久松慎一+ 株式会社援軍

 

 Vol.15 TikTokを理解する(後編)

企業のマーケティングツールとしても拡がってきたTikTok。TikTokの動画で話題になりファンを集める配信者”TikToker”をテレビ等のメディアでも目にすることが増えました。今年3月に収益プログラムや投げ銭機能が日本版のTikTokで始まって約半年。お決まりのダンスや美容、グルメなどさまざまなジャンルでプロフェッショナルのTIktokクリエイターが生まれています。今回はTikTokのマーケティング支援に特化した株式会社Natee(ナティー・https://natee.jp/)取締役の朝戸さんに、広告媒体としてのTikTokの特徴などを伺いました。


株式会社Natee 執行役員の朝戸太將さん
聞き手:久松慎一・島田 拓(株式会社援軍)

 

今回のインタビューは2回に分けてお伝えしています。前回はTikTokそのもののメディアとしての特性と、お話を伺った株式会社Nateeについて、TikTokの広告についてを伺いました。今回は、コンバージョンや広告出稿についての手順などについて教えていただいたものを紹介します。

 

広告媒体としてのTikTokのポテンシャル

ー TikTokの動画広告のコンバージョンポイントはどこに置くのが効果と計測が出やすいでしょうか?

一番望ましいのは「購入」で、よりライトなポイントでは無料インストール・LINE登録・資料請求などです。

ー TikTokに広告を出稿するための大まかな手順は?

最初にアカウントを開くために、TikTok for Business オンラインアカウントでユーザー登録を行います。登録にはメールアドレス、電話番号、クレジットカードの情報などが必要です。登録自体は10分程度、アカウント開設の審査は早ければ1日で完了します。

登録が完了すると広告配信ができるようになります。

TikTok for Businessのためのアカウント作成から始める。

◉TikTok for Businessオンラインアカウント登録
https://www.business-tiktok.com/tt4b-official/#sign-upform

 

 

広告配信するためにはキャンペーンを作成し、配信ターゲット(性別・年齢層・都道府県など)や予算を設定し、動画を登録します。

 

アカウント登録や広告配信設定については広告主向けのポータルサイト TikTok For Businessに詳しく説明されています。

誰でも簡単にTikTok For Business(TikTok広告)で広告配信
https://www.business-tiktok.com/brandjp/

 

私たちのような代理店でこれらの出稿を依頼することも可能です。現在、日本ではおそらく自社で出稿・運用するよりも代理店に依頼されることのほうが多いと思います。自社アカウントは社内で運用し、インフルエンサーの活用やPaid広告は代理店を使う、といった使い分けをしている企業も多数あります。

ー 広告審査はどれくらい時間がかかりますか?

通常、1〜3営業日程度で審査結果が通知されます。もし審査が通らなかった場合はその理由を教えてくれます。審査が通らなかった場合はクリエイティブを作り替えるなどの対策が必要です。その上で異議申し立てをしたい場合は管理画面から送信すると、「ああ、そういうことだったか、よく見たら大丈夫ですね」という具合に審査通過することもあります。

ー TikTokの動画広告の出稿方法と使い分けを教えてください

大きく3つあります。

▪️Paid広告
TikTokに広告費を払って出稿する。コンバージョンに近いところ(刈り取り)に有効。

▪️インフルエンサーアカウントでの配信
まだ世の中にあまり知られていない商材にたいして認知を獲得するためにTikTok内で権威を持ったインフルエンサー用いることが多い。

▪️自社のオウンドアカウントでの配信
長期的に見てコンテンツが資産として伸びると考えている場合に有効。半年・1年といった長期的にコンテンツを投稿し続けてTikTok内のプレゼンスを高めることで長期的に見て広告コストを下げることができる。

これらの使い分けは基本的に商材によって変わるものではなく、基本的な考え方です。

 

ー 広告用の動画の簡単な作り方はありますか?

写真数点とテキストを用意すれば管理画面上で広告動画を制作してくれるサービスを提供しています。

豊富なテンプレートが用意されており、そのなかからひとつ選択して画像やテキストを当てはめていくとBGM付きの動画を制作することができます。また、広告動画制作用のAndroid アプリ「TikTok AdStudio」も運営元のByteDanceから提供されています。

TikTok AdStudio
スマホ内の画像などにテキストやBGMを追加して簡単にTikTokの動画広告を作成するアプリ。

 

ー 他のプラットフォームと比較して、TikTokの動画広告を制作する上での勘所などを教えてください

絶対外せないのは開始0.5秒で印象をつかむ決めるほど命といえます。TikTokは動画が次から次へと自動再生されサムネイルに相当する物は目に入らないので、そのかわり開始0.5秒が重要。そのなかでキャッチーなタイトルコールをするとか、インパクトのあるシーンを入れるとか、顔をアップにしてリスナーの関心を高める、といったことが非常にポイントです。

