レポート◉染瀬直人


vol.7
VR動画コンテンツの公開をどうする?
VR専用プラットフォームVeeR VR

従来の映像の視聴方法であるテレビや映画とは異なり、VR動画の鑑賞には視聴者が自由な方向を見回せるインタラクションが必須となる。そして、各種VRゴーグルをサポートしていることも必要だ。

昨今ますます注目されている360度の音響〜空間音声や、3DVRコンテンツへの対応も重要な要素のひとつとなってきている。VRにはドーム型シアターなどに投影して、多人数で一望して鑑賞するといった楽しみ方もあるが、今回はVR動画の共有にまつわるプラットフォームについて、改めて整理してみたいと思う。

 

大手動画共有サービスがVR動画に対応している

ご承知のようにYouTubeは、2015年3月に360度VR動画に対応した。当初はGoogle Chromeと、アンドロイド版のYouTubeアプリのみで投稿や再生ができたが、それに加えて現在はOpera、Firefox、MS Edge、Safariなどの最新バージョンのブラウザで視聴ができる。

モバイル端末ではiOSを含めたYouTubeアプリの最新バージョンで機能する。チャンネルにアップロードする場合は、サポートするVRカメラで撮影された動画素材か、360度動画であるというメタデータを付加したエクイレクタングラー形式のフッテージであることが必要だ。

また、3DのVR動画もサポートしており、CardboardやDaydream Viewはもちろん、対応したヘッドセットで立体視ができる。YouTubeには、「バーチャル リアリティ」という公式チャンネルがあり、世界中から投稿された動画コンテンツを視聴することが可能だ。2017年には、前方180度の画角の立体視の新フォーマット「VR180」が登場し、ますますVR動画に注力している。

そして、Facebookでもタイムライン上に、360度の動画と静止画を投稿できる。同サービスの「360Directorツール」を使用することで、最初の視点の位置や視野角などを設定できるので便利だ。この6月には、YouTube同様「3D-180」に対応した。

その他、プロの映像クリエイターに支持されているVimeoも、2017年3月に360度動画に対応。最大8Kまでのアップロードと、4Kまでの視聴が可能になっている。

YouTubeとの違いは、コンテンツをデバイスにダウンロードして、オフラインの状態でも視聴できること。また、Vimeo ProやVimeo Buisiness、Vimeo Premiumなどのプランに加入していれば、マーケットプレイスでコンテンツに課金することができる。

上記の3つのプラットフォームは、いずれも動画編集用ソフトウェアのAdobe Premier Proから、直接パブリッシュすることも可能だ。

 

VeeR VR というVR専用プラットフォームが注目されている

VeeRは高品質のVRコンテンツ配信に特化した事業を展開する中国・北京のスタートアップ企業だ。2016年10月に、スタンフォード大学、バークレー大学、北京大学、またLINKEDIN、TwitterなどIT関連の大手企業出身のメンバーにより設立された。5万人以上のクリエイターが参加。180以上の国や地域に展開し、英語、中国語、スペイン語及び日本語に対応している。アプリの合計ダウンロード数は3千万回。

VRクリエイターたちに向け、コンテンツの制作、配信、共有、コンテンツの利益化などのサービスを提供し、制作面では初期角度などを設定できる「VeeRエディター」と、複数の素材をバーチャルツアー化する「インタラクティブ体験」の2つの制作ツールを無料提供している。

360度VR動画のサービスは他にもいくつかあるが、VeeRの特徴としては、全ての視野角(360×360, 180×180 そして180°及び180°以上の画角)に対応していることが挙げられる。また、VR動画とVRの静止画(いわゆる360度パノラマVR)の両面に対応している。

WEBサイト、スマホアプリは勿論、VRアプリ(Oculus Go、Oculus Rift、Daydream VR、HTC Vive他、ほぼ全てのHMD)にも、ワンクリックで同時配信が可能となっている。3Dコンテンツ、空間音声もサポート。また、ダウンロードすれば、作品をコンポジットのように、オフラインのローカルのデバイスで利用できる。

そして、コンテンツの収益化を促進するために、マーケットプレイスも開始された。(現状では、要審査。)

最近、更新された機能としては、H.265の対応とVRブックマークがある。動画の最高解像度は4Kまでの対応だが、H.265の規格を利用すると、画質が向上し、VRヘッドセットで視聴した際に、デフォルトで4Kの画質のスムーズな再生ができる。

そして、VRヘッドセットの中ではコンテンツ検索の際に文字の入力がしにくいが、好きなコンテンツにVRブックマークをつけておけば、直接VRヘッドセットの中で視聴することができるようになる。

VeeRはVR特化型サイトなので、高品質で良質なVR作品は、目にとまり、人気が得られやすいというメリットがある。好きなクリエイターをフォローすることもできる。

今年の6月には日本のクリエイター向けに、「360°VRコンテンツコンテスト」も開催された。

VeeR VRは投稿・視聴の両面において、VRコンテンツに特化したサービスを展開している。

 

VRに特化したプラットフォームVeeR

◉https://veer.tv/


▲VeeRのトップページ。

 


▲VeeRの登録画面、Facebookのアカウントからか、メールアドレスなどを入力して登録することになる。

 


▲基本情報の設定画面

 


▲360度VR動画/写真をアップロードする画面。また、複数のコンテンツを組み合わせたバーチャルツアーをつくる「インタラクティブ体験」もこちらの画面から作成をはじめる。

 


▲ビデオのアップロード画面。タイトル、ビデオフォーマット、説明、カテゴリー、タグ、プライバシー設定、サムネイルのカスタマイズを行う。

 


▲モバイル端末からも、投稿が可能。

 

 

ビデオSALON2019年1月号より転載