographer’s File<ビデオグラファーズ・ファイル>』黒沢 寛


黒沢 寛

長野県生まれ。東放学園音響専門学校在学中から音楽関連のENG取材アシスタントを経験し、その後は機材レンタル会社に入社。レンタル業務の傍ら、VEやDITとして現場に入ることも。独立後はカメラマン、DITを中心に活動し、MV等で監督も務める。WEB●https://kurosawahiroshi.myportfolio.com/

文●松岡佳枝/写真提供●黒沢 寛

レンタル会社勤務で 機材に開眼

ビデオグラファーとひと口に言っても、作品制作に欠かせない「機材」に対する関心の高さや温度は千差万別だ。もちろん、機材に精通していなくとも、表現したいことを映像化し、パッケージングすることは不可能ではない。企業PVやWEB CMなど多彩な映像を制作する黒沢寛さんは、機材が好きなだけでなく、ひじょうに造詣が深い。

音響関連の専門学校で学び、アルバイトでは学生ながらもレコーディングスタジオで機材のセッティングなども経験したという。

「レコーディングが何かということもわからないうちに、知らない世界を見ることができました。当時は音と映像の仕事がわかれていた時代で、ライブDVDなどの編集を行う際、ライブ映像とマルチの音源をトラックダウンする仕事をしていたんです。そこに”映像”という要素があり、興味を持ちました」

アルバイトでの経験から、映像を学びたいと強く思うようになった黒沢さんは、専門学校を卒業後、よく出入りしていたという機材のレンタル会社で働くことに。

「機材のレンタル会社なので、当然機材がたくさんある環境でした。ここでしかできないことは何かと考え、現場ではなく機材から覚えようと頭を切り替えました」

この時期に機材の基本的に使い方だけでなく、ホワイトバランスの取り方からメンテナンスまで、さまざまなことを覚えたという。

“ハードウェアの人”で 終わらないために

地道に機材の知識をつけ、会社ではVE(ビデオ・エンジニア)と撮影部を作り、撮影現場へ行くようになる。ビデオ機材で色を調整するVEの仕事を間近で見ることで、黒沢さんはVEやDIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)と呼ばれる専門職としての自身の地位を確立。会社に所属しながらも、さまざまな現場から仕事の依頼が入るようになる。

「アングルや演出には勉強が必要でしたが、機材についての知識があると結果がわかるんです。それは大きなアドバンテージだと思っています。ただ、このまま”ハードウェアの人”で終わりたくなかった。時期を待っていたところに映画の仕事が舞い込み、独立する決心をしました。機材も時代を経てどんどん変わっていきます。”ゲームチェンジャー”と言える新たな機材によって自分自身が牽引されることもありますし、5年前には想像もできなかった未来がここにあります。愛情を込めて編集してもらうなら、早いうちに、そしていい色、いいもの、編集しやすい、モチベーションのあがるものを渡してあげたい。映像も”鮮度”が大事。ある意味では漁業のようなものだと思っています(笑)」

映像の時代の過渡期を現場で体感し、経験してきた黒沢さんは”どんな機材を使えるか”という自分から、 “どんな映像を作れるか”という自分にフォーカスして活動を続けている。

 

よく使う映像機材リスト

▲ FS5をメインカメラに、ジンバルを使用する場合はα7RⅢをメイン、α6500はサブ機として使用。元々はキヤノンユーザーだったため、レンズはEFレンズを所有する。

 

黒沢 寛さんの作品

Noa 『キオクノトビラ feat. LGYankees』MV

仙台を拠点に活動するシンガーのNoaとヒップホップグループLGYankeesとのコラボ楽曲。結婚を前に家族や両親へ感謝の気持ちを綴る。黒沢さんは監督・撮影を担当。

Adventures by Disney

ディズニーが企画するファミリー向け旅行プラン「Adventures by Disney」。日本へのツアーの模様を記録したイメージ映像。黒沢さんは撮影を手がけた。

撮影風景

▲ 現在は、カメラマンとして現場に入る仕事の比重が高い。F55やREDなどのハイエンドシネマカメラからデジタル一眼まで幅広いカメラを扱う。機材レンタル会社の勤務経験やDITとして現場に入ることあり、機材に関する知識が豊富なのが、黒沢さんの強み。

 

ビデオSALON2018年10月号より転載