染瀬直人の 360°VR VIDEO WORLD Vol.8 NAB Show 2017で気になったVR関連の展示をレポート


第8回 NAB Show 2017で気になったVR関連の展示をレポート
写真・文●染瀬直人

写真家、映像作家、360度VRコンテンツ・クリエイター。日本大学芸術学部写真学科卒。360度作品や、シネマグラフ、タイムラプス、ギガピクセルイメー ジ作品を発表。VR未来塾を主宰し、360度動画の制作ワークショップなどを開催。Kolor GoPro社認定エキスパート・Autopano Video Pro公認トレーナーYouTube Space Tokyo 360度VR動画インストラクター。http://www.naotosomese.com/

※この連載はビデオSALON2017年6月号より転載

今年のNAB Show2017は、昨今の企業情勢に合わせての変化はありつつも、ソニー・キヤノン・パナソニックなど日本のメーカーは例年のように大きなブースを構えていて、世界最大の映像・放送機器展の威厳はそのままに華々しく開催されました。

VR関連の展示は基本的に「VRパビリオン」としてノースホールの一角に固まっていましたが、それ以外のスペースに出展しているメーカーがあったり、大企業の一製品として展示されていたり、ジンバルやリグなどを出品している小さなベンチャーなどもあり、それらも見逃すまいとすると、結局は広大な展示会場を隈なく探し歩くことになります。

今年のVRカメラ関連の展示を見た印象としてはArashi VisionやImagineVision、シャオミが出資しているYi(イー)など、予想通り中国系メーカーの台頭が感じられる内容となっていました。

そして、VRカメラの進化が挙げられます。昨年までは3D、アンビソニック(立体音響)、リアルタイムステッチによるライブ配信などの機能を全て併せ持つVRカメラは、NOKIAのOZOくらいしか存在しなかったわけですが、それが実売45万円ほどのInsta360 Proにも実装されてきています。

また、GoPro Odyssey(GoogleのJUMPシステム)や、Facebook 360 Sorroundなど一部のシネマティックVRカメラで採用されていたOptical Flowという高度なステッチの方法も拡大しつつあります。

そして、一体型カメラ以外にも複数のカメラを搭載して撮影するリグのキットもRadiant Images社や中国、韓国製のものなど、ミラーレス機や大型のシネマカメラ向けの新製品が登場してきました。

360度ライブ配信のソリューションも大変目立っていて、Kolor GoPro社のLive VR、Voysys他、沢山のブースで披露されていました。

 

リコーTHETAが4Kに対応。GoPro Fusionは展示されず

▲リコーブース。THETAが念願の4K動画撮影に対応。発売は2017年内を予定。360度の4K/30p動画撮影、4chマイクを内蔵し、空間音声の録音を可能にしている。360度の4Kライブ配信と、専用拡張アプリによる機能拡張に対応(AndroidベースOS搭載の予定)。

▲GoProブース。NAB直前に発表されたGoPro Fusionは今回は残念ながら出展されていなかった。昨年発売のGoPro OMNIが、年内に360度ライブ配信に対応予定、そのソリューションLive VRのデモを展示。

▲RICOH R Development Kit。1月のCESや2月のモバイル・ワールド・コングレスに続いての海外展示。NAB会場より、360度ライブ配信デモが行われました。日本でも59,800円で5月中に出荷開始予定。

革新的な製品を次々と投入してくる中国メーカーの台頭

▲VRカメラへのニーズに果敢に取り組む中国深圳のArashi Vision社。45万前後の価格で8K/30pの360度動画、6Kや4K解像度の3D360度動画、4K/3D360度のライブ配信、タイムラプスや4K/100pスローモーション撮影をも実現するInsta360 Proを展示。日本ではハコスコとアスクが販売代理店で、この6月から出荷が開始されました。

▲ImagineVision社のZcam S1(写真右)。190度の魚眼レンズを搭載した4台のカメラを一つのカメラユニットに。6K/30p、4K/60p の360度動画撮影が可能。4Kでのリアルタイムステッチとライブ配信に対応する。上位モデルのZ cam S1Pro(写真左)や “Cinematic Stereo 3D 360Camera” と称されるZ CAM V1Proも出品。

▲YI HALO、YI360 VR。円周上に155度の超広角レンズを搭載したカメラ16台とトップに1台、合計17台のカメラで構成されたYI HALO。Google JUMPに対応し、Jumpアセンブラーでステッチし、8K×8K/60pの3D360度動画を生成。タイムラプス撮影も可能。GoPro Odysseyでは撮影中の映像のモニタリングができなかったがAndroidアプリで対応。

空間音声収録に対応する製品も徐々に増えてきた

▲ノキアOZO用画像編集ソフトOZO Creatorの新バージョン(有償ライセンス版)と、ライブ配信用ソフトOZO LIVEの空間音声対応などが発表された。連日、ブース内では盛んにワークショップも開催。

▲パナソニックAW-360C10、AW-360B1 0。昨年のInter BEE等でも参考展示されていたProject PHAROS。筐体やベースユニットが幾分小さくなり、ステッチエラー回避や露出やホワイトバランスの自動制御機能を搭載。

▲VR関連リグやレンズを開発する国内メーカーのインタニヤもNABに出展。250°の超広角魚眼レンズEntaniya Fisheye 250(MFT・Eマウント)の他、Mount Baseや360VRリグなどを発表。

▲ロサンゼルスの映像機器レンタル会社RADIANT IMAGESは、ソニー・キヤノン・ブラックマジック・Z cam他主要メーカーブースで大型センサーカメラを複数台使用するリグSENSE 9を展示。ARRIやREDなどのキットも圧巻!

▲キヤノンブース。TERADEK、RADIANT IMAGES、ZACUTOとのコラボ展示。プラネタリウムのような巨大なドーム型シアターに、C300 MKII 7台で撮影した360度タイムラプス映像をプロジェクションしていた。

▲韓国のリグやジンバルを扱うメーカーのNET MEDIAブース。GoPro HERO5を7台保持したジンバルCAMTOOL ALPHA360 ACTIONを揺らしながら、会場を歩いて性能をアピール。

 

◆この記事はビデオSALON2017年6月号より転載

vsw