また、トレンドに乗るということが非常に重要で、’興味ある人に興味があるコンテンツが流れてくる”というアルゴリズムの特性上、流れてくるコンテンツに一定の法則性が産まれます。

流行っている音楽は何度も耳にすることになり、この音楽でこういう大喜利が流行っているな、というポイントが生まれます。トレンドを早くつかみ、それに乗ることで視聴数が増えます。そうしたスピードがとても重要です。自分にあった流行をキャッチして乗る、ということを続けます。2週間くらいでトレンドはどんどん変わるので常にキャッチアップして取り入れます。

最近のホットなタグ・キーワードとそのコンテンツのリスト。これらを細かくチェックすることで新しいトレンドを早くつかめます。ハッシュタグチャレンジというPaid広告メニューがあり、一定期間リストの項目を広告枠として購入することも可能です。トレンドの移り変わりが早く、オウンドアカウントで動画を公開する場合はそれを強く意識する必要がありますね。

一方でPaid広告を出稿する場合はトレンドも大事ではあるがそれ以上にユーザが喜んでくれる、訴求が伝わる動画であることが重要。Paid広告の場合は継続する広告主が多く、だんだん慣れてくるとコンテンツを企画・制作するスピードも上がってくるので、企画から公開までフットワークの軽い制作が可能です。

動画広告の賞味期限は比較的短く、次から次へと動画を作り続けるのが効果的です。おしなべて言うと、ひとつの動画の賞味期限は2〜3週間程度。月に2本くらい作るペースを早くつかむ必要があります。一方で、出稿アルゴリズムのAIの比重が強く、広告運用の手間はあまりかかりません。クリエイティブのクオリティが勝負で、広告動画は運用開始後も差し替えることが可能です。良い成果を出すことを比較するABテストもして傾向をみるとよいでしょう。

ー インフルエンサーはどのように集め、案件とのマッチングはどのように考えればよいのでしょうか?

TikTokで候補となるアカウントを探し、Instagramアカウントを見てスカウトすることが多いです。

マッチングへの考え方は主に3つ。

・商材との相性
・直近の平均再生回数
・投稿のスタイル

をみて広告主に提案します。運用広告を利用する場合は映像の編集スキルや企画力を重視します。

ー 動画制作はどんなソフトウエアで行っていますか?

パソコンの場合はAdobe Premiere、スマートフォンの場合は Capcutを利用しています。トレンドをキャッチするなら、日本で最もフォロワーの多い女性アカウントの景井ひな(@kageihina)さんをまずはフォローしてみましょう。海外のトレンドを日本に早く取り込んで皆がそれを真似する流れができています。そのほか、以下の3名もトレンドを抑えるアカウントとしておすすめです。なえなの(@naenano)さん、修一朗(@tuckinshuichiro)さん、あああつし(@aaa_tsushi_)さんなどをまずはフォローしてみましょう。

 

 

今月のTIPS

急速に移り変わるTikTokのトレンドをとらえる

視聴者が注目するクリエイターは日々変わりますが、トレンドのチェックの方法がわかれば、さして難しいものでもありません。

早くトレンドをとらえるには?

TikTok上で今一番話題になっているタグや曲が一覧できます。入れ替わりが激しいので、チェックを習慣化しましょう。

▪️トレンドタグを細かくチェックする
TikTokアプリのフッターのDiscoverタブから、トレンドのハッシュタグがリストされた画面を表示できます。

▪️トレンドを誰よりも早く捕まえるクリエイターをベンチマークする(下の表)
広告制作・出稿にはどうしても多少の時間がかかってしまうので「これから流行りそうなもの」を少しでも早くキャッチすることが重要です。カナリア役のアカウントをフォローして自分が面白いと思うものをとりこみましょう。

 

トレンドタグのチェックのしかた

画面下のアイコン「Discover」をタップすると注目のハッシュタグが表示される

 

市場調査のワンポイントアドバイス クリエイターをベンチマークする

▪️おすすめクリエイター

景井ひな @kageihina https://www.tiktok.com/@kageihina?lang=ja-JP

メイク・ファッション・ダンスやネタ系など様々なジャンルで、海外のトレンドをいち早く捉えてローカライズしている。

 

 

修一朗 @tuckinshuichiro https://www.tiktok.com/@tuckinshuichiro?lang=ja-JP

短いvlog的コンテンツを中心に投稿する男声クリエイター。タイアップ広告も多数配信。

 

 

あああつし @aaa_tsushi_  https://www.tiktok.com/foryou?search_link=general_search

スマホでの撮影にこだわり、ノウハウなどを配信。海外で紹介されたテクニックもローカライズ。

 

 

VIDEO SALON2021年12月号より転載